花や植物は、ドライになることで個性がより際立ち、アレンジや飾り方の幅が広がります。時とともに移り変わる表情が楽しめ、日々の時間をより豊かなものにしてくれます。
今回はフローリストの小野木彩香さんに、ドライボタニカルの魅力を教えていただきます。
美しいドライボタニカルの作り方
いただいたブーケや飾っておいた生花を、そのまま吊るして乾燥させてもドライな状態にできますが、少しの工夫や気配りで、その美しさは全く違ってきます。単に乾いている状態ではなく、その植物の個性や姿が、美しくとどめられたものがドライボタニカルなのです。
ドライボタニカル作りで大切なことは、新鮮な植物を使うこと。花瓶に活けた後、花びらが落ちたり、変色しかけているものは、乾燥させると本来の色合いが失われてしまいます。ただし、花にしっかり水を吸わせてからドライにすることも大事。新鮮な状態で、花びらや葉の先まで水がしっかり行き渡った状態であれば、形も色も美しいドライボタニカルになるそうです。また、バラやラナンキュラスなど花びらが幾層にもなっているものは、しっかり開花してから乾燥させます。花びらの奥までしっかり乾燥することで、ふんわりと開いた華やかなドライボタニカルに仕上がります。
ラナンキュラスのドライボタニカル
乾燥のためには逆さに吊るすのが、ベストの方法です。重力で植物の茎がまっすぐに伸びた状態になり、形も整うので、アレンジする時に扱いやすくなります。ただ乾燥時の直射日光や湿気は厳禁で、風通しのよい屋内がおすすめです。水分の多いお花はドライフラワー用のシリカゲルなどを使いましょう。花や植物は、乾燥させている間も美しい状態を留めたまま、色や表情を変えてゆきます。時間とともに移ろう姿を見守ることも、ドライボタニカル作りの魅力です。
ユーカリとアジサイのスワッグ(右:半年後)
ドライボタニカルで楽しむ四季のアレンジ
小野木彩香さんがフローリストになるきっかけは、1本のガーベラでした。体調を崩し元気のない時に、友人から貰ったそのガーベラの美しさと、花に込められた思いに感動し、花の道を志して転職を果たします。平屋建ての日本家屋に魅力を感じ、郊外で出会った物件で花屋を開きますが、豊かな自然の中で暮らすうちに、使いたい花や趣味も変化していったそうです。「豪華で華美なものではなく、季節を伝えるアレンジを届けることで、暮らしに近い花屋でありたい」、そんな思いの中で出会ったのがドライボタニカルでした。ドライにした花や植物なら、もっと手軽に花を取り入れてもらえると考えたのです。
春色のミニブーケ
<小野木彩香さんおすすめの四季のドライボタニカル>
春は小さな野の花が豊富な季節。野の花はドライにした後、透明のガラスの試験管などに入れて、お部屋に飾ります。タグにメッセージを入れてプレセントにしても。
ドライボタニカルボトル
夏のおすすめはアジサイのリース。梅雨が明けて夏の日差しに少し水分を奪われたアジサイはドライにしやすく、落ち着いた色合いで和の風情が漂います。
枯れ色アジサイのリース
秋は野山や公園などで見つけた実ものを集めて古材に貼り付ければ、実りの秋を感じる素敵な標本になります。
秋の実の標本
小野木彩香さんの著書「朽ちてなお美しいドライボタニカル入門」には、一年を通じてドライボタニカルで四季を感じる喜びが紹介されています。水分が抜けることで軽やかになった花や植物は、どんな場所にも飾りやすく、周りの空間の雰囲気を変える力を持っています。春夏秋冬、季節ごとに植物に触れ、その姿や表情の変化を楽しむ時間は、きっと心を豊かにしてくれます。ドライボタニカルで季節を届けたい、それが小野木彩香さんの願いです。
TOKYO FM
「ONE MORNING」では、毎週金曜日、8時38分から、毎週週替わりのテーマでボタニカルな暮らしをご紹介するノエビア「BOTANICAL LIFE」をオンエアしています。
また、TOKYO FMで毎週土曜日、9時から放送している
ノエビア「Color of Life」。 1月23日は、歌手の坂本冬美さんを迎えてお届けします。どうぞ、お聞き逃しなく。
小野木彩香 おのぎあやか
夫婦で営んでいる北中植物商店の「花部門」担当。都内を中心としたウエディング、店舗装飾のほか、イベント出店、教室を行なっている。草花を使ったスタイリング、独創的なアレンジメントに定評がある。2021年春に新たなアトリエをオープン。
HP:
kitanakaplants.jp
Instagram:
@kitanaka_plants
『朽ちてなお美しいドライボタニカル入門』(X-Knowledge刊)
全写真:『朽ちてなお美しいドライボタニカル入門』(X-Knowledge刊)
撮影 高橋郁子