2016年08月07日
今夜も、先週に引き続き、作家の村山由佳さんをお迎えしました。
村山さんは、立教大学文学部日本文学科卒業後、不動産会社勤務、塾講師などを経て、
1993年、「天使の卵〜エンジェルス・エッグ〜」で、第6回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。
2003年に発表した「星々の舟」では、第129回直木賞を受賞されました。
そのほかの著書に、「ダブルファンタジー」、「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズ、
200万部を超える「天使」シリーズや「ワンダフルワールド」、自伝的小説「放蕩記」などがあります。
先日、7月26日に集英社から「LaVie en Rose」を刊行されました。
一般企業に就職するも、小説を書き続け、作家という夢を叶えた村山さん。
今までの作家人生で思うことや、今後の夢とは何なのか?を伺いました。
──子供の頃から描いていた物語
茂木:作家デビューが1993年、小説すばる新人賞を受賞されたということで
この時は職業としては何をされていたんですか?
村山:主婦です。小さい頃から友達が「ケーキ屋さんになる」と言ってる頃に
「本を書く人になる」って言っていたんですよ(笑)。
茂木:じゃあ、子供の頃からいまの職業は……。
村山:”いつかなりたい、いつかなりたい、いつかなるものだ”と思ったら、そのためにあんまり努力をしなくてですね。
その時その時、やりたかったアルバイトや仕事、目につくところに飛びついていたので、実際に小説を書き上げて応募したのは主婦になってからなんです。
茂木:作家として影響を受けたのは、どれくらいいますか?
村山:新美南吉の「ごん狐」(笑)。あの読後感の衝撃たるや、子ども心に大きくて。
人と人とはこうも分かり合えないのかと、片方は狐だけど。
そういう読後感の小説を書きたくて書いたのが、デビュー作の「天使の卵〜エンジェルス・エッグ〜」なんですよ。
茂木:これまでに、意識的にスタイルは変えようとされてきたんですか?
村山:逆に、実人生の岐路みたいな時に、今まで書かなかった小説を書きたくなるんですよ。
書いてみたら”今までとテイストが違う”と自分で気付いて、結果論です。
茂木:ご結婚は2回ですよね?
村山:バツも2回です(笑)。
茂木:作品の中で、奥様のほうが活躍されてしまって、旦那様のほうが男のプライド保つのを苦労されるということが、よく書かれているんですが、あれは……。
村山:実人生から出てきたものもありますね(笑)。本当に男女、夫婦って難しいですね。
五木寛之先生がデビューをした私に言ったのは
「作家が主婦になることはあっても、普通に主婦をしてきた人が作家になってデビューするっていうのが、
どれだけ大変なことかは覚悟しておかないといけないよ。
人間には誰しもプライドがあるから、夫婦が上手くいかなくならないようにね」みたいなことを言われてですね。
当時、夫を立てまくったんですよ。
茂木:そういうことを言われたこともあり、ですよね。
村山:絶対にダメにもなりたくないし、大事な関係だと思っていたので。
「あなたのおかげで小説が書ける」と言っていたら、だんだん夫婦関係がいびつになっていってしまって。
そういう意味では、「LaVie en Rose」の中に、夫の方が稼ぎはそんなにないんだけど威張ってて、
妻のほうがすごい気を使ってて…とか、出てくるじゃないですか。
茂木:いま、そういうケースはすごくあるんじゃないんでしょうか。
村山:思いますね。いくら女性と男性が肩を並べるようになったとか、女の人が強くなったと言っても、いざ蓋を開けてみると支配と被支配の関係というのは、あまり変わってないんじゃないかと思いますね。
茂木:それは実生活でも苦労をされたということですか?
村山:これを苦労と言っちゃいけないんでしょうね。私の性格に難があるんだと思うんですけど、溜め込むだけ溜め込んじゃうんです。
我慢できないんだったら、最初から”我慢できない”って言えばいいのに、何年にも渡って我慢を溜め込んで、相手がすごく油断してるとき、限界を超えてちゃぶ台をひっくり返しちゃうみたいな(笑)。
茂木:びっくりするでしょうね。今までダメになっちゃったケースは、そういう感じだったんですか?
村山:そういう感じでしたね、本当に申し訳なかったと思います。
茂木:それまでは立ててくれてたのに、突然?
村山:「もう、ごめん!」みたいな感じで(笑)。
茂木:今後、またトライアルするみたいな考えではあるんですか?
村山:ご縁があれば…というか、さびしんぼうなので、一緒にいたがりなんですよね。
結婚という形かはわかんないですけど、恋愛は続けていたいなと思います。
──お互いが救われる
茂木:女性に対しては、どういう元気付けをしていくんですか?
