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Legend Story
16.11.12
羽根田卓也 銅メダル

急流が波打つ人工のコースに、羽根田卓也は力強く漕ぎ出して行った。
身をかがめ、のけぞり、24箇所のゲートすれすれを攻める。

リオオリンピック、カヌー・スラロームの男子カナディアンシングル決勝。
流れが比較的緩く、高低差も小さいリオのコースは、パワーではヨーロッパの選手に劣るものの、高い技術で最短距離を漕ぐ羽根田にとってうってつけだった。

ゲートに一度も触れること無く、ゴールした時点で暫定2位。
その直後、フランスの選手に抜かれ3位。
羽根田は、全選手がレースを終えるまで、カヌーに乗ったまま、電光掲示板を前に祈った。
  
最後の選手が5位となり、銅メダルが確定すると、羽根田は両手で顔を覆い号泣。
ヨーロッパで顔なじみのライバルたちに祝福され、ようやく顔をほころばせた。

元カヌー選手だった父親の勧めで、小学3年から競技をスタート。
高校時代にジュニアの世界大会に出るようになり、本格コースがない日本の環境がいかに遅れているかを思い知った。
 
高校卒業後、単身、カヌー強豪国のスロバキアに渡ったが、何もない18歳を支援してくれる企業はなく、唯一の理解者が父で、最初の数年間は活動費を頼っていた。

あれから10年…
3度目のオリンピックでついに手にした悲願のメダル。
4年後の東京大会は33歳で迎える。
金メダルを目指すかとの質問に、羽根田卓也は力強くうなずいた。


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