今週の「Athlete News」は、青山学院大学陸上競技部の原晋監督をゲストにお迎えして、生放送でお届けしていきました!
原晋 (はら・すすむ)監督は、1967年生まれ、広島県出身。
2004年に、青山学院大学の監督に就任され、箱根駅伝を2015年から2018年まで4連覇。
“青学黄金時代”を築かれました。
去年は、4位に終わりましたが、雪辱を期して臨んだ今年は、10時間43分42秒の大会新記録で王座奪還。
2年ぶり6回目の総合優勝を果されました。
今回はリモートでお話を伺っていきました。
──お久しぶりです。また、改めまして、優勝おめでとうございます。大会が終わってからは少しはゆっくりされたんですか?
次の日はテレビ番組に朝から生放送で出演させていただきまして、心地良い疲れは残っているんですけども、嬉しい疲れなのでね。番組出演はこれからもあるんですけれども、今日も今から練習がありまして、通常の生活に戻りつつあります。
──「5日からもう新チームが始動した」なんていう記事もありましたけれども。
はい。新しく、キャプテン、副キャプテン、寮長の人選も、今、内々定という形で進んでいて、学生の新年度の目標決めもこれから1ヶ月かけて話し合って、そして新1年生も2月から合宿に入ってきて、また新しい1年がスタートしていきます。
──早くも次に向かって動き出してるんですよね。そして、箱根駅伝では10時間43分42秒の大会新記録。快勝、まさに完璧な優勝だったんじゃないですか?
終わってみれば大差で勝たさせていただきましたけれども、いろんな不安がある中でのスタートではあったことも事実なんですね。でも、終わってみれば快勝でしたね。
──箱根って長いじゃないですか。中継所も離れていますし。当日の朝にミーティングとかされたりするんですか?
いえ。往路の選手と復路の選手は、1月1日にそれぞれの宿泊施設に移動してきます。私も1区・大手町の近くのホテルに行きますので、(当日は選手と)もう実際には顔は合わせないんですよね。あとは電話で体調確認するぐらいで、付き添いの人間にお願いをしています。学生も1年間この日のために頑張ってきていますので、最後の最後で体調を崩すということは、よほどのことがない限りは大丈夫なんですけれどもね。
──そして1区は、中央大学の吉居選手が素晴らしい走りをして独走しました。去年はスローペースで始まったんですけれど、この展開は予想されていましたか?
全く予想していなかったです。吉居選手は非常に力のある速いランナーではあるんですけども、まさかあんな走り出しをするとは…。我々は心と体の準備ができていなかったですね。
──ただ、志貴(勇斗)選手が2位集団でタスキを渡せたというのは大きかったんじゃないですか?
2位集団も決してスローペースに入ることなく皆が引っ張りあってくれていましたので、ハイペースの中、志貴も冷静に対応しました。大きく崩れることなく近藤(幸太郎)にタスキを渡すことができたので、ほっとしました。
──そのエースの近藤選手は区間7位というタイムだったんですけれども、ヴィンセント選手(東京国際大学)には7秒しか負けていないし、素晴らしい走りをした田澤選手(駒沢大学)からも1分以内で(タスキを)渡せた。これも素晴らしい走りだったんじゃないですか?
素晴らしかったですね。最後の戸塚に向かう坂で、私が「スマイル、スマイル! 行けるよ!」って声をかけたんですけども、終わったあと、近藤選手から「あんな坂でスマイルで走れるはずがないじゃないですか!」って言われました(笑)。
──(笑)。そして3区の1年生の太田(蒼生)選手。素晴らしい、区間2位という走りでした。これは、近藤選手が東京国際よりも先にタスキを渡したというのが大きかった?
