今週の「ATHLETE NEWS」は、先週に引き続きニューヨーク・ヤンキースから古巣・広島東洋カープに復帰された黒田博樹投手です。
日米の野球の違いやヤンキースのスーパースター、デレク・ジーター、世界一のクローザー、マリアーノ・リベラの意外なエピソードを語っていただきました。
藤木「メジャーと日本の違いってよく聞きますが、ボールが違ったり、マウンドも違う。向こうは先発になると、中4日で162試合を19連戦とか平気であるじゃないですか」
黒田「毎日ユニホームを着ているような感じでしたね。向こうでは延長戦を、それこそ20回とか普通にやってしまうので、延長戦にならない事だけ祈っていましたね(笑)。日本の感覚だと、雨が降ると中止になるのでテンションが上がるけど、アメリカだとテンションが下がりますね(笑)」
藤木「雨でノーゲームになると、プレーオフの為にどこかでダブルヘッダーが組まれたりするんですよね」
黒田「その日にダブルヘッダーしたり、休みだったのに試合が入ったりするんですよ」
藤木「体力的にもタフじゃないといけないんですね」
黒田「走ったりする体力じゃない体力というか、身体の馬力というか、そういうものは感じました。時差もあるし、夜中移動して朝方に着いて試合という事も普通にあるので、ホテルで目が覚めても、どこにいるか分からなくなるくらいハードでしたね」
藤木「チームメイトのコミュニケーションは英語がメインになると思いますが、どうでしたか?」
黒田「僕自身はほとんど喋れなかったので、大事なコーチや監督、メディアの方と話す時は通訳を頼って話していました」
藤木「ドジャースのカーショウ投手とは、仲良くなりましたか?」
黒田「彼のデビューと僕のメジャーに渡った一年目が一緒だったので、常に一緒にいてキャッチボールをしたり、お互いに感じ合えるものがあったので、僕にとっては良い経験をさせてもらいました」
藤木「ドジャースから移籍するかしないかという時に、カーショウ投手が「残ってもう一回やろう」と言ったそうですね?」
黒田「ドジャース最後の年は、たぶんドジャースには戻って来られないなというのはあったので、彼がそういう事を言ってくれて大号泣したのを覚えています」
藤木「やはり、黒田さんの人柄に感じるところがあるのではないでしょうか?」
黒田「どうなんですかね。僕は、たくさんの素晴らしいプレーヤーと出会えて幸せだと思いますね」
藤木「そして、ドジャースからヤンキースに移籍されましたが、やっぱりチームカラーが違うイメージなんですけど、ヤンキースはどうでしたか?」
黒田「今シーズンで最後だと思って行きましたし、メディアの厳しさとか、チームは毎年優勝争いをしなければいけない、そういう事も分かっていたので、かなりの覚悟を持ってニューヨークに行ったのを覚えています」
藤木「イチロー選手がヤンキースに移籍された時に、大人の集団だと言っていましたが、チームメイトだったり雰囲気も違いましたか?」
黒田「西海岸と東海岸の違いもありますけど、ヤンキースの一人一人が持っている雰囲気、クラブハウスの雰囲気も違いましたね」
藤木「ヤンキースはリリーフ陣が弱かったじゃないですか。黒田さんが勝ち投手の権利を持ちながら、次にバトンタッチして、勝ち星を消されたとか多かったですよね?」
黒田「んん〜・・・はい(笑)」
藤木「なかなか、うんとは言いづらいかもしれないですけどね(笑)。ジーター選手のホームゲームの最終戦も8回まで3点差で勝っていて、次に登板するかと言われた時に、そのまま投げていたらシーズン200イニング達成できたわけですよね」
黒田「ポジティブに解釈すれば、僕が200イニング投げていたら、ジーターのサヨナラヒットは生まれていなかったと思うので、そういう意味ではジーターが持っていたのかなと思います。あの日も大雨警報が出ていて、前日からすごい雨だったので、もしかしたら中止になるかもと言われていましたから。朝から雨で練習もなしで、いざ連絡が来たらオンタイムでゲームが始まると言われて。慌てて準備して練習を始めると、ヤンキースタジアムの上に虹がかかっていたんですよ。ジーターだなと、思いました。やっぱり、彼は何か持っているんでしょうね」
藤木「メジャーでの成績が79勝79敗(通算7年)じゃないですか。あの時に勝ちが付いていたら勝ち越していましたよね」
黒田「今だから言えますけど、マリアーノ・リベラの最後のシーズンも、彼が2敗しているんですけど、その2回とも僕の登板だったんですよ(笑)」
藤木「絶対的な守護神だったのに、ちょっと打たれる時もありましたよね。そこは黒田選手でも、さすがに文句は言えませんか?(笑)」
黒田「さすがに言えないですね(笑)。あれだけの選手なので落ち込んだりしないですし、その代わり試合終わって、9回自分の仕事が終われば、すぐシャワーを浴びて帰るタイプなんですよ。登板がない投手と同じタイミングでシャワーに入ってきて、鼻歌歌いながらそのまま帰っていきますから(笑)。世界を代表するクローザーはこんな感じなんだなと思いましたね。アイシングはほとんどしなかったと思いますね」
藤木「日本とアメリカって幅の広さも違いますか?人種も色んな人種がいて、他に驚いたことはありますか?」
黒田「僕が一番驚いたのは、ドジャースの1年目プレーオフに出た時。前日にセットアッパーの投手が右腕に思いっきりタトゥーを入れてきたんですよ。手を見たら、すごく腫れ上がってるんですよ。「今日は大事なプレーオフだぞ」と言ったら、「痛くないから大丈夫」と言うんですけど、どう考えても2倍位に腫れてるんですよ(笑)。日本人の感覚では考えられない事がありますね」
藤木「去年ヤンキースでは、田中将大投手、イチロー選手もいましたが、コミュニケーションはとったりするんですか?」
黒田「野手とピッチャーで時間帯が違うんですけど、ベンチにいる時はイチローさんと会話をする事はありますけど、それ以外の練習とかでは、ピッチャー同士で、マー君と一緒にいる時間が多かったですね」
藤木「今年イチロー選手はマーリンズに移籍されて、ビックリしたのがイチロー選手がメジャーの野手で最年長なんですよね」
黒田「カープに帰る時にイチローさんに連絡させてもらって、イチローさんもまだ決まっていない時で、イチローさん自身も考える事があって、僕は決断を楽しみにしていましたね。イチローさんらしいなという感じはしましたけどね」
藤木「毎週、インタビューをした方にお気に入りの一曲をお聞きしています」
黒田「ヤンキースに移籍して、ヤンキースタジアムでマウンドに上がるときに流してもらっていた曲The Scriptの「Hall of Fame ft. will.i.am」です。試合前の自分の気分を高める時に、iPadでメンタルトレーナーが作ってくれるんですよ。その中の1曲だったんですけど、いいイメージの三振をとったり、打ちとっている映像を見ながら、毎試合5分間くらいのビデオを見てマウンドに上がっていたんです。それでしっかりスイッチを入れて、いざ試合前のブルペンに向かうというルーティンの中の一つですね」
藤木「最後にリスナーの皆さんにメッセージをお願い出来ますか?」
黒田「8年ぶりに広島カープに帰って来て、先はそんなに長くないと思いますけど、1試合1試合、1球1球を大事に、最後だと思ってマウンドに上がりたいと思うので、そこを見てもらえれば嬉しいですね。みなさんの期待に答えられればいいかなと思います」