今週の「Athlete News」は、先週に引き続き、東京オリンピック・アーチェリー男子団体の銅メダリスト、武藤弘樹選手をゲストにお迎えしました。
武藤弘樹(むとう・ひろき)選手は、1997年生まれ、愛知県出身。
東海中学からアーチェリーを始め、東海高校では、3年の時に、世界ユース選手権ジュニア男子団体で銅メダルを獲得。
慶応大学に進学後は、2018年アジア大会、19年世界選手権に出場。
5年連続でナショナルチーム入りを果たされました。
大学卒業後の去年、トヨタ自動車に入社。
そして、東京オリンピックのアーチェリー男子団体では、最後の1射をど真ん中に決め、見事銅メダルを獲得、この種目で日本に初めてのメダルをもたらしました。
今回はリモートでお話を伺っていきました。
──武藤選手は愛知県内でも有数の進学校・東海中学、東海高校の出身。練習は最長1日7時間半。東海中高アーチェリー部ギネス記録、1日で721本。
721本射つのに、どれくらい時間がかかるものなんですか?
たしか、1日かかったと思いますね。朝8時前ぐらいからスタートして、お昼ご飯を挟んで、夕方5時とかまでかかったような記憶があります。
──やっぱり数をこなすのは、良いことなんですか?
すごく大事だと思っています。上手い選手って、“考えながら射っている”というよりは、“自然に射っている”んですよ。僕も、今もそうですけど、やっぱり考えながら射っちゃうところがたくさんあって。それも、動きを自動化する…何も考えなくてもそれができるようになるまで、体が覚えるまでやる、という練習をしています。
──部活の時に1日に721本射ったというお話がありましたけれども、それ以上に射つことも、今でもありますよね?
あります。社会人になったり大学生の時には、「毎日1000本射ちを1ヶ月」とかあって、これは本当にキツかったですね(笑)。
1000本射っていると、800本目ぐらいから“キツいな〜”ってなってきて、900本目ぐらいになると、なんか勝手に体が動き始めるんですよ。余分な動きが削がれるという感じですね。無駄なものがなくなって、最後に洗練されていく…みたいなことがすごく多いです。
──もともと、そういう“繰り返し同じことをやる”ということが得意な、好きなタイプだったんですか?
それもあったと思いますね。もともと集中力が強いというか得意な方でしたけど、でもアーチェリーをやりはじめて、より集中力が高くなったと言いますか、集中力が身についてきましたし、練習の中で、例えば、「この1本が10点に入らなかったら、もうお前らは練習をしちゃダメ」とか。
──そうか。練習の時から、そういう負荷がかかる場面を設定したりとかしているんですね。
やりました。その時は“キツいな〜”とか思うだけでしたけど、今思えば、そういう練習があったから、あの時(東京オリンピック)も10点を射てたのかなと思います。
──他に、集中力を鍛えるためにやっていることなどはあったりしますか?
基本的に競技の練習の中で鍛えることが多いんですけど、アーチェリーって経験がものをいうスポーツに見えがちなんですけど、実際はそうじゃなくて、僕らでも当たり前のように中学生に負けるときもありますし、高校生に負ける時もあるんです。
──武藤選手でも(中高生に)負けることがあるんですか?
あるんですよ(笑)。実際にオリンピックの前にも、(練習で)中学生にも負け、大学生にも負け、“ちょっと恥ずかしいなぁ”みたいな気持ちもあり…。だからこそ、プレッシャーがかかるじゃないですか。“負けちゃいけない”という。それって、試合にすごく似ているなと思うんです。
ある意味、それがアーチェリーの面白いところでもある。“始めてすぐにプロ野球選手に勝てる”みたいな(笑)、イメージ的にはそんな感じなので、そういう意味では、アーチェリーはすごく面白いスポーツだなと思います。
──「弦」を引くのは相当重そうですけれども、あれさえ引けて70m(先の的)に届いたら、素人でも、まぐれでも10点を取る可能性があるということですものね。
もちろん、あります。野球で、中学生の選手がいきなりプロ野球選手の変化球を打てるかと言ったらなかなか打ち返せないですけど、僕らは、1本でも10点を射って、それがもう1回続いたら(勝てる)…というのがあるので、始めて1年とか2年の選手でも、僕らも負ける時もありますし、そういうのが面白い、どんでん返しが起こるスポーツだと思います。
──その(的に当てる)アベレージをどんどん上げていくという作業をずっと続けているわけですね。
そうですね。当たる確率をどれだけ上げられるか、どれだけいつも射てるか、みたいなところはありますね。
──アーチェリーの道具というのは、けっこう高価なものなんですか?
