今週の「Athlete News」は、今年6月に日本フェンシング協会の会長に就任した、武井壮さんをゲストにお迎えしました。
武井壮(たけい・そう)さんは、1973年、東京都生まれ。
神戸学院大学で陸上を始め、10種競技を志してから、わずか2年半で、1997年の日本選手権優勝。
後に芸能活動を始め、芸能界最強のアスリート、「百獣の王」として大ブレーク。
そして今年6月、日本フェンシング協会の新会長に就任、直後の東京オリンピックでは、フェンシング・男子エペ団体で見事に日本初となる金メダルを獲得、その歴史的瞬間を会場で見守られました。
──まずは、東京オリンピックで日本フェンシング界初の快挙、フェンシング男子団体エペで金メダル、おめでとうございます!
ありがとうございます! もう自分で拍手してますけど(笑)。
──もちろん会場でご覧になられていたわけですけれども、その瞬間のお気持ちというのは、改めていかがでしたでしょうか。
僕自身は(フェンシングの)経験はないんですけど、突然会長に就任しちゃったもので、就任後初の大会がオリンピックだったんですよ。それで1ヶ月ぐらい色々協会のお仕事をしてきて、「よし、オリンピックだ!」ということで。1回戦はちょっと負けそうになりまして、「おいおい!」ってなったんですけど、そこから大逆転して。そして世界1位、オリンピック3連覇のフランスを倒して、さらにその後の準決勝ではアメリカ、そして決勝でロシアを倒しての金だったので、本当に強豪国をきっちりと倒しての金メダル。
僕自身のキャリアはすごく浅いんだけど、フランスの国技とも言えるような競技、そしてヨーロッパで本当に盛んな歴史のある競技で日本の選手が世界一になったというのは…その前に、卓球で水谷準選手と伊藤美誠選手が中国を倒して金メダルを獲ったその場面も見れたので、何だかすごい貴重な瞬間を、しかもこのスポーツの協会の会長として、そしてタレントとしてレポートする側として、両サイドの立場で見れるというのは、こんなありがたい幸運なことはないなと思いながら見ていました。
選手たちが本当に美しい汗と涙を見せてくれたので、一生分のオリンピックの思い出をたくさんいただけて、本当に感謝していますね。
──その強豪国に勝っての金メダルということですけれども、フルーレでは個人と団体で銀メダルはありましたけど、エペでの金というのはどれくらいすごいことなんでしょうか。
「エペ」というのは、「キング・オブ・フェンシング」と言われてるように、最も実戦に近い形の剣術でございまして。正直に言うと、全身のどこを突いてもポイントになって、“生身で相手を倒す”ということに一番近い競技だと思います。ヨーロッパでは(フェンシングの中で)この競技が一番競技者が多くて、このエペのチャンピオンが「キング・オブ・フェンサー」って呼ばれるように、世界のメジャー競技なんです。
けれども日本の(フェンシングの)歴史上では、そのエペをちょっと範囲を限定して上半身の胴体だけを突くという「フルーレ」という競技が浸透して、太田(雄貴)選手が育ってメダリストなったことでメジャー化していたので、このエペは少し出遅れていたんですけど、ここでまさかそれを上回る金メダルを獲得するとは思わなかったですね。
予想でも「エペで金を獲りそう」と言っていた関係者もそんなにいなかったんですけど、でもやっぱりキャプテンの見延(和靖)選手はじめ選手たちは本当に虎視眈々とそこを狙っていて、「我々のチームなら行ける」と。(フルーレでの)太田さんの2個のメダルから…そこから「やっぱりエペがキング・オブ・フェンシングなんだから、我々が復権させて、日本ではエペが主流なんだという事実を作っていこうよ」という想いで戦ってきていたので、(日本がエペで金メダルを獲得したことは)世界的にも非常に価値が高いですし、日本は今(フェンシングの)選手の登録者が6000人しかいないんですけど、6000人の登録者だけで世界一を獲得するというのは本当に偉業なので、本当に価値のある、素晴らしい大会になったんじゃないかなと。まさに歴史が生まれた瞬間だったと思います。
──確かに、あの瞬間というのは、たくさんの人に感動を与えた場面でしたね。
みなさん、やっぱりルールとかはそんなにはっきりは知らないじゃないですか。それでもなんかこう、“感動”みたいなものは伝わりました?
──もう、「エペジーーン」(見延選手が報道陣に聞かれて名付けたフェンシング・エペ団体の愛称。「エペ陣」と「エペで周囲をジーーンと感動させる」をかけている)でした(笑)。
「エペジーーン」しました? 嬉しいです、ありがとうございます。
──武井さんが新会長になられたのが今年の6月だったんですよね。太田さんだったり、フェンシングの選手のみなさんの熱意だったり、置かれている環境を見て、「ここは」ということで?
