2016年05月22日
今夜お迎えしたお客様は、先週に引き続き、奇想天外だけど実在する様々な生物を取り扱った、
『へんないきもの』シリーズが人気の著作家で書籍デザイナーの、早川いくをさんです。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、広告制作会社、出版社勤務を経て独立。
2004年には、奇想天外だが実在する様々な生物を取り扱った『へんないきもの』を出版。
累計55万部のベストセラーとなり、その後も「へんないきもの」シリーズは大ヒット。
本格的な作家活動を始めます。
現在は、「へんないきもの」シリーズをはじめ、より広い分野での活動を続けていらっしゃいます。
今夜は、早川さんご自身の今までの道のり、今後の夢について伺いました。
──子どもの頃、なりたかったものは……
茂木:早川さんは、どんなお子さんだったんですか?
早川:スポーツ大好きだとか、そういうのではなかったのは確かですね(笑)。
茂木:生物部をやっていたと伺いましたが?
早川:自然研究、雑草愛好会とか、陰口を叩かれていましたけどね(笑)。
茂木:実際に雑草を愛好されていたんですか?
早川:チームで草を研究するという、すごい地味なクラブだったんですよ。
私の担当は「イヌムギ」と「フウセンカズラ」、言っても誰もわからないと思うんですけど(笑)。
茂木:そこから、多摩美のグラフィックデザイン学科ですよね、この進路はどういう経緯だったんですか?
早川:子供の頃はエンジニアになるつもりでいたんですけど、電子工学とか響きがいい、かっこいいイメージがあったんですよ(笑)。
自分はそうなるんだろうと思っていたんですけど、挫折をしまして。
あれは抽象思考の世界だと思うので、例えばトランジスタの機能ひとつをとってみても、「ラジオ技術」とか、「模型とラジオ」とか、読んでいたんですね。
茂木:「ラジオ技術」読んでいたんですね(笑)。
早川:理解できないんですよね。数学とか、抽象的なことをすんなり飲み込めるやつは、どんどん進んでいけるんですけど、わたしは最初のところでつまづいちゃって。
そもそも、”電気というのが何なのか?”っていう、イメージできないんですよ。
茂木:”ちょっと向いてないな”と思って、グラフィックデザインに?
早川:僕は、いわゆるYMO世代というやつで。当時YMOが出てきて、レコードとかポスターのデザインがかっこいいなと思ったんですよね。
茂木:そこからだったんですね。多摩美に行かれて、どうでしたか?
早川:美大に行ったらですね、自分のイメージとは違うなって(笑)。
最初はデッサンとかやらされて、デッサンは予備校とかで散々やらされたので、”またかよ”っていう感じでした。つまらない木の立方体とか描かされて、”違うな〜”と思っていたんですよね。
──「俺による、俺のための、俺本」
茂木:多摩美を卒業したあと、最初は広告制作会社に就職されたんですか?
早川:最初は広告系だったんですね。
茂木:そのあと、出版社に行かれたんですか?
早川:そうですね。出版社とデザイン会社が合体したような会社があって、そこに縁があって。
茂木:「へんないきもの」を出されたときは、独立していたんですか?
早川:独立して、2〜3年ですね。
茂木:フリーになろうと思ったのは、どうしてですか?
早川:わたし、流し、流されるような人生を歩んでいるので。ちゃんとした目標と計画と、魂胆があって独立したわけじゃないんですよ。
会社に入ったはいいんですけど、肌に合わなくて辞めてしまって、”会社イヤだな”と思って(笑)。
茂木:フリーになろうと思ってなったというよりは、会社が合わなかったんですね。
早川:若さゆえの無鉄砲さというか……。
茂木:いよいよ、「へんないきもの」の企画が決まったのが、いつくらいですか?
早川:2003年頃、独立して2〜3年後ですね。
茂木:もしその企画がなかったら、どうなっていたんでしょうね。
その間は、どんなお仕事をされていたんですか?
早川:書籍のデザインを中心にやっていたので、いまでもやっているので、それだけをやっていたと思いますね。
茂木:ご自身としては、「へんないきもの」の企画はどうだったんですか?
早川:そのときお話したのは、僕は生物学者でもないし、アカデミックな教育を受けたわけでもないので、専門的な本にはなりません。自分の道楽の延長みたいな、「俺による、俺のための、俺本になりますけど、いいですか?」って聞いたら、いいって言うんですよ。じゃあ、人生の記念に本を出すのもいいかなと思って。
それからは、リサーチが膨大なことになってしまって(笑)。
茂木:どれくらい大変でしたか?
早川:「捜査は足だ」なんて言いますけど、とにかく、いろんな資料を足繁く図書館に通って、水族館に探しに行ったり、
地味な作業の延々とした繰り返しでした。
茂木:逆に言うと、それが向いていたということですか?
早川:向いていたかどうかと言うと、自然研究部の素養がそこで生かされたんですかね。
茂木:企画が決まってから出版まで、どれくらい資料集めとか時間がかかったんですか?