村山:いま悩みを抱えてる女の人たちって賢くて、答えはみんな分かってるんですよ。
”どうしたらいいんだろう?”と思っても、いま考えても、どうにもならないということも含めて、きっと答えは分かってるんです。
もっと、人に話せればいいなと思うんですよ。
茂木:そうなんですね。
村山:同性でも異性でも、聞いてもらえる人が1人いると、最終的に「そうは言っても、頑張るしかないんだけどね」って、自分の口から出たらめっけもんで。
茂木:これ、村山作品の一つの重要なモチーフでもありますよね。
打明け話というか…実際に必要ですか?
村山:必要だと思います。話すだけで楽になることは、いっぱいあるから。
茂木:村山さんの場合、いまはどういう方が打ち明け相手になっているんですか?
村山:同性の友人もありがたいし、一緒にものづくりをする編集者は
私の人生とか、ものの考え方とか、悩みとかを、パートナー以上に知っていると思います。嘘つけないですよ(笑)。
茂木:そういう意味では、村山さんのお友達との関係は素敵でしょうね。
村山:自分にもし才能があるとしたら、人に恵まれる才能だと思ってます。
担当者に恵まれ、支えてくれる人に恵まれ……本当に思いますね。
茂木:そういう方がいらっしゃらない方が多いからね、何がポイントなんですかね?
村山:それが一番辛いと思うんですよね。強引に聞こえちゃうかもしれないですけど
そういう人のためにも、小説だけじゃない、映画でもなんでもそうですけど、フィクションってそういう為にあるんだろうと思うんですよ。
茂木:孤独な方にも届くと?
村山:実際に聞いてくれる人がいなかったとしても、映画になってたり、小説になってたり
そういう物語に触れると”同じことで悩んでる人間が、ここにもいる。私だけがダメなんじゃないんだ”とか、そういう風に救われるって、ものすごい力じゃないですか。
茂木:確かにそうですね。
村山:私にとって小説を書くって、書いてるあいだは孤独なんですけど、私がどこかで狼煙のけむりを上げて、それに対して”自分もそうだよ”みたいな感じで、読者の誰かが狼煙を上げ返してくれると、読者も”自分も1人じゃなかった”って思えるかもしれないし。
それは翻って、私にとってもそうなんです。
私が書いたことを分かってくれる人がいると思うと、私も”1人じゃなかった”と思えるんです。お互い救われてる感じですね。
●「村山由佳 Twitter」
「村山由佳 | 集英社」オフィシャルサイト
来週は、お化け屋敷プロデューサーの五味弘文さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。
村山さんは、立教大学文学部日本文学科卒業後、不動産会社勤務、塾講師などを経て、
1993年、「天使の卵〜エンジェルス・エッグ〜」で、第6回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。
2003年に発表した「星々の舟」では、第129回直木賞を受賞されました。
そのほかの著書に、「ダブルファンタジー」、「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズ、
200万部を超える「天使」シリーズや「ワンダフルワールド」、自伝的小説「放蕩記」などがあります。
先日、7月26日に集英社から「LaVie en Rose」を刊行されました。
一般企業に就職するも、小説を書き続け、作家という夢を叶えた村山さん。
今までの作家人生で思うことや、今後の夢とは何なのか?を伺いました。
──子供の頃から描いていた物語
茂木:作家デビューが1993年、小説すばる新人賞を受賞されたということで
この時は職業としては何をされていたんですか?
村山:主婦です。小さい頃から友達が「ケーキ屋さんになる」と言ってる頃に
「本を書く人になる」って言っていたんですよ(笑)。
茂木:じゃあ、子供の頃からいまの職業は……。
村山:”いつかなりたい、いつかなりたい、いつかなるものだ”と思ったら、そのためにあんまり努力をしなくてですね。
その時その時、やりたかったアルバイトや仕事、目につくところに飛びついていたので、実際に小説を書き上げて応募したのは主婦になってからなんです。
茂木:作家として影響を受けたのは、どれくらいいますか?
村山:新美南吉の「ごん狐」(笑)。あの読後感の衝撃たるや、子ども心に大きくて。
人と人とはこうも分かり合えないのかと、片方は狐だけど。
そういう読後感の小説を書きたくて書いたのが、デビュー作の「天使の卵〜エンジェルス・エッグ〜」なんですよ。
茂木:これまでに、意識的にスタイルは変えようとされてきたんですか?
村山:逆に、実人生の岐路みたいな時に、今まで書かなかった小説を書きたくなるんですよ。
書いてみたら”今までとテイストが違う”と自分で気付いて、結果論です。
茂木:ご結婚は2回ですよね?