そうですね。ものにもよるんですけれども、僕らのものだと、全部で30〜40万ぐらいですね。
──1つだけなんですか? それとも、何種類も用意しておくものなんですか?
基本的には、大きい試合に行ったりする時は、2セットとか持って行きます。もちろんあれも、壊れるものではあるんですよね。壊れたり調子が悪くなった時用に、予備をもう1台持って行きます。
──矢は、みなさん自前で用意するものなんですか?
はい。もう全部、それぞれの人の射ち方に合わせてあるので。チューニングとか、矢の長さも、全部人によって違うんです。あれはみんな、“自分の長さ”なんですよね。
──相当な本数を射ちますけど、何本持っていくものなんですか?
もちろん、人によって違うんですけど、僕は、1試合に20本ぐらい持って行きますね。
──弓矢にも種類があったりするものなんですか?
はい。いろんなメーカーが出しているので、それぞれ自分の感覚で(選んでいる)。
──どういう差があるんですか?
一番は、振動の感じとか。射った衝撃がバーン!とあるんですけど、その衝撃の感覚が全部違うんです。人によって、フィーリングだったり、大事にしてるものがあるんですよ。安定感が欲しいのか、攻めるタイプの弓がいいのか。最後、狙ってる時に、“引っ張っている状態の弓の柔らかさ”というものがあるんですけど、それがすごく大事なんです。
──武藤選手が使っていらっしゃる弓の特徴は?
僕は、弓自体は、引っ張っている時の安定感が比較的あるタイプで、でも射った瞬間もしっかり攻めていける。そのどちらもバランスよく持っている弓を使っています。
──そういった違いにも注目したら、またいっそう面白く見られるかもしれないですね。
さあ、メダリストになった今だからこそ、伝えたいことはありますか?
いろんな制約とかもあるかとは思いますけど、でも、自分が好きなもの、打ち込めるもの、自分が“やりたい”と思ったことは、本当にひたすらやってほしいなと思います。特に中学生、高校生などの、本当に何でもできる時期には、自分のやりたいことを素直にやってほしいと思います。
──そして、今24歳。3年後にはすぐパリ・オリンピックが控えてますよね。“次はパリだ!”なんていう思いを強くしたんじゃないですか?
そうですね。メダルを獲った時はすごく嬉しかったんですけど、でもそれからだんだん日が経ってきて、“もっといけた気がするな”とか、まだ成長できる部分を感じて、終わって1週間ぐらい経った頃には、もう次のパリのことを考えてました。ある意味それですごくワクワクしていて、閉会式を見ていて“東京オリンピック終わっちゃうな、寂しいな”っていう気持ちもあったんですけど、でもやっぱり最後にパリの映像が流れた時に、“次はこんなところでやるのか”と思って、それもまたワクワクしました。
──ぜひ、また出場して、今度はもっと良い色のメダルを獲ってもらいたいと思います。
さて、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。今週も、武藤弘樹選手の心の支えになってる曲を教えてください。
ONE OK ROCKの、「キミシダイ列車」という曲です。この曲は、中学や高校の通学の行き帰りとかですごく聴いていました。歌詞の中に、“過去の自分が今僕の土台となる”という部分があって、“今までやってきたことが今の自分になるんだよ”、みたいなところがすごく好きで、この曲をよく聴いてました。
この曲を聴いて、自分がたくさん練習してきたことも自信になったし、今日練習を頑張る意味にもなるし、本当にすごく元気をもらったというか、頑張らせてくれた曲だなと思います。
今週のゲスト、武藤弘樹選手のサイン入り色紙を1名様にプレゼントします!
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