ここ、ポイントなんですよね。東京国際の丹所選手は、1人でも走れますし、力もあるランナーなので。太田君がタスキをもらった時には(東京国際より)20数秒前でもらったんですけど、これが逆に、ヴィンセント選手が近藤選手を抜き去って20秒後ろでもらっていたら、(太田選手は)こんな走りはできていなかったと思うんですよね。だから良いタイミングでタスキ渡しができたことが、我々の勝利への道筋がついた要因かなと思いますね。
──最終的にはその丹所選手を引き離して、キャプテンの飯田(貴之)選手に渡すことができましたからね。
1年生とは思えない、冷静な走りをしてくれましたよね。
──そのキャプテン・飯田選手も素晴らしい走りで引き離したんですけれども、飯田選手はどんなキャプテンなんですか?
飯田選手は、いじられキャラでみんなから愛されるキャプテンなんです。
──いじられキャラなんですか!?
11月の全日本大学駅伝で負けて落ち込んでいる時に、下級生から「先輩のせいで負けましたけど、また次、頑張りましょうよ!」って言われるような感じの(笑)。そんな、やんわりとみんなから言葉をかけられる、いじられながらも恨みっこなしで次に頑張れるのが、青山学院のスタイルなんですよね。
──そして、「箱根の山登り」ですけれども、5区。これもまた1年生の若林(宏樹)選手が素晴らしい走りだったんじゃないですか?
8割いける、2割途中リタイヤもあるかもしれない、という不安な状態でスタートしたんですけれども、「8割いける」の方に針が振れたのでホッとしてますし、1年生ながら山をちゃんと走りきってくれましたよね。
──1年生でこの素晴らしい走りをしてくれると、「あと3回は大丈夫だ」みたいに思いませんか?
それは大いにあります。
──もしかしたら4年連続5区を走るのかな、なんて。
箱根駅伝は勝負はやっぱり山なので、1年生からこういった快走をしてくれると、指揮官としては向こう3年間、安泰ですよね。
──そして復路ですけれども、6区の髙橋(勇輝)選手。途中経過のタイムが、区間で13位ぐらいですか。ちょっと心配になりましたよね。
そうですね。12月の最後の合宿の時に脚を痛めまして、1週間ほど練習を休んでいたので、それが原因かなと思いました。下りで、恐る恐る下っていたような印象を受けたんですね。ただ、ラスト3キロの、運営管理車がついたところからは頑張ってくれたので、結果として10秒しか(後続にタイムを)縮められなかったので、それは良かったなと思います。
──そして7区は、1年生の時に2区を走った岸本(大紀)選手が、結局は最初の区間賞となる走りでしたよね。
彼も、実は不安な中でスタートに立ってるんですよね。全日本大学駅伝が終わった後、3週間、故障でノーランニング。12月から練習を再開した中でのスタートだったんですけれども、駅伝男、エースの風格ですよね。走りながら強くなっていったなという印象を、運営管理車から見て感じましたね。
──そして、8区の佐藤(一世)選手も、去年は往路を走られた選手ですけれども、彼も故障明けで今回は復路ということですか?
