あなたのキレイと元気を磨く!「植物の力」で美しいライフスタイルを!

5000年以上の歴史を持ち、クレオパトラも愛した植物との暮らし。植物と向き合い、植物の声を聞くライフスタイルや、ボタニカル・フードのとっておきレシピ。植物の世界からあなたに届く「美しい贈り物」です。

―この番組は、2021年3月で終了しました。―

2016.09.09

Botanical Books6
写真集「世界遺産 屋久島」が綴る荘厳な自然と悠久の時間

  • BotanicalBooks
写真家三好和義さんは、タヒチ、セイシェル、ハワイなど「楽園」をテーマに数多くの作品を発表され、同時に「富士山」「京都」「仏像」などにも撮影対象を求められています。そして、9年という歳月をかけて撮影に挑んだのが「屋久島」。写真集「世界遺産 屋久島」には、荘厳な「自然」と地球が歩み続けてきた悠久の「時間」が収められています。


「植物」に関しての名著や新刊書、写真集などを毎回お届けする「ボタニカル・ブックス」。今月は、三好和義さんの写真集『世界遺産 屋久島』をご紹介します。


森と水の島 屋久島とは
1993年、青森県・白神山地とともに、ユネスコの世界自然遺産として正式登録された屋久島。南西諸島の北の端に位置し周囲132キロメートルの大きさを持つこの島は、標高2000メートルにせまる花崗岩の隆起によってできた高山を有し、豊かな自然が生まれる環境に恵まれていました。南国の蒼い海に囲まれ、山の斜面に沿って上昇した空気が冷却され雲ができやすいことから、非常に雨が多く、年間降雨量は同じ九州・鹿児島と比べても2倍。特に山間部は世界有数の多雨地帯と言われ、この雨が世界でも類いまれな森を作り上げたのです。土地の90%が森林で成り立ち、日本列島の縮図となる亜熱帯から亜寒帯に及ぶ気候環境がそれぞれの標高に合わせて垂直に分布し、多様な動植物が高い密度で存在しています。

そして、島のほぼ中央に位置し、そこに至る険しい道程のため、まだ人の目に触れて半世紀という屋久島の象徴「縄文杉」。その樹齢も未だ謎に包まれていますが、周辺の森のいたるところで、1000〜2000年を越える樹齢の巨木たちが森の長い歴史を今に伝えています。



写真から伝わる屋久島の自然の息づかいと命
巨木と歩んだ森の長い歴史と、豊かな雨水が作り上げた島の自然が見せる様々な情景。9年にわたりこの島を訪れ、深く森に入り撮影し、屋久島を細部にまで捉えたのが三好和義さんの写真集『世界遺産 屋久島』です。厚い苔で覆われた岩、深い緑を写す水の流れ、重なり合う樹々の葉や枝。一つ一つの写真から濃厚な森の空気が伝わり、三好和義さんが撮影で出会った光景を強烈に共有体験することが出来ます。


屋久島では大地に根をはる長寿の樹々も、それ自体が小宇宙のように動植物の命を育み、屋久島の森をより豊かにしているといいます。 瑞々しい苔をよじのぼるカエル、青空を写した水面に揺れる木の葉。この豊かな森と水の存在は、同時にこの地を命が繋がる場所にしています。

「屋久島」は、長い時間をかけて作り上げられた「豊かな生命の営み」の場でもあるのです。



森に流れる悠久の時間
木を敬い、木に自然界の魂や神の存在を見てきた日本の歴史文化。「屋久島」の森や巨木の存在は、長い歴史の中で作り上げられてきた日本の文化の象徴、心的風景そのものとされています。「大切なものを残して行く」。三好和義さんの作品につねに流れるこの創作の意思が「屋久島」に向かったのも、当然の出会いだったのかもしれません。

『世界遺産 屋久島』その巻末にはこんな自身の言葉が綴られています。

「気持ちが高まってくるとファインダーの中に映る苔むした風景が京都の庭に、滝やゆっくり動いてゆく霧が龍の姿に、地面につきささった倒木が仏像に、木々の間の巨木が五重の塔に見えてくる。(中略)手つかずの原始の姿を残した自然の姿こそが美術品であり、芸術の極地ではないだろうか。日本の中にも探してみれば、まだそういう美しい場所が残されている。先祖から受け継いだこれらの遺産を壊すことなく大切にし、未来に残し伝えてゆくことはたやすいことではないが、そのために美しい写真を撮ることは意義のあることだと思う。1枚の写真には多くのメッセージを込めることができる」

屋久島の森に足を踏み入れるということは、その自然を体験することと同時に悠久の時間に包まれるということ。三好和義さんの撮る一つの写真で私たちが体験出来るのは、風景や空気感といった視覚や肉体の感覚だけではなく、地球や人の歩んできた歴史や時間、魂の世界と語り合うという心的行為であるともいえるでしょう。


写真集『世界遺産 屋久島』。ページをめくりながら屋久島に流れる荘厳な自然と時間、未来へ贈るメッセージを、是非感じてみてください。

『世界遺産 屋久島』(小学館)



三好和義最新写真展情報
三好和義が撮る「日本の世界遺産〜九州山口の産業遺産から富士山まで」(仮)
■日程 10月19日〜25日
■会場 日本橋三越本店 1階中央ホール
日本の世界遺産のすべてを撮影している三好和義さんの日本で初めての「日本の世界遺産」をテーマにした写真展です。今回ご紹介した「屋久島」をはじめ、「小笠原の自然遺産」、「富士山」、「姫路城」などのハイライトが展示されます。


TOKYO FM「クロノス」では、毎週金曜日、8時38分から、毎週週替わりのテーマでボタニカルな暮らしをご紹介するノエビア「BOTANICAL LIFE」をオンエアしています。

また、TOKYO FMで毎週土曜日、9時から放送しているノエビア「Color of Life」。9月は女優の草笛光子さんを迎えてお届けしています。どうぞ、お聞き逃しなく。


三好和義(みよし・かずよし)
写真家。1958年生まれ、徳島県出身。実家のバナナ農家で南国を感じながら成長したことから、「楽園」をテーマに世界各国を撮影し続ける。1985年発表のデビュー写真集『RAKUEN』(小学館)はベストセラーとなる。1986年 第11回木村伊兵衛写真賞、2004年 藤本四八写真文化賞を受賞。2014年 ニッコールクラブ顧問就任。著書は『富士山』(講談社)、『伊勢神宮(日本の古社)』(淡交社)、『世界遺産 小笠原』(朝日新聞出版)、『世界遺産 屋久島』(小学館)など多数。

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