2016年07月24日
今夜も、先週に引き続き、哲学者の岸見一郎さんをお迎えしました。
岸見さんは、高校生の頃から哲学を志し、京都大学大学院文学研究科に進学。
専門だった西洋古代哲学と並行して、1989年からアドラー心理学を研究され、
精力的に執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの「青年」のカウンセリングを行っていらっしゃいます。
岸見さんの著書には、「アドラー心理学入門」や、
古賀史健さんとの共著「嫌われる勇気」などがあり、多くの人達に読まれています。
今夜は、岸見一郎さんとアドラー心理学の出会いに注目してみます。
生活をしてく上で、アドラー心理学をどのように活用できるのか?など、
話題となっている「アドラー心理学」に注目してお話を伺いました。
──日常に根ざした哲学
茂木:岸見先生がアドラーブームを作られたわけですが、京都大学の哲学科ではプラトンの、特にどのあたりというのはあるんですか?
岸見:プラトンの幸福論ですね。人間は”幸福になりたい”と思っている、そこから始めるんですね。
でも、なぜか我々は幸せになれない、そのあたりの研究なんですね。
茂木:プラトンの著作だと、どのあたりになるんですか?
岸見:「メノン」とか、「国家」という大作を含めて、ほとんどがそのテーマに触れないものはないので、すべてと言っていいくらいですね。
茂木:プラトンにとって「幸福」というのは大きなテーマだったんですね。
子育ての時期に、アドラーと出会われたということですが、20年以上前ですよね。
この「嫌われる勇気」の前の年月というのは、アドラー研究はどういう感じだったんですか?
岸見:アドラーの英語と、ドイツ語による著作の翻訳をコツコツとしていました。
茂木:学者としてはもっとも基本的な作業の一つですね。
これは、先生がされる前はなかったんですか?
岸見:ありましたけど、ごく僅かでしたね。
茂木:普通の学術書ですから、そんなに売れないですよね?
岸見:全然売れないですね(笑)。
茂木:変な話になっちゃいますけど、その頃は生活費はどのあたりから?
岸見:大学の非常勤講師を通して生活をしていましたけど、専ら僕の妻が仕事をしていて、随分支えてもらいました。
茂木:奥さんはどういったお仕事を?
岸見:小学校の教師ですね。経済的優位であることが、人間の上下とはまったく関係ないこと、それを身をもって知っていますから。
茂木:「嫌われる勇気」がベストセラーになったのは、おいくつの時ですか?
岸見:ついこの間2年半前、58歳の時ですね。
茂木:奥様には、何か買ってあげたりはしたんですか?
岸見:あまりしてないです(笑)。「30年分を取り返しただけだ」と言われましたね(笑)。
僕は変わってないし、妻の僕に対する見方も全く変わってないですね。
茂木:奥様は哲学をやってらっしゃるんですか?
岸見:研究者ではなかったんですけど、もともと同じようなことをやっていましたね。
茂木:プラトンですか?
岸見:プラトンですね。
茂木:小学校の先生になられたのは、夫を支えるためですか?
岸見:それは聞いてみないと分からないですね。怖くて聞けないです(笑)。
茂木:20世紀最大の哲学者と言われている、ウィトゲンシュタインも小学校の先生をやっていましたもんね。
哲学と小学校の先生って、近いんですかね。
岸見:実践的というか、日常生活に遊離した哲学って意味ないですもんね。
──教育とは
茂木:京都大学というと、イメージは西田幾多郎さんみたいな、京都学派みたいなイメージがあるんですけど。
実際に学ばれていかがでしたか?
岸見:僕は西洋古代哲学研究室で研究したんですけど、原典を読むことを重視するんですよね。
ギリシャ語を一字一句たがわず、きちっと読んでいくという文献的なトレーニングをみっちり受けました。
茂木:やっぱり難しいのでしょうか?
