今週の「ATHLETE NEWS」は、レーシングドライバーの小林可夢偉選手をお迎えしました。
可夢偉選手といえば、モータースポーツの最高峰、F1に2009年から参戦。2013年に一度離れたものの去年F1に復帰、戦い続けられてきました。そして、今年は、12年ぶりに国内レースの「全日本選手権スーパーフォーミュラ」に参戦するとあって、大きな注目も浴びています。
ー可夢偉選手といえば、鈴鹿で表彰台に立った姿が印象的でした。どんなお気持ちでしたか?
「自分自身も、それまで表彰台に立てるチャンスがありながら、なかなかそこに行けなかったし、初めての表彰台が日本という所で、ファンの皆さんの応援があったり、結果がうまくついてきたなと思います。自分では感じられないけど、後々考えると、そういう力は大きいのかなと思います。逆に言えば、それがプレッシャーになってダメになる人もいますよね。
それが良い方向に動いたので、良かったなと思います。レースは気持ちで結果を残せるわけじゃなくて、積み重ねがあってからこそ出来るレース、そういう所で結果を残せたのは良かったです。世界的に見て、日本のレースのお客さんの数は多いんですよ。しかも、日本の応援の仕方が熱狂的で、世界の中でも熱い応援をするのは、ドイツか日本人じゃないかと思います」
ーF1というと、300キロを超えるスピードですよね。ああいう景色はちょっとしか見えてないものですか?
「意外に何もないので、視界は広いんですよ。レース上では、高速道路のような追い抜きがないので、前にいる車を追いかけて抜くかだけなので、けっこう視界は広いんですよ」
ーよく「G」が、かかると言われますが、どのくらいかかるものなんですか?
「ブレーキを踏む毎に5Gかかると言われていて、物の重さの5倍と言われています。頭の重さが、だいたい10キロなので、50キロがブレーキを踏んだらかかってくるんです。それが、1分20秒〜30秒の時に、だいたい16〜7回、というのをやりながらレースをします」
ー運転している時は、痛いんですか?
「意外に体は痛かったりします。「ル・マン24時間レース」などの耐久レースでは、血だらけでレースしている人もいますね。シートが自分のシートじゃなかったりするんですよ。体が合ってなかったりすると、そういう所が血が出たりして、意外に過酷です」
ーそういう「G」に耐えるためには、どんなトレーニングをしたらいいんですか?
「どっちかというと、ドライバーの練習ってないんですよ。正直なところ、練習をすればするほど、速くなれる要素ってたくさんあるんですよね。ただ、そうするとお金がかかり過ぎるという所で、練習するのをルールで規制しているんですよ」
ーお金を持っている人が、多く練習出来ちゃうからという事ですね。
「一千億と、百万円じゃ、出来る事ってすごい差じゃないですか。でも、その差が明らかに出る世界なんですよ。百万円じゃ、奇跡があんまり起きなかったりするので。それがある意味、モータースポーツの一番の難しさですね。毎日練習出来るわけじゃないし、僕らは物がないから出来ないんですよね」
ーそうすると、普段は何をされているんですか?
「トレーニングとサウナしかしないですね。10分、15分をワンセットとして、そこから水風呂入って、またサウナに入って、というのを繰り返して、だいたい3セットですね。トレーニングではないんですけど、水風呂に入ると、「こんなことやりたいな」とか、考える時間・発想が浮かぶらしいんですよ」
ーサウナより水風呂なんですね
「水風呂の方が大事なんですよ。サウナは水風呂に入るための一つの行為で、サウナに入ってから、水風呂に入った瞬間に自分が息している軌道を感じるんですよ。こうやって酸素って流れているんだと、感じる事が出来るんです」
ー精神統一みたいなものに近いんですかね
「そうかもしれないですね」
ー今年は、12年ぶりに国内レースの「全日本選手権スーパーフォーミュラ」に参戦しますね
「日本のレース界って思ったよりも浸透していないんですよ。世界の中でハイレベルな戦いをしてるんですけど、そのハイレベルな戦いに対して、あまり認知されていないのが残念で、興味を持ってくれる人がいたらなと思い10年ぶりに日本でレースをしようかなと思いました。
最高峰と言われるレースで、シューマッハとかもこのレースである意味結果を残して、F1に行ったりしたんですよ。このシリーズって、今でもすごくレベルの高いレースをしているので、F1ほどお金がかからないので観に来てほしいなと思います」