今週の「Athlete News」は、先週に引き続き、野球評論家の高橋由伸さんをゲストにお迎えしました。
高橋由伸(たかはし・よしのぶ)さんは、1975年生まれ、千葉県出身。
桐蔭学園高校、慶應大学を経て、1998年、ドラフト1位で読売巨人軍に入団。
チームの中心選手として活躍され、現役生活18年間で、ベストナイン2度、ゴールデングラブ賞を7度獲得。
2015年の現役引退後、3シーズンに渡って監督も務め、現在は、野球評論家として活動されています。
──今日は12月25日、クリスマスということですけれども、子供の頃や現役時代に思い出に残ってるクリスマスはありますか?
僕らは冬がシーズンオフなので、一番好きなシーズンではあったんですけども…。
──ちょっと待ってください(笑)。“一番好きなシーズン”?
やっぱりこの12月の後半というのが、ちょっと解放されて少しゆったりして、一番ホッとしてるというか、気が抜けている時期なので。これが年が明けるともうみんな自主トレに行く時期になるので、最後の休みを…現実逃避をしている時期かなと思いますね(笑)。
──さあ、ヤクルトの日本一で幕を閉じた今年のプロ野球ですけれども、日本シリーズは本当に毎戦毎戦、激戦でしたよね。
そうですね。今年は見ていても、本当にどちらが勝つのか最後の最後までわからない、良い試合でしたよね。
──結局はヤクルトの対戦成績で言うと4勝2敗だったんですが、この6戦全てが2点差以内で接戦。これは史上初のことなんだそうですが…。
正直、日本シリーズはオリックスが勝つと予想はしていたんですけれども。なぜかと言うと、山本(由伸)投手で2勝できると計算したからです。結局、彼がどちらも勝てなかったんですよね。1戦目は(チームは)勝ったんですけども、彼に勝ちが付かず。6戦目もいいピッチングはしたけれども、勝ちが付かなかったというところで、そこが僕の予想とはちょっと外れてしまったんですけれども、でも素晴らしいピッチャーですよね。
──ヤクルトもやっぱり山本投手の対策というか、とりあえず球数を投げさせよう、みたいな。
そうですね。ヤクルトというのは、昔からそういう、チームで組織だって対策をするのが上手いチームではあるんですよね。例えば「このピッチャーだったら反対方向に打とう」とか、そういうことを徹底してやってくるチームだなというイメージはあるので。
──それはやっぱり、ID野球の「野村イズム」ということですか?
そこは野村(克也)さんの野球が生きている、継承されているんじゃないかなと思いますね。
──このヤクルト日本一は、やっぱり高津監督の采配が大きいんでしょうか。
大きいと思います。当然、それに応えた選手たちが一番すごいなとは思うんですけど、でもそのシーズンを戦っていく中で、例えば奥川(恭伸)投手などは本当に間隔をきっちり開けて、育てながら勝たせながら1年をやり通したいうところもありましたし、その他で足りない部分は、先発ピッチャーだった投手たちも中継ぎに回してみたり、そのシーズンの中で臨機応変に配置転換をして、それが本当にうまくはまってましたし、本当に若い選手が伸びてきているチームだなと感じますよね。
これはオリックスも同じようなことが言えるかなと思います。
──そして、共に汗を流した亀井善行さんが引退されました。思い出に残っていることはありますか?
彼とは、彼が入ってきた時からずっと一緒に自主トレをしていたり、本当に若い頃から一緒に戦ってきた最後の選手だったので、ちょっと寂しいなと思いますけど、でも、時間の経過を考えれば当然のことかなという感じです。
亀井は僕と同じで怪我も多くて、でも器用なので、スタメンで行っても代打で行っても“困った時に何かしてくれる選手”というイメージですし、いろんな意味で、プロ野球選手として僕と同じような歩みを歩んだのかなと。
──ご自身と重なる部分も多くて、より思うところもある?
ありますね。亀井も僕と同じで、「まだできるだろう」という周りの声がある中、それでも本人が「ここまでだ」「自分のパフォーマンスじゃない」というところで、自分で幕が引けたというのは幸せなことなんじゃないかなと思いますよね。
──それはよく聞くことですよね。やっぱり契約してもらわないといけない立場ですし、自分で引退すると決められる選手というのは…。
そうですね。最後まで、「もういいです」と言われるまでやるのも、それはそれで美学だと思うんですけれども、でもこうして自分で辞められる、決められるというのも、選手としてとても幸せなことだと思うので。
亀井は辞める時に電話をくれたので、そんな話もしました。
──そして、今シーズンは新人で活躍する選手が多かったと思うんですが、由伸さんが注目した、気になった新人はいますか?
