2016年07月11日
現在、東京にあるDNPミュージアムラボで、
フランス国立図書館とのコラボ展、「体感する地球儀・天球儀展」が開催され、話題となっています。
今夜は、この展覧会の為にフランスから来日された、
フランス国立図書館、地図部門の学芸員、クレール・シュメル(Claire Chemel)さんをお迎えしました。
クレール・シュメルさんは、フランス国立図書館の地図部門のデジタル化を担当し、
電子図書館「ガリカ」のコミュニティ・マネージャーも兼任されていらっしゃる方です。
そのクレール・シュメルさんに、この夏休み期間中にピッタリ、大人も子供も楽しめる、
「フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展」のお話を伺いました。
──「フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展」の見どころは?
茂木:日本の印象はいかがですか?
クレール・シュメル:日本に来るのは3回目ですが、東京にしか来たことがないから印象は限定的ですね。
東京は好きです、伝統と歴史と文化遺産がありながら、非常に近代性と伝統がうまくマッチングした街だと思います。
日本の方々は、相手を尊敬して大切に思ってくれます。
茂木:シュメルさんがいらっしゃる、フランス国立図書館の地図部門は、地理情報に関する資料を専門としていて。
フランス、そして世界中で製作された地図帳や地図、市街地図、地球儀、中世から現代に至る書籍など、およそ100万点の資料が保存されているそうです。
そのフランス国立図書館で、普段はどんなお仕事をされているんですか?
クレール・シュメル:国立図書館の地図部門の中にデジタル部門があって、2〜3人のチームのチーフをしています。
デジタル化をどの資料で行うかを決めていき、デジタル化が決まったら国立図書館の中にアトリエがあって、そこでデジタル化をしてもらいます。
なるべく早く、質の高いデジタル化をしてもらって、最終的には電子図書館の「ガリカ」に載せることになります。ガリカには4万点の地図がデジタル化されたものが展示されているんです。
それを一般の人に知らせるのも私の仕事で、コミュニティマネージャーという仕事をしています。その仕事の一環として、今回のような日本の展覧会を開いたり、また、ソーシャルネットワークでガリカの内容を伝えていきます。
茂木:シュメルさんが来日されたのは、今回の展覧会のためなのですが、この展覧会ではフランス国立図書館が収蔵する歴史的な地球儀と、天球儀の実物が展示されています。
この展覧会の見どころについて教えていただきたいのですが。
クレール・シュメル:文化遺産である地球儀や、天球儀を見られるとともに、現代的な最新の技術を見ることが出来ます、その2つが合体しているところが面白味です。
まず木星の地球儀、1535年頃のものですけど、木星に手描きの絵が描いてあるんです。
この地球儀の面白みというのは、アジアとアメリカの大陸がくっついているんです。当時は、アジアとアメリカが分かれているとは知られていなかったんですね。
茂木:なるほど
クレール・シュメル:次にヴェルザーの地球儀、これは16世紀後半のものなんですけど、銅に手で彫刻を施したもので、大変美しい美術品でもあり、歴史的価値のあるものです。
この地球儀で見ていただきたいのは、今度はアジアとアメリカの大陸が分かれているんですね。
その真ん中には日本も描かれていて、当時の名前である「ジパング」が付いています。
──『1人の人が、国立図書館にある資料をすべて読むとしたら15万年かかるそうです』
茂木:フランス国立図書館の地球儀・天球儀のコレクションは、ウィーン国立図書館、グリニッジ天文台とともに、世界三大コレクションの1つといわれています。
そのコレクションは、フランス国内でも常時公開されていないそうですけど、地球儀、天球儀をデジタル化するというのは、大変な作業だったと思うのですが、どれくらいの時間がかかったのでしょうか?
また、デジタル化する具体的な方法というのは、どういうものだったんですか?
クレール・シュメル:今回、大日本印刷の協力を得て、まず形を3Dにするという方法を編み出しました。
それとともに、地球儀、天球儀は読むものでもあるので、それがよく読めるようになっています。55体の地球儀、天球儀をデジタル化するために準備の他に6ヶ月かかっています。
方法は、6週間〜7週間かけて、まず写真を細かく撮っていくんです。
1体あたり、何百枚か写真を撮って、それをもとに3Dにするための計算をして3D化するというものです。
茂木:出来上がりを見ていかがですか?
クレール・シュメル:とても素晴らしい出来上がりになっています。
オリジナルでは見えなかった部分というのが、デジタル化によって見えるようになったんですね。
茂木:フランス国立図書館の持つ貴重な資料のうち、いま、だいたい何パーセントくらいがデジタル化が終わった状況なんでしょうか?
そして、このプロジェクトは今後も長く続いていくんでしょうか?
クレール・シュメル:ガリカ、つまり「フランス国立図書館」の電子図書館、これはフランス国立図書館とパートナーの図書館の資料が入っている、電子図書館です。
そこに書籍350万点がデジタル化されています。これは、まだほんの少ない数字でして、1人の人が、国立図書館にある資料をすべて読むとしたら、15万年かかるそうです。
すべてを電子化しようとすれば、かなりの時間がかかると想像されます。
──後世に残していくべきもの
茂木:もともと歴史学をやってらしたクレールさんにとって、その時代の地図を通して見えてくる、その時代の世界観や価値観、世界の見方はどういところが面白いですか?
