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先週に引き続き、2016年リオ・オリンピック競泳男子400m個人メドレーで金メダルに輝いた萩野公介さんをゲストにお迎えして、北京オリンピック後半戦を振り返っていきました。
萩野公介(はぎの・こうすけ)さんは、1994年、栃木県出身。
高校3年だった、2012年のロンドン・オリンピックでは400m個人メドレーで銅メダルを獲得。
2016年のリオ大会では400m個人メドレーで金メダルを獲得するなど、リレー種目と合わせ金・銀・銅3つのメダルを獲得されました。
競技人生の集大成として臨んだ東京大会は、200m個人メドレー6位入賞。大会後に、現役を引退されました。
──先週もゲストとして来てくださいましたけれども、あれからまだ1週間しか経ってないと思えないぐらい、毎日いろんな出来事、感動、ドラマがありましたよね。
そうですね。選手のみなさんが頑張っている1週間、毎日「今日はあの選手が出てくる」「明日はこの選手が出てくるんだ」とチェックする。そういう生活を今までしたことがなかったので、初めてこれだけじっくり見ることができて、やっぱりスポーツは楽しいなと思いながら見ていましたね。
──萩野さんと同い歳の髙木美帆選手の有終の美を飾る金メダル(1000m)も、感動しましたよね。
金メダル、感動しましたね。でも、その前の500m。団体もそうですけど、やっぱり500mぐらいから流れが変わった。野球とかって、流れってあるじゃないですか。競泳もそうなんですけど、なぜかはわからないんですが、チームの雰囲気が悪いと、個人競技なのに、みんな結果があまり良くないんですよね。だから、流れが良い時とか、自分が「よし、いけるぞ!」という時…それを自分で手繰り寄せた努力とかもあると思うんですけれども、やっぱりそこ(500m)でガラッと(流れが)変わったなと思って見ていましたね。
──コーチが新型コロナウイルスで陽性になって、一緒にいられなかった。それが(途中で)合流してくれたというのも大きかったみたいですが。
ものすごく大きいんじゃないでしょうか。正直、コーチが来て試合の前に何をアドバイスするかって言われたら、テクニカル的なことは半分もないと思います。3割とか4割。あとの6割とか7割というのは、やっぱり(選手が)最後に「今まで頑張ってきたけど、どうしよう」と不安に思ったところを、そっと背中を押して「お前なら大丈夫だ」って言ってくれる。ずっと一緒に戦ってきた人が言ってくれる言葉が、試合の前だとテクニックよりも何よりも力を持つ。僕はそう思うので、だからこそ髙木美帆選手もコーチが来てから安心したっていう気持ちもあるのかなと思います。
──最後を決めるのは、ある意味メンタル。
メンタルですよ。だって、ここに出る人たちは、努力はみんなしてきてますから。そこから何で差が生まれるかって言ったら、最後の、ほんのちょっとの紙一重の部分。それこそスピードスケートなんて、最終的にもつれて(差が)0.001秒とかにまでなる時があるじゃないですか。
──その瞬間、ほんの1mmの差を決めるのは、やっぱり心なんですね。
そうだと思います。最後の、足を出した、スケートの刃の先がどれだけ前に出るか。またそれも面白いですよね。
──髙木美帆選手は中距離が得意だった。今回、500mに出場するかちょっと悩んだとも仰っていましたよね。
悩むという気持ちもすごくわかるんですよね。体はきつくなってきて“大丈夫かな”と思うけど、でも自分でその種目に出ると決めてこの場に出てきているから…というところもあったんだと思いますが、試合って、最初の方にレースを重ねていくと、筋肉に刺激が入って、後半の方は意外とスピードが上がってきたりするんです。
例えば陸上で、マラソンを走る刺激と100mを走る刺激って、全然違うじゃないですか。それと同じように、例えば3000mをやった後に1500mをやってって徐々に距離が短くなってくると、スピードの要素が必要になってきて、筋肉にスピードの刺激が入るんですよね。遅筋と速筋というものが筋肉にあって、その速筋の方に刺激が入りやすくなってくる。そうすると、スピードがどんどん出やすくなっていく。レースは疲れるんですけど、レースで鍛えられることもあるんですよ。
人によってなんですけど、髙木美帆選手の場合はたくさん出て行って、その中で自分で雰囲気を掴んでいって、最終的に1000mでオリンピックレコードで優勝、という。本当に感動しましたね。
──スピードスケートは2人ずつ走るじゃないですか。あれも大きそうだなと。500mで言うと、髙木美帆選手は滑走順が早かった。早々にあんなにすごいタイムを出して(他の選手に)プレッシャーを与えて。水泳だと、決勝は全員「よーいどん!」じゃないですか。あれは、泳ぎながら隣のレーンとかどのあたりまで見えているんですか?