今年は本当に新人の当たり年で、特にセ・リーグでは…阪神で3人ですよね。ルーキーが大活躍。佐藤(輝明)選手、伊藤(将司)投手、ショートの中野(拓夢)選手、この3人が活躍して、彼らの勢いで阪神も良かったんですけど、最後、佐藤選手が打たなくなって、同じようにチームも沈んでいってしまったという感じなんですけど。
──3人戦力が出てきたら、相当大きいですよね。
大きいですよ。ただ、そこでチームが変わった、最後彼らが打たなくて沈んでしまったということは、やっぱり他の選手たちの頑張りがまだまだ足りないというか、もっと優勝するために必要な部分が、逆に明らかになったかなと思いますよね。
──ヤクルトの若き主砲・村上宗隆選手は、由伸さんに憧れていたという。
どうなんでしょう。目の前で話したのでそう言ったのかもしれないですけど(笑)。でも、時代的には僕も主力としてやっていた時代なので、同じ左バッターとして見ていてくれたのかもしれないですよね。
──村上選手はちょっと荒削りな部分がありましたけれども、今2割8分近くですか、率もかなり残すようになりましたね。
そうなんですよね。村上選手はフォアボールもいいし出塁率が非常に高いので、数字以上の貢献度はあったかなと思いますし、何よりも、チームの中で若い方の選手なんでしょうけども、本当に先頭になって声を出してチームを引っ張っているというところが、見ていてもリーダーシップがあるというか、そういうところがプレーにも出て良い方向に行ってるんじゃないかなと思います。
──そしてパ・リーグの新人なんですけれども、佐々木郎希投手がいよいよ活躍し始めましたよね。
そうなんですよね。佐々木投手も、井口監督、ロッテが、本当に“無理せず”というか、上手く間を開けながら使っていって、最後は少し間隔を詰めながら使って。
何がすごいって、奥川投手もそうですし佐々木投手も今年2年目で、その2人がクライマックスの初戦に先発するっていうんですから。そういう育ててきた選手を最後の勝負どころで使うというのは、素晴らしいチームだなと思いますよね。
オリックスの宮城(大弥)投手が投げたり、そういった2年目・3年目の若い選手が今年は一気に出てきたシーズンでもあったかなと思いますね。
──佐々木郎希投手と奥川投手が、来シーズンぐらいからちょっと間隔を詰めてフル活躍してくるのかなと思うと…。
これはチームの方針であったり、シーズンの中の事情というか、いろんなものがあるので、僕らもどうなるかは言えないですけど、でもやっぱり、今年より来年はさらにレベルの上がった使われ方、戦い方をするんだと思います。
──やっぱりあのスピードって魅力ですよね。
魅力ですね。佐々木投手などは特に。奥川投手は、スピードもありますけど、どちらかと言うとまとまった、完成された投手のイメージですが、佐々木投手は、まだまだここから…変化球であったりストレートもまだまだ伸びしろがあるように見えますので、それこそ近い将来、メジャーとかに行ってしまうのかなという感じもしますよね。
──メジャーに行って活躍してほしい、それを見てみたい気もする一方、国内で見られなくなるっていうのはちょっと寂しいなと。
そうですね。でも今は、大谷選手もそうですけど、世界で活躍することが子供たちや野球界の発展に繋がるのかなと思っているので、そこは寂しい部分もあるけれども、世界で活躍するというのは、野球以外でもどのスポーツにも必要なことかなと思います。
──また今、こうやってイチローさんをはじめいろんな人がメジャーで活躍して「日本人でもできるんだ」ってことを小さい野球少年たちは見ているので、もっと気軽に、メジャーは「目指すところ」になっていますよね。
そうなんですよね。大谷選手のような選手がいたり、イチローさんのような選手もいたり。
他のスポーツでも、テニスの錦織選手と会う機会があったんですけど、彼も世界のプレーヤーの中ではそんなに大きい選手じゃないと思うんですけど、でもそういった選手でもやり方、考え方で通用する部分があるというのは証明されているので。やっぱりそうやって海外で活躍する選手がいると、子供たちは目指すところ、選択肢が広がるかなと思いますよね。
──さて、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。今週も高橋さんの心の支えになってる曲を教えてください。
レイチェル・プラッテンの「 ファイト・ソング 」です。
これは、ちょうど僕が監督になりはじめたぐらいに聴いていたかなと思うんですけど、なかなか上手くいかなかったり、その中でも“まだ自分にはできるはずだ、周りが思っているよりも自分にはまだ力が残っていて、まだ戦えるんだ、これからさらに乗り越えていけるんだ”っていうような内容の歌詞だったので。僕は歌詞を見て好きになることが多いので、それで“いいなぁ”と思った曲ですね。
──洋楽だとなかなか歌詞って気にしないで聴くことが多いじゃないですか。どの時点で気になって調べるんですか?
たまたま妻や子供たちが洋楽の方が好きみたいで、それを聴いているうちに「これはどういう曲なの?」って教えてもらって、そういうところからですかね。
──そして、今シーズンの野球界の驚きのニュースと言ったら、「BB」ですよね!
BIG BOSSですよね(笑)。
──新庄さんが監督になられた。これはどう思われました?
今までの常識とはまた違った立ち振る舞いとかスタイル、あとはプロデュースの仕方があると思うんですけども、キャンプでの練習などいろんなものを見ていると、言い方、言い回しは多少違うかもしれないですけど、内容的なものは、みんながそうしたい、そうしようと思っていることをやってらっしゃるので、外への出し方と中でやっていることの使い分けを上手くされているなと思います。自分のやりたいことをやりつつも、チームはしっかり運営していくという。何か楽しみだなぁと思って見ていますね。
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