今週の「Athlete News」は、東京パラリンピック、アーチェリー日本代表、岡崎愛子選手をゲストにお迎えしました。
岡崎愛子(おかざき・あいこ)選手は、1986年、大阪府生まれ。
2005年、同志社大学2年生の時、通学中に、JR福知山線脱線事故に巻き込まれました。
1両目に乗車し、奇跡的に助かったものの、頚髄を損傷する大怪我を負い、車椅子生活を余儀なくされました。
2013年に、パラアーチェリーを初めて体験され、2016年から本格的に競技に取り組み始め急成長。
2019年、世界選手権で3位になり、見事、東京パラリンピックの出場を決めました。
──岡崎さんは藤木さんの大ファンなんだそうですね。今同じ空間にいてどうですか?
本当にすごい緊張してるんですけど、母がファンで、それで20年前に母の付き添いでライブに行ったのがきっかけで、親子でファンになりました。
──嬉しいですね。岡崎選手は、もともとは体を動かすのが大好きだったんですか?
そうですね。子供の頃からテニスとか、ソフトボールとか、フリスビードッグとかそういう競技をやってました。
──「フリスビードッグ」って、いわゆるフリスビーを投げてわんちゃんがくわえて、みたいな…。
そうです。その大会があって、全国大会とかもやってるんですよ。1分間のあいだで、人が投げたフリスビーを犬がキャッチして帰ってくるんですけど、その合計点(で順位が決まります)。距離と、どういう風にキャッチしたか。ランニングキャッチなのか、ジャンピングキャッチなのかとか。ちょっと奥深い競技ですね。
──面白いですね。ジャンプでキャッチするようにトレーニングをしながら、でもそういう風にジャンプできるフリスビーをこちらが投げなきゃいけないっていう、両方の難しさがありますよね。
そうなんですよ。犬よりも人の方が、フリスビーを投げるのが難しくて。風を読みながら角度とか高さを調節して投げるんです。
──じゃあ、その時の経験が今のパラアーチェリーに実は生かされてるんですか?
かなり生かされてると思っていて。私は風を読むのは得意な方だと思います。
──2005年に脱線事故に遭われて、パラアーチェリーを始められたのが8年後の2013年。きっかけはあったんですか?
2013年の秋に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定した思うんですけど、それで何か私もスポーツをやりたいなと思って始めたのがアーチェリーでした。
──ということは、東京パラリンピックに出たくて始めたということですか?
実は(笑)。その時は始めたばかりなので、そんな「出たい」とかは言えないですけど、心の中で“出たいな”と思って始めました。
──パラスポーツって色々あると思うんですけど、その中でアーチェリーを選ばれた理由というのは?
母が大学時代にアーチェリーをやっていて、それで勧められたというのが最初なんですけど、(もともと)パラスポーツの中で私の障がいレベルでできそうなものが、アーチェリーと射撃だったんですよ。アーチェリーだったらうちの母もやっていたし、教えてもらえるかなというのもあって、アーチェリーを選びました。
──パラアーチェリーは、足を使ってかまえたり、口で弦を引くなど、重度の障がいがある方でもできる競技なんですね。
そうですね。手が使えない選手は(弓を)足で引いたり口で引いたりっていうのもありますし、審判が認めれば装具とかも使えるんですね。例えば私だったら車椅子を使ってもOKですし、例えば体幹に不安がある選手は体と車椅子を固定するベルトを使いますし、あとは弓に矢をセットできない選手…私もそうなんですけど、その場合はアシスタントがついてサポートすることができるんですよ。だからいつも母にサポートしてもらっていますね。
──大きな試合でも、いつも一緒にいるお母様がそうやってセットしてくれると、緊張もだいぶ和らぐんじゃないですか?
和らぐ部分もありますし、普段の練習なんかはけっこう喧嘩しながらやっていたりしますね(笑)。
──試合中は喧嘩にはならないんですか?
ならない…いや、微妙なところですね(笑)。「今のは当てなあかんやろ」みたいな。いつも厳しく言われてます(笑)。
──でも、そういう風に言われると、“なにくそ!”って思ってより集中できたり、試合中も緊張が解けたり…みたいなこともきっとあるんでしょうね。
パラアーチェリーいうのは、どのようにして競う競技なんですか?
