今週の「Athlete News」は、競泳元日本代表の伊藤華英さんをゲストにお迎えしました。
伊藤華英(いとう・はなえ)さんは、1985年生まれ、埼玉県出身。
2008年北京オリンピックでは、100m背泳ぎで8位入賞。
2012年ロンドンオリンピックには、自由形の代表として出場され、その年、現役を引退。
2019年にご結婚され、現在は1児の母であると共に、「一般社団法人スポーツを止めるな」で理事を務め、女性アスリートが抱える身体とスポーツの課題に対し、教育活動・情報発信をされています。
──2016年以来のご出演ということで、お久しぶりです。その間は5年ほどありますけれども、ご結婚をされてご出産されたということで、おめでとうございます! だいぶ環境というか、生活が変わったんじゃないですか?
やっぱり、子供が1人いるだけで、独身の時と全然変わりますよね。
──お子様はもう2歳。やっぱりお子様にも水泳をやってほしい、選手になってほしい、という思いはあるんですか?
もうすでに生まれて6ヶ月から(水泳を)やっていまして、ブイという浮き輪は腕につけてますけど、1人で泳いでますよ(笑)。
──まさにサラブレッドじゃないですか!
わからないですけど(笑)、とにかく動き回っているので、体力を使ってほしいと思って(笑)。自分が水泳をやっていたというのもありますけど、全体的に、1番最初にできるスポーツってやっぱり水泳かなというフラットな気持ちで始めさせました。
──そして伊藤さんは、「一般社団法人スポーツを止めるな」の理事を務めながら、「1252プロジェクト」のリーダーでもいらっしゃいます。こちらのプロジェクトはどういうプロジェクトなんですか?
私自身の経験が元になってるんですけど、女性の場合、“月経のコンディション”というのがあります。コンディションというと、アスリートの場合、休養・練習・栄養というものが必要ですが、女性は、それにプラスして「月経コンディション」というものが必要になってくるんです。やっぱり(今のスポーツ界では)そこが抜けてるなというか、(月経を)コントロールできるということを知らなかったことで、私もすごく苦労したので。それで、10代の若い世代に向けて、正しい情報だったり知識というものを提供していきたいなと思って、「月経×スポーツ」というところで活動させていただいていています。
「1252」の意味は、1年間は52週間ありまして、そのうちの約12週間は月経期間なんです。その前も、PMS(月経前症候群)という月経前の不調が出るものもあるので、そういうところ含めると、女性は1か月の間でもけっこう大変なんです。そこに、(試合のために体調の)ピークを合わせたり、パフォーマンスを向上していくということがあるとより大変になってくるので、もちろん私たちが提供するものもあるんですけども、やっぱり1人1人が自立して、自分自身で考えられる若手のアスリートを育てていきたいなと思って、(プロジェクトを)始めました。
──ただ大変なだけではなくて、やっぱり月経中はパフォーマンスが落ちたりすることもあるんですか?
そうですね。例えば、「月経痛」といって、お腹が痛い、腰が痛い、頭が痛いというのもありますし、むくみとか、あと、めまいとかの貧血の症状も出てきたりしますので、一概に「生理だから」「病気じゃないから」という言葉ではなかなか片付けられないんです。日本は男性指導者がとても多いですから、そういう男性指導者も含めて、理論的に学んでいく。それが恥ずかしいことだったり言えないことではなくて、早く、“当たり前のこと”として、“コンディションの一部”として、そういう会話が指導者とできるようになったらいいなと思っています。まだまだ遠いですけど。
──やっぱり、個人差が大きい問題なんでしょうか。
そうなんですよ。だから、例えば、チーム競技などで、エースの選手が全然月経痛や不調がない、順調にきている…とかになってくると、この選手が当たり前になってしまって、“そういうものだ”と思われがちで、本当に1人1人違うんだ、というところがあまり(周囲に)広まりにくい1つの要素でもあったりするので、やっぱりコミュニケーションというものが今後すごく必要になってくるかなと思いますよね。
──女性同士でも、そういう話というのはやっぱりしづらい環境だったんですか?
