今週の「Athlete News」は、東京オリンピック 卓球・混合ダブルスで金、男子団体で銅メダルを獲得された、水谷隼さんをゲストにお迎えしました。
水谷隼(みずたに・じゅん)さんは、1989年生まれ、静岡県磐田市のご出身。
5歳から卓球をはじめ、青森山田高校2年の時には、当時史上最年少で全日本選手権を制覇。
2008年、北京オリンピックから東京大会まで4大会連続で出場。
リオ大会では、日本卓球界初のシングルス銅メダル、男子では初となる団体銀メダルに輝かれました。
そして今年の東京オリンピックでは、混合ダブルスで、伊藤美誠(いとう・みま)選手とのペアを組み、日本勢初となる金メダル、男子団体では銅メダルを獲得されました。
──リオ・オリンピックので後もお越しいただいたということで、5年ぶりですか。お久しぶりです。そして金メダルと銅メダル獲得、おめでとうございます!
ありがとうございます。
──日本卓球界の新たな歴史を開いた、すごく価値のある金メダルでしたよね。
前回のリオ・オリンピックで銀メダルと銅メダルを獲得していたので、オリンピックのメダルのすごさも感じていたんですけど、今回は金メダルということで、よりオリンピックのメダルの価値というか、重さを感じてます。
──前回来てくださった時には、リオ・オリンピックで(選手生活を)終わりにしようかなと思っていたけれども、次は東京で(オリンピックが)開催されるということなので頑張る、そして、お嬢様が東京オリンピックの時には6歳になるからわかるんじゃないか、とおっしゃっていたんですけれども、お嬢様の反応はどうですか?
すごく感動していたみたいですね。それこそ最近は、自分の父がオリンピックの金メダリストということで、同級生とかに隠すんですよね。「これは言っちゃいけない」みたいな感じで。それで最近、「友達にパパのことがバレちゃったんだよね」って、なんか残念がってました(笑)。
──そして東京オリンピック後に引退宣言をされていましたが、“引退された”ということでよろしいですか?
はい、そうですね。オリンピックが終わってからけっこう時間が経ちますけど、1度も練習していないですし、今月末にTリーグと呼ばれる卓球のプロリーグがあるんですけども、そこで凱旋試合というか、最後に日本のファンのみなさんに試合をお見せして、それで終わろうかな、というのはあります。
──東京オリンピックで大逆転劇となった、世界ランク3位のドイツ代表との準々決勝。あの試合はリアルタイムで見ていたんですけれども、正直、“ひょっとしたらこれはダメかな”って、僕らはちょっと心が折れかけてました。水谷さんご自身は、折れてはいなかったですか?
折れてはないんですけどでも、でも勝てるとも思ってないですね。“難しいかな”というか、“もう時間の問題だな”っていう。卓球を長年やってますけど、現実的に考えて、2対9から自分が逆転した試合ってないんですよ。今までずっとやってきて、ないし、見たこともないし、それがオリンピックの最終ゲームってなったら、これはもう時間の問題だなっていう。
──そこから、着実に点差をつめていきましたよね。その時の心境の変化というのはどうだったんですか?
10対10に追いついてからは“もしかしたら(勝てるかも)”という感じでした。2対9から少しずつ差が縮まっていくんですけど、それまでの間は、常に“厳しいな、厳しいな”という中で、“目の前の1本を頑張ろう”という感じでやっていました。
──10対10になるまで、“これはいけるかも”という手応えはなかったんですか?
ないですね。もう1点取られたら試合が終わっちゃうので。卓球の1点って、簡単に取られちゃうので。
──そうですよね。だからこそ、この逆転劇はちょっと信じられないというか。
卓球を知っている人なら、もう奇跡でも語れないぐらい。奇跡の上の言葉が欲しいぐらいなんですよ。
──ただ、ドイツ代表の女子選手、ソルヤ選手は、リオ・オリンピックの(女子団体戦の)準決勝で伊藤美誠選手と対戦して、伊藤選手が9対3でリードしてるところから、逆転負けされている相手なんですよね。これもまた、9対3という、ものすごく大きなリードだったわけですよね。
本当になかなか逆転できる点差じゃないですし、あの試合は、伊藤選手がもしソルヤ選手に勝っていれば、(日本チームは)決勝に進出してたんじゃないかなと思ってますね。
──その因縁の相手に今度は大逆転した。あの試合中、伊藤美誠選手と何か言い合っていたことはあったんですか?