はい。10日前にも38度の発熱があったんですよ。それを経てのスタートラインだったので、実は、10区間中、一番不安な区間ではありました。
──でも、区間2位の素晴らしい走りでしたよね。そして、9区(中村唯翔選手)・10区(中倉啓敦選手)は、監督が「2区とも区間新が出るかもしれない」なんて仰ってましたけれども。
これは自信を持って送り出した2人ですよね。夏合宿の練習消化率、ハーフマラソンの持ちタイム、どれを取っても他大学に引けを取らないし、過去の先輩たちと比べても力強い。区間新は、コース条件、天候次第では出るなと思っていましたね。
──駒澤大学の大八木監督は、「9区までで1分以内に行けば…」と仰っていましたけれども、蓋を開けてみれば、復路も完勝でしたよね。
本当に完璧なレース展開でしたね。
──今回の登録メンバー16人全員が、1万メートルのタイムが28分台。登録を外れた選手も含めると、24人が28分台。本当に青学さんの選手層の厚さを見せつけた大会だったと思うんですけれども。
青学メソッド、原メソッドがきちっと18年間の中で確立されたのかなと思います。速くなるための仕掛けが、青山学院にはあります。そういうところをみんな頑張ってくれましたね。
──以前、著書の中で監督は「チームには4つのステージがある」と書かれていて、今回は「自律」“自らを律する”と仰っていましたけれども、これは5番目のステージに到達したんじゃないかなと思ったんですが。
そうですね。“言うが易し”なんですけど、それをやってくれた学生が僕は立派だと思いますね。
「1+1」の答えは2、1つしかありません。それから、「○×○+□=5」、いろんなパターンがあります。さらに、「x+y=z」、答えのないことにチャレンジしていくのが青山学院のスタイルなので、これからもチャレンジし続けていきたいなと思ってます。
──瀬古さんが大会が終わった後に、「原監督がもうちょっとテレビに出なければ強くなる」と仰っていたじゃないですか(笑)。僕は逆だと思ったんですよ。
仰る通りだと思います。どんどん露出していかないといけませんよね!
──監督の本に、「誰がやっても強い組織づくりをしなさい」と書いてあって、まさに自分たちで考えて行動できる集団を作っているわけだから、原監督がメディアに出なくなった方が、ひょっとしたら弱いチームなのかもしれないと思うんですよね。
そうなんですよ。メディアを通して学生に指導しているようなものですからね(笑)。昨今はSNSの時代だから、私が発信したことが学生にダイレクトでTwitter等々から情報が入りますからね。逆に下手なことは言えないですよね。
──そしてこの番組にもゲストで来ていただいた、中野ジェームズ修一さんが、「トレーニング方法を大きく変えた」と仰っていたんですけれども。
「青トレ」と称して、我々の補強トレーニングというのは、腕立て・腹筋・背筋・鉄棒・懸垂・逆上がり…そういった昭和の古典的なトレーニングではなくて、インナーユニットを鍛えていくというトレーニング、いわゆるコアトレーニングというものを主流にやっているんですけども、そこにプラスアルファ、アウターですよね。太い筋肉もバーベルを使って鍛えていくという段階に、今入ってるんです。そこでパワーが生まれているという状況です。
──厚底シューズに対応して、怪我の箇所も変わってくるので、今回トレーニング方法を変えたと仰っていました。
今までは下肢の部分、シンスプリント系の故障者が多かったんですけど、昨今は、うちのチームだけではなくて他大学もそうなんですけれども、お尻周りですね。臀部、仙骨というところの疲労骨折が非常に多いんですよね。ですから、その辺りの故障を防止するためにアウターの筋肉を鍛えているということです。
──今大会、本当にタイムが速い選手が多かったですけれども、やっぱりコンディション良く走らないと、箱根のこの長い距離というのは中々繋いで行けないですよね。
「無事之名馬」とはよく言われたもので、やはり故障せず継続的に練習していくことが、箱根駅伝を走るためにベース部分で必要なことで、考え方ですよね。やっぱり練習を継続できることが、“速さ”から“強さ”へ変わるものだと思います。
──ぶっちゃけ、どのあたりで勝利を確信されていたんですか?(笑)
まあ、3区が終わったあたりで…(笑)。3区で先頭に立った時には“これは普通に走っていけば大差でゴールできるな”という気持ちにはなってきましたよね。
──さて、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。原監督の心の支えになっている曲を教えてください。
リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの時にもNHKの放送のテーマソングになった、安室奈美恵さんの「Hero」をお願いしたいです。
なんか、“ざわつく”んですよね。「振り向かなくてもいい」とか、「あきらめないで」とか「どんな日もそばにいる」とか、「常に笑顔で支えてくれた」とか、何か心が踊らされますよね。
今週のゲスト、原晋監督のサイン入り色紙を1名様にプレゼントします!
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