泳ぐ種目によって違いますけど、例えばクロールだったら、呼吸で向いている側の選手は全員見れますね。逆に言ったら、バタフライとか平泳ぎは基本的に前を向いて呼吸をするので、ほとんど変わらない位置で泳いでいたら、どっちが前に出ているのかわからないです。
でも、例えば隣の選手と競っていて、タッチした瞬間にどちらが勝ったか負けたかというのは、だいたい0.1秒の差だったら確実にわかります。0.05秒ぐらいでもわかりますね。0.03秒ぐらいになったら“どっちだろうな”と思いますけど。
──そしてパシュート、団体追い抜きでは、本当に最後の最後、リードしている時に髙木菜那選手がバランスを崩して(銀メダル)。
あれがオリンピックなんでしょうけど、でもやっぱり金メダルは本当にチームみんなで目指していたものだと思うので、すごく辛い部分だったと思います。
──そして、カーリング女子日本代表、素晴らしかったですよね! 1次リーグ最終戦で敗れたスイスに勝ち、決勝進出。萩野さんはどのようにご覧になっていましたか?
僕だったら、もし前日に負けていたら、“よし、明日は絶対に勝ってろう!”と思うか、“いや、また負けちゃうんでしょ”と悪い方に引きずられるか…。人間はどうしても悪いことをイメージしがちだと思うので、そちらに引きずられてしまうところを、チームで戦っていって勝ったということが、何よりもすごいなと思っています。でも、1人じゃないからこそできたのかなとも思いますし、何よりもやっぱり、スイスもそうだし、日本もそうだし、全力を出し切って戦っている姿は、何よりも美しいなと思って見ていましたね。
──次は決勝戦ということで、もうメダルは確定。これは明日(2/20)の朝、見逃せませんよね。相手はイギリスです。
そして、ノルディック複合。今回旗手を務めた渡部暁斗選手が、個人でも銅メダル、そして今回「団体でメダルを獲りたい」と言ってましたけれども、28年ぶりに団体でメダルを獲得(銅メダル)。素晴らしかったですよね。
(渡部暁斗選手は、個人の)ノーマルヒルではジャンプがいまいちだったんですけれども、それから調整して、ラージヒル。そして、トップを滑っていたノルウェーの選手がコースを間違えて、こんなことがあるのか、と。萩野さんは、泳いでいて“今、何ターン目だっけ?”とかなったりしたことはないですか?
今回思ったのが、それこそスピードスケートの500mで、スタートしてすぐに(ラスト1周を知らせる)鐘を鳴らしますよね。でも多分、(500mは1周しかないので)「あと1周」って誰しもが分かっていることだと思うんですよ(笑)。だから“あれを鳴らす必要があるのかな”って思ってたんですけど、競泳も鐘を鳴らすという制度があって、それは1500m自由形とか800m自由形とか、長距離(種目)にだけあるんですよ。25mプール、短水路での試合があるんですが、短水路の400mと長水路(50mプール)の800mって、ターンの数は一緒じゃないですか。だけど、短水路の400mは(ラストのターンの)鐘を鳴らさないんですよ。
──え! なぜですか?(笑)
わからないんです(笑)。だから、350mで間違ってタッチしちゃったりとか、400mでもまだ足でターンしようとする選手がけっこういるんですよ。世界大会とかになってもいるんですよね。
だから、僕は今回その500mのスピードスケートを見て、(スケートでは)誰しもがラスト1周とわかっているのに鐘を鳴らしているんだから、競泳の方でも、短水路での400mでも(ラストターンの鐘を)鳴らしてほしいと思いましたね(笑)。
──そして、ニューヒロインも誕生しました。スノーボード女子ビックエアで銅メダルに輝いた村瀬心椛選手。まだ高校2年生、17歳でしたよね。ご覧になりましたか?
もちろん見ていました。この競技ですごく印象的だったのは、例えば大技にチャレンジしようと思ってできなかったり、逆で成功したりした時に、みんなで「おめでとう」とか言い合っている。やっぱり(各地を)転戦しているから…。
──仲間意識が。
そうです。戦う敵なんですけど、仲間意識がありましたよね。あれはすごく素敵だなって思って見ていましたね。金メダルを獲った選手も、最後の3本目でめちゃくちゃ大技を決めて優勝したじゃないですか。そういうのを見ていて、もちろんそれを“悔しい”とも思ってるだろうけど、“仲間が頑張った結果なんだな”って受け止めるあの姿が、すごく印象的でしたね。
──4位に入った岩渕麗楽選手ですが、3本目がすごかった。前日の予選の時に手の甲を骨折してしまっていたので、「左手でグラブするのが怖かった」みたいなことを仰っていましたけれども、(決勝の3本目で)トリプルアンダーフリップ。もうちょっとで立てそうでしたけれども。
あれは本当に鳥肌が立ちましたね。
──そして終わった後に海外の選手がいち早く来てハグしていて、「すごい技をやったね」って(祝福してくれていた)。こういうカルチャーなんだと思って、あのシーンは感動しました。
すごかったですね!
──今回は、偉大なオリンピアンの萩野さんと、いろんな競技の話、そして競泳のエピソードを聞くことができて、本当に贅沢な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございます。
まだまだ話し足りないんじゃないですか?
スポーツは、いつでも何かしらの競技をやっていますから。夏季オリンピック、冬季オリンピック、パラ(パラリンピック)もそうですけれども、本当にいろんなスポーツがありますから、みなさん、オリンピックでスポーツの魅力に気付くチャンスがあったと思うので、これからもスポーツを好きでいてくれたら嬉しいなと思いますね。
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