僕らはかなりテンパってましたね。試合前とかは“僕たちの方が強い”っていう自信があったんですけど、実際に試合が始まって、1ゲーム目はすごく簡単に取れたんですよ。“やっぱり僕たちが研究してきた成果も出たし、実力も上なんだな”と思っていたんですけど、2ゲーム目から向こうのペースになってきて、終始押されてたんです。やっぱり、押されて試合が始まるとなかなか自分たちの良いコンビネーションが発揮できなくて、ずっとビクビクしながらやってました。
──でもそこで勝ったことで、九死に一生ではないですけれども、ちょっと勢いづいた部分もあったんでしょうか。
こういう大逆転を起こした大会って、優勝できる可能性が飛躍的に上がるんですよ。なので、もしかしたらこれは奇跡への一歩なのかなと思いましたね。
──あの時に始まっていたわけですね。そして決勝の中国戦。勝負のポイントになったのは第5ゲームになるんでしょうか。スコアが9対8の場面でタイムアウト。伊藤美誠選手は、中国相手でもやっぱり弱気にはなっていなかったんですか?
伊藤選手は、3ゲーム目ぐらいからだんだん伊藤選手らしいプレーも増えてきて、そんな中で5ゲーム目に追いついて、最後5ゲーム目でタイムアウトを取ったんですけど、その時に伊藤選手が「中国選手がビビってる! ビビってる!」みたいな感じで、すごい大きな声で僕に語りかけてきて。僕もちょっとビビってるから、「そうだよね…」みたいな感じで(笑)。だから、伊藤選手だけがすごく強気でしたね。
──でもあの中国ペア…許昕と劉詩雯という、共に世界ランク1位を経験しているすごい選手なわけじゃないですか。あのペアに勝ったというのは、ちょっと感動じゃないですか?
世界中の誰が見ても「あのペアが世界一強い」ということを認めざるを得ないペアでしたし、オリンピックの後に行われた中国の選手権でも、彼女たちが優勝したんですよ。でも、僕たちが勝ったのは実力で倒したと思いますし、それまで0勝4敗だったんですけど、オリンピックの決勝という大舞台で倒すことができたというのは、本当に感慨深いですね。
──それまでは接戦でしたけれども、最終ゲームはだいぶリードしましたよね。“これはもう金メダル確定じゃん!”と僕は思ってたんですけれども、やっぱり水谷さんもその時点で“これ、もらったな”って思ってました?
いやいや、全然思ってないですよ。それこそ、自分たちがドイツ戦で2対9から逆転したということがあったので…。逆に中国戦では、最終ゲームは9対2でリードしていたんですよ。それで9対5まで追いつかれて、“うわあ、これ準々決勝の逆パターンだ”と思って、逆にやられるんじゃないかと思って。でも、そこで伊藤選手にちょっとラッキーなネットインがあって、それで10対5になって。10対5になった瞬間は、8割ぐらい、“これは金メダルかな”っていうのは意識しました。
──改めて、伊藤美誠選手はどんな選手ですか?
20歳にしてはもう信じられないぐらい、強心臓を持ってますね。もう卓球に限らず、プライベートでも強いですよ(笑)。僕、敵わないです(笑)。
──伊藤選手は、それこそ水谷さんのご実家の歩いてすぐそばに引っ越されてきたわけですよね。
はい。すぐそばに住んでますね。
──小さい頃から知ってる選手とペアを組んで、そしてオリンピックで金メダル。これはどんな映画なんだっていうぐらい(笑)、できすぎた話ですよね。
もうビックリしてますね。彼女が5歳ぐらいの時に地元の磐田市に来たんですけど、そこから知り合いで、まだ卓球も全然強くない時から仲良くしていて、まさか一緒にリオのオリンピックでメダルを獲れると思ってなかったですし、そこから東京で今度は一緒にダブルスを組んで金メダルですから。今じゃもう、(伊藤選手は)中国に次ぐ1番手ですから、パリのオリンピックはすごく期待できますね。
──さて、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。水谷隼さんの心の支えになってる曲を教えてください。
あいみょんの「裸の心」です。もともと、バラードがけっこう好きなんですよね。試合前とかも、落ち着いた曲を聴いて集中して試合に臨むことが多くて。
──東京オリンピックの舞台でも、試合前に聴いていた曲なんですか?
よく聴いてましたね。
──伊藤選手と「この曲がいいよ」みたいに、共有したりとかはしないんですか?
音楽は、他の選手と共有することが全然ないんですよ。伊藤選手とは年齢差が12歳あるので、(好きな曲を)聞いて、“え、何、その曲?”ってなるのは見えてるんですよね(笑)。 やっぱり、音楽って一番ジェネレーションギャップを感じるところだと思うんですよね。
──でも、あいみょんさんのこの曲だったら、伊藤選手も聴いてそうだなって思いますが…。
確かにあいみょんさんは今すごい人気ですし、逆に僕は若い世代と絡むことが多いので、音楽は若い人たちが聴いている曲もすごく勉強してます。
──“勉強している”んですね(笑)。
勉強してます(笑)。YOASOBIとかヒゲダンとかあいみょんとか。そういう、今の若い子たちにすごく人気の歌手の音楽はいっぱい聴きますし、聴いているとすごく好きになりますね。
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