なんというか、僕の力が必要とかそういうことではなくて。太田(前)会長のこれまでの4年間の活動は、本当にアスリート上がりの会長の方としてはすごくハイレベルな改革を行ってきたんです。本当に多くの企業の方から支援を得て、それで競技の見せ方を変えて、観客を増やしていって…というお仕事をしてきて、その全ての作業を聞いた時に、“これはとてつもない作業だな”と思ったんですけど、僕には僕の領域があると思っていて。太田会長もそれはよく理解されていて、「自分は退任するけれども、今後もフェンシング界のために尽力していきたいんだ」と。「そこに、自分に足りない力を武井さんに補ってほしい」と。
僕自身がずっと芸能界でマイナーだったので、“マイナーな自分自身をメジャーにしていくためには何をしたらいいのか”ということを考えて芸能界にいたので、何かそことシナジーが生まれて。(その経験を活かして)“フェンシングは名前は知っているけれど、経験したことはない、中身を知らない”というものをどうやったら世の中にたくさん知らしめることができるのか、そしてみんなに愛してもらうことできるのかというところを僕のメインのお仕事としてやらせていただけるならば、そして理事の方々にもそこに賛同していただけるなら(会長を)やらせていただきます、という感じでしたね。「フェンシングを」というよりも、やっぱりみなさんの人生をよりメジャーで豊かなものにするためには、こういうことが必要なんじゃないかなと。だから、フェンシングだけに限らず、そういうものには自分がやってきた経験というのが活きるのかもしれないと思って、僕にとってもチャレンジでした。
でもその一番最初のご褒美に、就任のお祝いにオリンピックの金メダルという最大のお祝いが来ちゃったんで、猛烈にプレッシャーがかかってますけど(笑)、最高のお土産を持って営業できるようになったので、これで広められなかったら本当に僕の責任は大きいなと、逆にプレッシャーをかけられたところです(笑)。
僕は、競技は順位だけではなくて、選手の人生の総合得点でその競技のクオリティが決まると思っているんです。プロ野球にしてもサッカーにしても、サッカーなんか特にそうですけど、世界一にならなくてもすごく価値が高いじゃないですか。例えばバロンドールが取れなくても、サッカー選手として世界で評価されている選手はたくさんいるし、ワールドカップで優勝できなくても、予選リーグを突破しただけで日本では大騒ぎになったりとかするわけで。
だから、選手が著名であること、そして選手の暮らしが豊かであること、そしてその競技会が豊かに運営されていること、そして実力が世界に轟くものになっていること。この総合点でスポーツは繁栄していくと思うので、(フェンシングの)競技の面に関しては、今回この少ない人数でも世界一を取れたという素晴らしいメソッドが日本にはありますから、それをお借りして、それ以外の部分を充実させることで、“フェンシングって素晴らしい競技なんだな、あの業界に行くと人生が豊かになるんだな”っていうベースを作れば、競技人口は自然と増えるでしょうし、彼らに憧れる人が増えて、「僕も剣を持ちたい」という人が増えていくと思うので、そこに全力を持って尽力していければいいなと思っています。
──そして、来週16日の木曜日から全日本選手権が始まりますよね。
そうですね。コロナウイルスの感染の状況などによってまだ変化があるかもしれないんですけど、今、その大会が直近の一番大きい大会として予定されています。
──全日本選手権が予定通り開催されれば、また多くの方が、金メダリストたちの戦いを見ることができるわけですね。
そうですね。エペには団体で金メダルを獲ったあの4人の選手が出場予定なので。全員が揃うかどうかはちょっとまだ分かりませんけれども、みなさん出る意思を表明はしてくれていますので。
金メダリスト同士の戦いをこんな直近で見れるというのは非常にラッキーなことなので、「金メダリストの中で一番強いのは誰なの?」という戦い、そして金メダリスト以外にも、フェンシングは選手の相性によって大番狂わせもすごく起きる競技なので、金メダリストを倒してスターになる選手が現れる瞬間も見れるかもしれないので、ぜひみなさん会場にお越しいただいて、もしくはオンラインでも見ることができるようになると思いますし、楽しみにこの戦いを待っていてほしいなと思います。
──さて、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。武井さんの心の支えになってる曲を教えてください。
僕の心の支えというよりも、多くの人がこの曲を支えにしてくれたらいいなと思っている曲がありまして。私と、「魔法の絨毯」という曲で有名な川崎鷹也君というアーティストで作った曲がありまして、その曲をかけていただけたら嬉しいなと。
川崎鷹也&武井壮 with TEAM ATHLETEで「ひとりの戦士」という曲です。
──この曲にはどんな想いを込められたんでしょうか。
コロナ禍で、スポーツは大会が中止になったり延期になったりということが続いて、やっぱり主催者も苦しんだし、その道で貴重な学生時代を過ごして将来の人生の柱にしようと思ってた人たちも、大会に出られない、記録が出せない、進路が決まらないとか、そういった2年間だったと思うんです。僕のところにも、「スポーツ、何とかなりませんか」っていう声がたくさん届いて、みなさんが苦しんでいたこの時代。そしてアーティストのみなさんもライブやフェスができないことで、本当に大きなダメージを負ってしまって、いまだに開催することに是非が問われるというような時間が続いているので、その中で、“じゃあ聴いてくださる方、そして我々のスポーツを見てくださる方にリスクなく楽しんでもらえる何か施策はないかな”ということで、僕が川崎鷹也君に連絡をして、「何かみんなの背中を押せるような応援歌を作りたいんだけど、一緒にどうですか」という話をして、「いいですよ。ぜひやりましょう」ということでタッグを組んで、そして川崎鷹也君が作ってくださった曲に、僕の仲間の日本を代表するトップアスリートたちが参加してくれて、各パートを歌ってくれて、ミュージックビデオを作って。みんなが大好きなアスリートのスーパースターたちが歌ってくれている、そして川崎君が作った素敵なメロディがそこに融合して、新しい力になるという。
だから、「まずは一歩、新しいことに踏み出そうよ」と。「このスポーツやライブができない時代に、そこの道だけではない何か新しいものを生んでおけば、もしかしたら後で大きな力になるかもしれないね」ということで作らせていただきました。
今週のゲスト、武井壮さんのサイン入り色紙を1名様にプレゼントします!
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