早川:1年半くらいですかね。
茂木:それも、ブックデザインの仕事をしながらですよね。
早川:そうですね。
茂木:本当に大変なんですね。ちょっとした思いつきでベストセラーができるほど、世の中甘くないってことですね(笑)。
──クリエーターとして
茂木:ブックデザインの方もそうですけど、名前が売れていて、やりやすくなったところもありますか?
早川:やりやすいところと、やりにくいところが表裏一体で、やりやすいところは「あの早川さんのところで…」というので、企画が通りやすいですね。
逆に言うと、「あの早川さんは、生き物の話だよね」っていうことに、どうしてもいっちゃうというか…。
茂木:一つ何かでブレイクしちゃうと、そのイメージがあるから難しいところですよね。
早川:ヒット曲を放った歌手の方とか、当たり役を得た俳優の方とか、気持ちがわかる気がしますね(笑)。
茂木:クリエーターとしては、どうしたらいいんですかね。早川さんは、どうされていますか?
早川:かいくぐるというか…本のタイトルにしても、全然違うジャンルの本を書きたい、出したいと思っても「このタイトルに”へんないきもの”って、付けませんか?」みたいな、そういう話になっちゃうので(笑)。逆に知りたいですね。
茂木:そこは、現在進行形で探ってらっしゃると。
早川:内容については自由がきくというか、自分の著作なので、そっちの方でやっていくしかないのかなと…。
売る方便としては、どうしても大人の妥協をせざるを得ないというところは出てくるんですけど。
内容のほうで、いかに伝えたいことを、読者の方が分かってくれるかというところの勝負になるのかなという気はしていますね。
茂木:クリエーターとして、”新しいことに挑戦する”というのと、”売れ筋!”という、ここのバランスですよね。
今後はどうされますか?
早川:ある時期までは、「俺は違うんだぞ」というのがあったんですけど。ある時点から、”もういいや”と、流れに身を任せてもいいのかなって。その中で、いかにオリジナリティというか新しいことをやっていくみたいな、そこが勝負かなと思います。
茂木:なるほど。
早川:流されつつ泳ぐというか、泳ぎつつ流されるというかですね……。
茂木:「へんないきもの」で、そういうのいそうだな(笑)。
この先に、今みたいなの読んでみたい気がする。「”へんないきもの”に学ぶ生き方、流されつつ泳ぐ」みたいな(笑)。
早川:それいいですね、そのままいただいていいですか(笑)。
●「早川いくを(@phagetypet40) | Twitter」
『へんな生きもの へんな生きざま』(Amazon)
来週は、ピアニスト・編曲家の島健さんをお迎えして、お話を伺います。
どうぞ、お聴き逃しなく!
『へんないきもの』シリーズが人気の著作家で書籍デザイナーの、早川いくをさんです。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、広告制作会社、出版社勤務を経て独立。
2004年には、奇想天外だが実在する様々な生物を取り扱った『へんないきもの』を出版。
累計55万部のベストセラーとなり、その後も「へんないきもの」シリーズは大ヒット。
本格的な作家活動を始めます。
現在は、「へんないきもの」シリーズをはじめ、より広い分野での活動を続けていらっしゃいます。
今夜は、早川さんご自身の今までの道のり、今後の夢について伺いました。
──子どもの頃、なりたかったものは……
茂木:早川さんは、どんなお子さんだったんですか?
早川:スポーツ大好きだとか、そういうのではなかったのは確かですね(笑)。
茂木:生物部をやっていたと伺いましたが?
早川:自然研究、雑草愛好会とか、陰口を叩かれていましたけどね(笑)。
茂木:実際に雑草を愛好されていたんですか?
早川:チームで草を研究するという、すごい地味なクラブだったんですよ。
私の担当は「イヌムギ」と「フウセンカズラ」、言っても誰もわからないと思うんですけど(笑)。
茂木:そこから、多摩美のグラフィックデザイン学科ですよね、この進路はどういう経緯だったんですか?
早川:子供の頃はエンジニアになるつもりでいたんですけど、電子工学とか響きがいい、かっこいいイメージがあったんですよ(笑)。
自分はそうなるんだろうと思っていたんですけど、挫折をしまして。
あれは抽象思考の世界だと思うので、例えばトランジスタの機能ひとつをとってみても、「ラジオ技術」とか、「模型とラジオ」とか、読んでいたんですね。
茂木:「ラジオ技術」読んでいたんですね(笑)。
早川:理解できないんですよね。数学とか、抽象的なことをすんなり飲み込めるやつは、どんどん進んでいけるんですけど、わたしは最初のところでつまづいちゃって。
そもそも、”電気というのが何なのか?”っていう、イメージできないんですよ。
茂木:”ちょっと向いてないな”と思って、グラフィックデザインに?
早川:僕は、いわゆるYMO世代というやつで。当時YMOが出てきて、レコードとかポスターのデザインがかっこいいなと思ったんですよね。
茂木:そこからだったんですね。多摩美に行かれて、どうでしたか?