「今日生理だね」とか「お腹痛いね」とかは話すんですけど、「じゃあそれを一体どういう風に対処していこうか」という話はなかったです。
──アスリートは、どうしたって試合、ピーキングとかも含めて、ありますものね。
競泳だったら体重管理はあまりないんですけど、例えば階級別の競技の選手とか、あと、新体操や体操やフィギュアスケートなどの審美系の競技は(体重管理が)より難しくなってきます。例えば体操選手だったら、体重を増やしていけないというところで、300gのご飯を食べるのにも大変なわけですよ。そういう選手たちにどのように月経の対策をしていくかというところにも、1人1人向き合っていく。そういうカテゴリーが増えていくのかなという感じがしますね。指導者の方も、女性コーチがたくさん入ったり、というのもあるかもしれませんし。
──こうやって伊藤さんが声を上げてくれたことによって、多くの女性アスリートが助けられるんじゃないですか?
そうですね。アスリートもそうですし、多くの女性の方が、例えば「生理痛」で片付けてしまって、将来、子宮内膜症などの病気を引き起こす可能性もあるんですよ。子宮内膜症は不妊の原因になったりするというエビデンスがあるので、そういうところで、やはりちゃんと自分の体を理解して向き合っていくというのは重要になっていくので。特に10代の子なんて元気なので、健康とかにあまり興味がない(笑)。ただ、初めて月経が来た時に、“そういうことに向き合う時期が来たんだな”ということを、若い女性たちに気付いてもらえたらなと思います。
──あと、伊藤さんのお話を伺って、男性の方も色々知って理解を深めていかないといけないんだなと強く思いましたね。
そうですよね。女性の社会進出とか、ジェンダー・イクオリティとか言われてますけど、やっぱり(男女では)体の差異があるというところを理解していくことが出発点になるのかなと思って、この活動をやっています。
──男性側は勝手に、そういうことってやっぱりデリケートな問題だから、聞いちゃいけない、聞かないふりをしないといけない…みたいな思いもあったりしたんですけども。
あると思いますよ。そこが大変なので。ただそれが当たり前になって、男性も女性も、“(月経について話をすることが)恥ずかしいことじゃないんだ”という、お互い同じ位置での情報量があれば、例えばセクハラとかにもなりにくいと思うんですよ。
──僕なんかはもう古い価値観でこれから先も生きていくから、そこをなんとか書き換えようと頑張りますけれども、若い子たちは今から新しい価値観を作り出してくというか、その価値観で生きていくわけじゃないですか。だから、そういったことに対する理解だったり、そうやって話し合える、対処し合えるような社会を、若い子たちが作っていってほしいですよね。
やはり、女性はホルモンの関係で月に1週間ぐらいしか元気じゃなかったりする。こういうところを理解していかないと、「社会進出やってます」だけではダメだと思います。知られていない部分をして知ってもらえればなと。「女性はこうだ!」ではなくて、「こうなんですよ〜」ぐらいの感じで(笑)、提供するような形でお知らせしていきたいと思っています。
──さて、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。伊藤華英さんの心の支えになってる曲を教えてください。
ジェイソン・ムラーズの「Unlonely」です。この“Unlonely”という言葉はジェイソン・ムラーズさんの造語らしいんですけど。
──素敵な言葉ですね。
そうなんです。「1人じゃないよ」ということを、悩んでいる女性のみなさんにお伝えしたくて選びました。
──この曲はどのように知ったんですか?
私はサーフィンが好きで、けっこうジェイソン・ムラーズさんの曲とか大好きなので、ちょっと聴いてみたらキャッチーな歌だったので、好きになりました。
今週のゲスト、伊藤華英さんのサイン入り色紙を1名様にプレゼントします!
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