去年9月の柔道世界選手権で誕生したニューヒロイン、阿部詩。
女子52キロ級に出場し、準決勝までの4試合を一本勝ち。
決勝では、前年の世界女王、志々目愛（ししめ・あい）を延長の末、内股で撃破。
オール一本勝ちで金メダルを獲得、その名を世界に轟かせた。

この大会で兄の一二三は、66キロ級で2連覇を達成、日本勢で史上初の兄妹世界一となった。
兵庫県神戸市で育ち、詩は、3歳上の兄の後を追い、5歳から柔道を始めた。
飲み込みが早く、技の切れ味も抜群、周囲から、そのセンスは兄以上と評価された。
兄と同じく、豪快な一本を目指し、超攻撃型の柔道を貫いている。

中学では、全国大会優勝、さらに、シニア大会の講道館杯に出場するなど、メキメキと頭角を表した。
しかし、高校1年の時、初めての挫折を味わうことになる。
優勝候補と期待されたインターハイでまさかの初戦敗退。
柔道人生で初の一回戦負け。
油断した自分の甘さと力を出しきれなかった悔しさから泣き明かした。

救いの手を差し伸べてくれたのは、兄の一二三。
「この敗けをどういかすかは詩次第」と、高校まで来て直接稽古をつけてくれた。
そんな兄の期待に応えるため、詩は、毎日3時間以上に及ぶ猛練習でその背中を追った。
　　
翌年のインターハイ、詩は、オール一本勝ちで決勝へ進出すると、最後も豪快な内股で相手を投げ、全試合一本勝ちで優勝。
悔しい敗北を糧に飛躍的な成長を遂げ、その後は、国際大会で連戦連勝、「阿部詩」時代の到来を印象づけた。

今年の春からは、兄と同じ日本体育大学に進学し、切磋琢磨。
目指すは、来年の東京オリンピックで兄妹そろっての金メダル。
未来の大きな目標に向け、阿部詩がこの夏の世界選手権で連覇を狙う。


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