岸見:難しいです。奈良女子大学で、長年古代ギリシャ語の講師をしていましたけど、彼女たちですらできない(笑)。
茂木:奈良女子大学といえば、優秀な生徒さんたちが集まっているところですけど、そこでもですか…。
岸見:でも、彼女たちは4月に「アルファ」「ベータ」「ガンマ」から始めて、11月にはプラトンの「ソクラテスの弁明」を、原典で読めるんですよ。僕はできなかったです。
なぜ、彼女たちが11月に原典で読めるようになったかというと、僕の先生よりも彼女たちの先生の方が優秀だったからです。
茂木:ということは、岸見先生が優秀ということですね(笑)。
岸見:後進の人が、教師、師匠を超えるというのが教育なんですね。
──世界を巡りたい
茂木:岸見先生の、今後の夢はどういうものになりますでしょうか?
岸見:これからは、体が許す限り全世界に行きたいんです。
講演をして回りたいんですよ。講演をする中で、直接人との交流をはかりたいです。人と人との繋がりというものがあるんだということを、多くの人に学んでほしいです。
茂木:どこらあたりからですか?
岸見:いま、韓国、台湾、中国、タイ、ブラジル、ポルトガル、スペインと翻訳がされていたり、これから出ますので。
ギリシャも入っていますね。
茂木:ギリシャは先生の原点ですものね。
岸見:僕の夢は、その国に行ってその国の言葉で話したいんです。
いま、韓国語の勉強を始めました。
茂木:韓国語で講演されるんですか?
岸見:すべては出来ないですけど、その一部を韓国語ですることが夢ですし、かなりできるようになったんです。だから、年齢とか関係ないんだという話なんですね。
僕らは、理由をつけてやらないじゃないですか?”年がいったから記憶力が…”とか、ああいうのは全部言い訳なんですよ。
夢かもしれないけど、実現不可能な夢じゃないと、僕は思っています。
●「岸見一郎 | 株式会社 幻冬舎」 オフィシャルサイト
次回は、今月の26日に集英社から新刊、「LaVie en Rose」を刊行されます、
作家の村山由佳さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。
岸見さんは、高校生の頃から哲学を志し、京都大学大学院文学研究科に進学。
専門だった西洋古代哲学と並行して、1989年からアドラー心理学を研究され、
精力的に執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの「青年」のカウンセリングを行っていらっしゃいます。
岸見さんの著書には、「アドラー心理学入門」や、
古賀史健さんとの共著「嫌われる勇気」などがあり、多くの人達に読まれています。
今夜は、岸見一郎さんとアドラー心理学の出会いに注目してみます。
生活をしてく上で、アドラー心理学をどのように活用できるのか?など、
話題となっている「アドラー心理学」に注目してお話を伺いました。
──日常に根ざした哲学
茂木:岸見先生がアドラーブームを作られたわけですが、京都大学の哲学科ではプラトンの、特にどのあたりというのはあるんですか?
岸見:プラトンの幸福論ですね。人間は”幸福になりたい”と思っている、そこから始めるんですね。
でも、なぜか我々は幸せになれない、そのあたりの研究なんですね。
茂木:プラトンの著作だと、どのあたりになるんですか?
岸見:「メノン」とか、「国家」という大作を含めて、ほとんどがそのテーマに触れないものはないので、すべてと言っていいくらいですね。
茂木:プラトンにとって「幸福」というのは大きなテーマだったんですね。
子育ての時期に、アドラーと出会われたということですが、20年以上前ですよね。
この「嫌われる勇気」の前の年月というのは、アドラー研究はどういう感じだったんですか?
岸見:アドラーの英語と、ドイツ語による著作の翻訳をコツコツとしていました。
茂木:学者としてはもっとも基本的な作業の一つですね。
これは、先生がされる前はなかったんですか?
岸見:ありましたけど、ごく僅かでしたね。
茂木:普通の学術書ですから、そんなに売れないですよね?
岸見:全然売れないですね(笑)。
茂木:変な話になっちゃいますけど、その頃は生活費はどのあたりから?