早川:美大に行ったらですね、自分のイメージとは違うなって(笑)。
最初はデッサンとかやらされて、デッサンは予備校とかで散々やらされたので、”またかよ”っていう感じでした。つまらない木の立方体とか描かされて、”違うな〜”と思っていたんですよね。
──「俺による、俺のための、俺本」
茂木:多摩美を卒業したあと、最初は広告制作会社に就職されたんですか?
早川:最初は広告系だったんですね。
茂木:そのあと、出版社に行かれたんですか?
早川:そうですね。出版社とデザイン会社が合体したような会社があって、そこに縁があって。
茂木:「へんないきもの」を出されたときは、独立していたんですか?
早川:独立して、2〜3年ですね。
茂木:フリーになろうと思ったのは、どうしてですか?
早川:わたし、流し、流されるような人生を歩んでいるので。ちゃんとした目標と計画と、魂胆があって独立したわけじゃないんですよ。
会社に入ったはいいんですけど、肌に合わなくて辞めてしまって、”会社イヤだな”と思って(笑)。
茂木:フリーになろうと思ってなったというよりは、会社が合わなかったんですね。
早川:若さゆえの無鉄砲さというか……。
茂木:いよいよ、「へんないきもの」の企画が決まったのが、いつくらいですか?
早川:2003年頃、独立して2〜3年後ですね。
茂木:もしその企画がなかったら、どうなっていたんでしょうね。
その間は、どんなお仕事をされていたんですか?
早川:書籍のデザインを中心にやっていたので、いまでもやっているので、それだけをやっていたと思いますね。
茂木:ご自身としては、「へんないきもの」の企画はどうだったんですか?
早川:そのときお話したのは、僕は生物学者でもないし、アカデミックな教育を受けたわけでもないので、専門的な本にはなりません。自分の道楽の延長みたいな、「俺による、俺のための、俺本になりますけど、いいですか?」って聞いたら、いいって言うんですよ。じゃあ、人生の記念に本を出すのもいいかなと思って。
それからは、リサーチが膨大なことになってしまって(笑)。
茂木:どれくらい大変でしたか?
早川:「捜査は足だ」なんて言いますけど、とにかく、いろんな資料を足繁く図書館に通って、水族館に探しに行ったり、
地味な作業の延々とした繰り返しでした。
茂木:逆に言うと、それが向いていたということですか?
早川:向いていたかどうかと言うと、自然研究部の素養がそこで生かされたんですかね。
茂木:企画が決まってから出版まで、どれくらい資料集めとか時間がかかったんですか?
早川:1年半くらいですかね。
茂木:それも、ブックデザインの仕事をしながらですよね。
早川:そうですね。
茂木:本当に大変なんですね。ちょっとした思いつきでベストセラーができるほど、世の中甘くないってことですね(笑)。
──クリエーターとして
茂木:ブックデザインの方もそうですけど、名前が売れていて、やりやすくなったところもありますか?
早川:やりやすいところと、やりにくいところが表裏一体で、やりやすいところは「あの早川さんのところで…」というので、企画が通りやすいですね。
逆に言うと、「あの早川さんは、生き物の話だよね」っていうことに、どうしてもいっちゃうというか…。
茂木:一つ何かでブレイクしちゃうと、そのイメージがあるから難しいところですよね。
早川:ヒット曲を放った歌手の方とか、当たり役を得た俳優の方とか、気持ちがわかる気がしますね(笑)。
茂木:クリエーターとしては、どうしたらいいんですかね。早川さんは、どうされていますか?
早川:かいくぐるというか…本のタイトルにしても、全然違うジャンルの本を書きたい、出したいと思っても「このタイトルに”へんないきもの”って、付けませんか?」みたいな、そういう話になっちゃうので(笑)。逆に知りたいですね。
茂木:そこは、現在進行形で探ってらっしゃると。
早川:内容については自由がきくというか、自分の著作なので、そっちの方でやっていくしかないのかなと…。
売る方便としては、どうしても大人の妥協をせざるを得ないというところは出てくるんですけど。
内容のほうで、いかに伝えたいことを、読者の方が分かってくれるかというところの勝負になるのかなという気はしていますね。
茂木:クリエーターとして、”新しいことに挑戦する”というのと、”売れ筋!”という、ここのバランスですよね。
今後はどうされますか?
早川:ある時期までは、「俺は違うんだぞ」というのがあったんですけど。ある時点から、”もういいや”と、流れに身を任せてもいいのかなって。その中で、いかにオリジナリティというか新しいことをやっていくみたいな、そこが勝負かなと思います。
茂木:なるほど。
早川:流されつつ泳ぐというか、泳ぎつつ流されるというかですね……。
茂木:「へんないきもの」で、そういうのいそうだな(笑)。
この先に、今みたいなの読んでみたい気がする。「”へんないきもの”に学ぶ生き方、流されつつ泳ぐ」みたいな(笑)。
早川:それいいですね、そのままいただいていいですか(笑)。
●「早川いくを(@phagetypet40) | Twitter」
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来週は、ピアニスト・編曲家の島健さんをお迎えして、お話を伺います。
どうぞ、お聴き逃しなく!