クレール・シュメル:地図、地球儀や天球儀は、物理的にいろいろな街の地図を見ますと、その時の経済状態とか社会の仕組みが見えるんですね。おっしゃる通り、その当時の人がどういう価値観を持っていたかなど、地図や地球儀、天球儀を見ると分かります。
特に自分たちが発見してないものを、どういう風に描いているのがとても面白いんですね。
中世、16世紀のものを見ていきますと、まだ発見されていない大陸を描いていたり、空想の動物を描いていたり、モンスターが描かれていたり…想像上のものが描かれていたりします。
その当時の人たちが、どういう風に社会を想像していたかということが分かって、とても面白いです。
茂木:昔のヨーロッパの地図には、この先がわからないっていう時にそこに竜を描いたとか、本当なんですか?
クレール・シュメル:その通りです。ヨーロッパの人たちがまだ行っていない場所を描くときに、実際に見聞きした動物だけど、見たことがない。そういう場合は、想像したものを描いたりします。
それから、何があるか全くわからない場合は、竜とかグリフォンとかモンスター、想像上の動物を描いていました。
茂木:昔のヨーロッパの人たちは、本当に地球が平らだと思っていたんでしょうか?
また、地球が丸いということは知っていたんでしょうか?
クレール・シュメル:古代から、地球が丸いということは知っていたんです。
中世の人たちは、地球が丸いということを知らなかったというのは、現代になってから中世の時代は蒙昧主義だと、何も知らなかったんだと強調するために伝説として生まれたものなんですね。
でも、古代の時代から日食や月食を見て、影がうつるのが地球だと分かっていたので地球は丸いと知っていたんです。
茂木:クレールさんにとって、仕事を続けていく中で、”こういうことをしたい”という夢のようなことってありますか?
クレール・シュメル:私がやりたいのは、このデジタル化をもっと進めて、世界中の多くの人が資料とか図書に馴染むようにすることです。今はないかもしれない技術革新が起こって、デジタル化したものを、もっと有効に使えるようになれば、過去の遺産が生きるんじゃないかと思います。
●「Globes in Motion フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展」 オフィシャルサイト
次回のゲストは、哲学者の岸見一郎さんをお迎えしてお話を伺います。
どうぞお楽しみに。
フランス国立図書館とのコラボ展、「体感する地球儀・天球儀展」が開催され、話題となっています。
今夜は、この展覧会の為にフランスから来日された、
フランス国立図書館、地図部門の学芸員、クレール・シュメル(Claire Chemel)さんをお迎えしました。
クレール・シュメルさんは、フランス国立図書館の地図部門のデジタル化を担当し、
電子図書館「ガリカ」のコミュニティ・マネージャーも兼任されていらっしゃる方です。
そのクレール・シュメルさんに、この夏休み期間中にピッタリ、大人も子供も楽しめる、
「フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展」のお話を伺いました。
──「フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展」の見どころは?
茂木:日本の印象はいかがですか?
クレール・シュメル:日本に来るのは3回目ですが、東京にしか来たことがないから印象は限定的ですね。
東京は好きです、伝統と歴史と文化遺産がありながら、非常に近代性と伝統がうまくマッチングした街だと思います。
日本の方々は、相手を尊敬して大切に思ってくれます。
茂木:シュメルさんがいらっしゃる、フランス国立図書館の地図部門は、地理情報に関する資料を専門としていて。
フランス、そして世界中で製作された地図帳や地図、市街地図、地球儀、中世から現代に至る書籍など、およそ100万点の資料が保存されているそうです。
そのフランス国立図書館で、普段はどんなお仕事をされているんですか?