岸見:大学の非常勤講師を通して生活をしていましたけど、専ら僕の妻が仕事をしていて、随分支えてもらいました。
茂木:奥さんはどういったお仕事を?
岸見:小学校の教師ですね。経済的優位であることが、人間の上下とはまったく関係ないこと、それを身をもって知っていますから。
茂木:「嫌われる勇気」がベストセラーになったのは、おいくつの時ですか?
岸見:ついこの間2年半前、58歳の時ですね。
茂木:奥様には、何か買ってあげたりはしたんですか?
岸見:あまりしてないです(笑)。「30年分を取り返しただけだ」と言われましたね(笑)。
僕は変わってないし、妻の僕に対する見方も全く変わってないですね。
茂木:奥様は哲学をやってらっしゃるんですか?
岸見:研究者ではなかったんですけど、もともと同じようなことをやっていましたね。
茂木:プラトンですか?
岸見:プラトンですね。
茂木:小学校の先生になられたのは、夫を支えるためですか?
岸見:それは聞いてみないと分からないですね。怖くて聞けないです(笑)。
茂木:20世紀最大の哲学者と言われている、ウィトゲンシュタインも小学校の先生をやっていましたもんね。
哲学と小学校の先生って、近いんですかね。
岸見:実践的というか、日常生活に遊離した哲学って意味ないですもんね。
──教育とは
茂木:京都大学というと、イメージは西田幾多郎さんみたいな、京都学派みたいなイメージがあるんですけど。
実際に学ばれていかがでしたか?
岸見:僕は西洋古代哲学研究室で研究したんですけど、原典を読むことを重視するんですよね。
ギリシャ語を一字一句たがわず、きちっと読んでいくという文献的なトレーニングをみっちり受けました。
茂木:やっぱり難しいのでしょうか?
岸見:難しいです。奈良女子大学で、長年古代ギリシャ語の講師をしていましたけど、彼女たちですらできない(笑)。
茂木:奈良女子大学といえば、優秀な生徒さんたちが集まっているところですけど、そこでもですか…。
岸見:でも、彼女たちは4月に「アルファ」「ベータ」「ガンマ」から始めて、11月にはプラトンの「ソクラテスの弁明」を、原典で読めるんですよ。僕はできなかったです。
なぜ、彼女たちが11月に原典で読めるようになったかというと、僕の先生よりも彼女たちの先生の方が優秀だったからです。
茂木:ということは、岸見先生が優秀ということですね(笑)。
岸見:後進の人が、教師、師匠を超えるというのが教育なんですね。
──世界を巡りたい
茂木:岸見先生の、今後の夢はどういうものになりますでしょうか?
岸見:これからは、体が許す限り全世界に行きたいんです。
講演をして回りたいんですよ。講演をする中で、直接人との交流をはかりたいです。人と人との繋がりというものがあるんだということを、多くの人に学んでほしいです。
茂木:どこらあたりからですか?
岸見:いま、韓国、台湾、中国、タイ、ブラジル、ポルトガル、スペインと翻訳がされていたり、これから出ますので。
ギリシャも入っていますね。
茂木:ギリシャは先生の原点ですものね。
岸見:僕の夢は、その国に行ってその国の言葉で話したいんです。
いま、韓国語の勉強を始めました。
茂木:韓国語で講演されるんですか?
岸見:すべては出来ないですけど、その一部を韓国語ですることが夢ですし、かなりできるようになったんです。だから、年齢とか関係ないんだという話なんですね。
僕らは、理由をつけてやらないじゃないですか?”年がいったから記憶力が…”とか、ああいうのは全部言い訳なんですよ。
夢かもしれないけど、実現不可能な夢じゃないと、僕は思っています。
●「岸見一郎 | 株式会社 幻冬舎」 オフィシャルサイト
次回は、今月の26日に集英社から新刊、「LaVie en Rose」を刊行されます、
作家の村山由佳さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。