パラアーチェリーは、的(まと)はご覧なったことがあると思うんですけど、中心が10点で、外に行くにつれて9点8点ってなっていくんですけど、矢がどこに当たったか、その合計点で競うんですね。使っている弓とクラスによって、的までの距離と的の大きさが違うんですよ。
私の場合は、50m先の80cmの的を狙うんですけど、50mってだいたい渋谷109の高さなんですよ。80cmの的の中心部分が8cmなんですね。で、だいたいSuicaカードの幅が8cmなんです。だから、渋谷109の屋上にあるSuicaカードを狙うようなイメージですね。
──それはなかなか難度が高いですね! 岡崎選手の場合、練習だったら、10点というのはどれくらいの確率で取れるものなんですか?
うーん、だいたい6射うって、1射、2射入るくらいですね。特に私は障がいが一番重いクラスなので、なかなか中心に当てるのは難しいですね。
──でも、競技を始められたのが2013年、そして本格的に競技取り組まれたのが2016年。そしてわずか3年で世界選手権に初出場して、銅メダルを獲得。思い描いていた通りというか、思い描いていた以上のストーリーじゃないですか?
そうですね(笑)。そうなんですけど、最初に体験したのが2013年で、2016年までは、私は握力もなくて体幹もほぼないので、まず弓をどうやって持ってどうやって弦を引けばいいんだろう?というところから始まったんですよ。だから、実際に矢を前に飛ばせてちゃんとアーチェリーとして形になるまで、大体3年かかったんです。最初にすごく時間がかかったんですよ。
──やはり筋トレとか、あとはコツみたいなものがあったりするんですか?
私の場合は、障がいが重いというのもあって、けっこう道具に頼る部分が大きいんです。例えば、私は弓を持つと、持った方に体が倒れちゃうんです。倒れないようにベルトで車椅子と体を支えるんですけど、そのベルトの位置をどこに巻けばいいのかとか、ベルトの幅・長さによって(矢が的に)当たったり当たらなかったりするので、そこを見直したり改善したりするのにすごく時間がかかりましたね。
──そこの調整が難しかったと。でも、いざ射てるようになると、面白いように的に当たった?
だんだん、外側から内側に徐々に当たるようになっていきましたね。そうすると楽しくなって、やっと距離も伸ばせるようにもなったし、最終的に50mまで射てるようになって。でもやっぱり時間はかかりましたね。
──50m届かせるっていうと、やっぱり弦の強さもそれなりにないと、届かないですよね。
そうなんですよね。だから弓を引く強さを徐々に上げていかないといけないんですけど、その50mに届かせる強さで引けるまでには、やっぱりフィジカルトレーニングとか、そういうものを取り入れたりしていきました。
──そして、アーチェリーを始めるきっかけとなった東京パラリンピックへの出場を決めた、その時のお気持ちは。
世界選手権で3位になって東京パラリンピックの内定を得られたんですけど、その世界選手権が初めての国際大会だったんです。なので、もちろんそんな枠を取れるとは思っていなかったので、“嬉しい”というよりも“びっくりした”というのが最初に来ました。予想外でしたね。
──東京パラリンピックに出たいなと思って始めたわけですから、予想外とはいえ、それを手にしたというのは相当喜びも大きかったんじゃないですか?
はい。日本に帰ってきて、じわじわと実感がわいてきました。
──東京パラリンピックがいよいよ始まるということで、今はどんなお気持ちですか?
すごく緊張感が高まってきてますね。初めてのパラリンピック、大きな舞台ですので、かなり緊張します。
──さあ、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。岡崎選手の心の支えになってる曲を教えてください。
藤木直人さんの「anon」です。
──僕の曲を選んでくれた方は初めてなので、感慨深いです(笑)。ありがとうございます。この曲を知ったきっかけは?
知ったのは、うちは犬を飼ってるんですけど、実は犬の名前が「アノン」なんです。その(犬に名前を付けた)後に、藤木さんの「anon」という曲が出たんですよ。うちの犬の方が生まれが早いので。
──え!? それはお母様が名前を付けられたんですか?
そうです。(名前の由来は)多分、音?
──(スタジオに来ていたお母様に確認して)「あ」で始まる音にしたくて、朝起きた時にふと閃いた、と。すごい! その後に(ファンである藤木さんの)「anon」という曲がリリースされて、もう運命を感じますね。
そうなんです。なので、岡崎家では「anon」が流れています。
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