村山:バツも2回です(笑)。
茂木:作品の中で、奥様のほうが活躍されてしまって、旦那様のほうが男のプライド保つのを苦労されるということが、よく書かれているんですが、あれは……。
村山:実人生から出てきたものもありますね(笑)。本当に男女、夫婦って難しいですね。
五木寛之先生がデビューをした私に言ったのは
「作家が主婦になることはあっても、普通に主婦をしてきた人が作家になってデビューするっていうのが、
どれだけ大変なことかは覚悟しておかないといけないよ。
人間には誰しもプライドがあるから、夫婦が上手くいかなくならないようにね」みたいなことを言われてですね。
当時、夫を立てまくったんですよ。
茂木:そういうことを言われたこともあり、ですよね。
村山:絶対にダメにもなりたくないし、大事な関係だと思っていたので。
「あなたのおかげで小説が書ける」と言っていたら、だんだん夫婦関係がいびつになっていってしまって。
そういう意味では、「LaVie en Rose」の中に、夫の方が稼ぎはそんなにないんだけど威張ってて、
妻のほうがすごい気を使ってて…とか、出てくるじゃないですか。
茂木:いま、そういうケースはすごくあるんじゃないんでしょうか。
村山:思いますね。いくら女性と男性が肩を並べるようになったとか、女の人が強くなったと言っても、いざ蓋を開けてみると支配と被支配の関係というのは、あまり変わってないんじゃないかと思いますね。
茂木:それは実生活でも苦労をされたということですか?
村山:これを苦労と言っちゃいけないんでしょうね。私の性格に難があるんだと思うんですけど、溜め込むだけ溜め込んじゃうんです。
我慢できないんだったら、最初から”我慢できない”って言えばいいのに、何年にも渡って我慢を溜め込んで、相手がすごく油断してるとき、限界を超えてちゃぶ台をひっくり返しちゃうみたいな(笑)。
茂木:びっくりするでしょうね。今までダメになっちゃったケースは、そういう感じだったんですか?
村山:そういう感じでしたね、本当に申し訳なかったと思います。
茂木:それまでは立ててくれてたのに、突然?
村山:「もう、ごめん!」みたいな感じで(笑)。
茂木:今後、またトライアルするみたいな考えではあるんですか?
村山:ご縁があれば…というか、さびしんぼうなので、一緒にいたがりなんですよね。
結婚という形かはわかんないですけど、恋愛は続けていたいなと思います。
──お互いが救われる
茂木:女性に対しては、どういう元気付けをしていくんですか?
村山:いま悩みを抱えてる女の人たちって賢くて、答えはみんな分かってるんですよ。
”どうしたらいいんだろう?”と思っても、いま考えても、どうにもならないということも含めて、きっと答えは分かってるんです。
もっと、人に話せればいいなと思うんですよ。
茂木:そうなんですね。
村山:同性でも異性でも、聞いてもらえる人が1人いると、最終的に「そうは言っても、頑張るしかないんだけどね」って、自分の口から出たらめっけもんで。
茂木:これ、村山作品の一つの重要なモチーフでもありますよね。
打明け話というか…実際に必要ですか?
村山:必要だと思います。話すだけで楽になることは、いっぱいあるから。
茂木:村山さんの場合、いまはどういう方が打ち明け相手になっているんですか?
村山:同性の友人もありがたいし、一緒にものづくりをする編集者は
私の人生とか、ものの考え方とか、悩みとかを、パートナー以上に知っていると思います。嘘つけないですよ(笑)。
茂木:そういう意味では、村山さんのお友達との関係は素敵でしょうね。
村山:自分にもし才能があるとしたら、人に恵まれる才能だと思ってます。
担当者に恵まれ、支えてくれる人に恵まれ……本当に思いますね。
茂木:そういう方がいらっしゃらない方が多いからね、何がポイントなんですかね?
村山:それが一番辛いと思うんですよね。強引に聞こえちゃうかもしれないですけど
そういう人のためにも、小説だけじゃない、映画でもなんでもそうですけど、フィクションってそういう為にあるんだろうと思うんですよ。
茂木:孤独な方にも届くと?
村山:実際に聞いてくれる人がいなかったとしても、映画になってたり、小説になってたり
そういう物語に触れると”同じことで悩んでる人間が、ここにもいる。私だけがダメなんじゃないんだ”とか、そういう風に救われるって、ものすごい力じゃないですか。
茂木:確かにそうですね。
村山:私にとって小説を書くって、書いてるあいだは孤独なんですけど、私がどこかで狼煙のけむりを上げて、それに対して”自分もそうだよ”みたいな感じで、読者の誰かが狼煙を上げ返してくれると、読者も”自分も1人じゃなかった”って思えるかもしれないし。
それは翻って、私にとってもそうなんです。
私が書いたことを分かってくれる人がいると思うと、私も”1人じゃなかった”と思えるんです。お互い救われてる感じですね。
●「村山由佳 Twitter」
「村山由佳 | 集英社」オフィシャルサイト
来週は、お化け屋敷プロデューサーの五味弘文さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。