クレール・シュメル:国立図書館の地図部門の中にデジタル部門があって、2〜3人のチームのチーフをしています。
デジタル化をどの資料で行うかを決めていき、デジタル化が決まったら国立図書館の中にアトリエがあって、そこでデジタル化をしてもらいます。
なるべく早く、質の高いデジタル化をしてもらって、最終的には電子図書館の「ガリカ」に載せることになります。ガリカには4万点の地図がデジタル化されたものが展示されているんです。
それを一般の人に知らせるのも私の仕事で、コミュニティマネージャーという仕事をしています。その仕事の一環として、今回のような日本の展覧会を開いたり、また、ソーシャルネットワークでガリカの内容を伝えていきます。
茂木:シュメルさんが来日されたのは、今回の展覧会のためなのですが、この展覧会ではフランス国立図書館が収蔵する歴史的な地球儀と、天球儀の実物が展示されています。
この展覧会の見どころについて教えていただきたいのですが。
クレール・シュメル:文化遺産である地球儀や、天球儀を見られるとともに、現代的な最新の技術を見ることが出来ます、その2つが合体しているところが面白味です。
まず木星の地球儀、1535年頃のものですけど、木星に手描きの絵が描いてあるんです。
この地球儀の面白みというのは、アジアとアメリカの大陸がくっついているんです。当時は、アジアとアメリカが分かれているとは知られていなかったんですね。
茂木:なるほど
クレール・シュメル:次にヴェルザーの地球儀、これは16世紀後半のものなんですけど、銅に手で彫刻を施したもので、大変美しい美術品でもあり、歴史的価値のあるものです。
この地球儀で見ていただきたいのは、今度はアジアとアメリカの大陸が分かれているんですね。
その真ん中には日本も描かれていて、当時の名前である「ジパング」が付いています。
──『1人の人が、国立図書館にある資料をすべて読むとしたら15万年かかるそうです』
茂木:フランス国立図書館の地球儀・天球儀のコレクションは、ウィーン国立図書館、グリニッジ天文台とともに、世界三大コレクションの1つといわれています。
そのコレクションは、フランス国内でも常時公開されていないそうですけど、地球儀、天球儀をデジタル化するというのは、大変な作業だったと思うのですが、どれくらいの時間がかかったのでしょうか?
また、デジタル化する具体的な方法というのは、どういうものだったんですか?
クレール・シュメル:今回、大日本印刷の協力を得て、まず形を3Dにするという方法を編み出しました。
それとともに、地球儀、天球儀は読むものでもあるので、それがよく読めるようになっています。55体の地球儀、天球儀をデジタル化するために準備の他に6ヶ月かかっています。
方法は、6週間〜7週間かけて、まず写真を細かく撮っていくんです。
1体あたり、何百枚か写真を撮って、それをもとに3Dにするための計算をして3D化するというものです。
茂木:出来上がりを見ていかがですか?
クレール・シュメル:とても素晴らしい出来上がりになっています。
オリジナルでは見えなかった部分というのが、デジタル化によって見えるようになったんですね。
茂木:フランス国立図書館の持つ貴重な資料のうち、いま、だいたい何パーセントくらいがデジタル化が終わった状況なんでしょうか?
そして、このプロジェクトは今後も長く続いていくんでしょうか?
クレール・シュメル:ガリカ、つまり「フランス国立図書館」の電子図書館、これはフランス国立図書館とパートナーの図書館の資料が入っている、電子図書館です。
そこに書籍350万点がデジタル化されています。これは、まだほんの少ない数字でして、1人の人が、国立図書館にある資料をすべて読むとしたら、15万年かかるそうです。
すべてを電子化しようとすれば、かなりの時間がかかると想像されます。
──後世に残していくべきもの
茂木:もともと歴史学をやってらしたクレールさんにとって、その時代の地図を通して見えてくる、その時代の世界観や価値観、世界の見方はどういところが面白いですか?
クレール・シュメル:地図、地球儀や天球儀は、物理的にいろいろな街の地図を見ますと、その時の経済状態とか社会の仕組みが見えるんですね。おっしゃる通り、その当時の人がどういう価値観を持っていたかなど、地図や地球儀、天球儀を見ると分かります。
特に自分たちが発見してないものを、どういう風に描いているのがとても面白いんですね。
中世、16世紀のものを見ていきますと、まだ発見されていない大陸を描いていたり、空想の動物を描いていたり、モンスターが描かれていたり…想像上のものが描かれていたりします。
その当時の人たちが、どういう風に社会を想像していたかということが分かって、とても面白いです。
茂木:昔のヨーロッパの地図には、この先がわからないっていう時にそこに竜を描いたとか、本当なんですか?
クレール・シュメル:その通りです。ヨーロッパの人たちがまだ行っていない場所を描くときに、実際に見聞きした動物だけど、見たことがない。そういう場合は、想像したものを描いたりします。
それから、何があるか全くわからない場合は、竜とかグリフォンとかモンスター、想像上の動物を描いていました。
茂木:昔のヨーロッパの人たちは、本当に地球が平らだと思っていたんでしょうか?
また、地球が丸いということは知っていたんでしょうか?
クレール・シュメル:古代から、地球が丸いということは知っていたんです。
中世の人たちは、地球が丸いということを知らなかったというのは、現代になってから中世の時代は蒙昧主義だと、何も知らなかったんだと強調するために伝説として生まれたものなんですね。
でも、古代の時代から日食や月食を見て、影がうつるのが地球だと分かっていたので地球は丸いと知っていたんです。
茂木:クレールさんにとって、仕事を続けていく中で、”こういうことをしたい”という夢のようなことってありますか?
クレール・シュメル:私がやりたいのは、このデジタル化をもっと進めて、世界中の多くの人が資料とか図書に馴染むようにすることです。今はないかもしれない技術革新が起こって、デジタル化したものを、もっと有効に使えるようになれば、過去の遺産が生きるんじゃないかと思います。
●「Globes in Motion フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展」 オフィシャルサイト
次回のゲストは、哲学者の岸見一郎さんをお迎えしてお話を伺います。
どうぞお楽しみに。