今週の「Athlete News」ゲストは、トヨタ育成ラリードライバー 勝田貴元選手です。
勝田貴元選手は1993年3月17日生まれ、現在26歳。愛知県のご出身。
12歳でカートデビューし、
18歳でFCJ(フォーミュラチャレンジ・ジャパン)チャンピオン獲得。
20歳でF3シリーズ2位、2014年からはF3に参戦するとともに、
全日本ラリー選手権にも挑戦、第8戦でJNクラス初優勝。
2017年のFIA世界ラリー選手権第7戦(イタリア)、
WRC2クラス3位で初の表彰台に上り、
2018年のFIA世界ラリー選手権第2戦(スウェーデン)で
WRC2クラス初優勝を果たし、その後2019年第6戦のチリでも優勝しました。
──現在、シーズン中! ラリードライバーの方は、普段どんな生活を送られているのでしょう? サーキットよりも日数が多い気がするんですが……
そうですね。ラリーカーで全開で走行するのは3日間。金土日って感じなんですけど、月曜日から試走が始まるので、競技自体はまるまる一週間使います。
──今日は勝田さんのお子さんも来られていますが、レーシングドライバーは危険と隣り合わせだったりするわけじゃないですか。
家族を持つことで走り方が変わるなんてこともあるんですか?
正直、ありましたね。今まではどちらかと言うと攻めすぎちゃうスタイルだったんですけど、すごく安定し始めて。良い方向に行きましたね。
──TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムに参加中。
第10戦 ラリー・ドイチェランドと第13戦 ラリー・スペインでトップカテゴリへのスポット参戦も決定しました。WRC 2クラスとWRCの違いというのはどういうものなんでしょう?
基本的には車両が全く別物になります。スピードは10キロ20キロの違いなんですけど、トップカテゴリーの方は最先端のテクノロジーというか、空力を使ったエアロと言われるものが付いてたり、
物の限界値がものすごい高いのでドライバーも常に限界か限界を超えているところでコントロールすることになるので、かなり危険と隣り合わせというか、際どい所での戦いになります。
──トップカテゴリへの初挑戦、 意気込みをお聞かせください。
夢の一つだったので、それはもちろん嬉しいことなんですけど、僕の一番大きな夢としてそこのクラスでワールドチャンピオン取るっていう最終目標をずっと持ってやってるので、ここがゴールじゃなくてスタートという位置付けにして気を引き締めていこうと思っています。
もちろん、かなりテンションも上がってるんですけど、今じゃないぞって自分に言い聞かせてますね(笑)。
──ラリーで戦うコースというのは、毎年同じコースを使うんですか?
基本的には同じエリア使うことが多いんですけど、国が変わればガラッと変わるんです。
例えばドイツの場合は、何年もずっと同じエリアでやってるので基本的に同じステージになります。
ただ、去年のステージを逆走にしたりしてちょっと変えたり、そういった意味でも同じステージの場合は前の年に走ってる人が有利じゃないですか。
そういう意味でも経験っていうものがものすごく大切になってきます。
──世界中にある有名なサーキットって何回も同じ所でやるので攻め方がみんなわかるわけですけど、ラリーはそうもいかないですよね。
同じコースといっても自然を扱うので多少の変化もあるでしょうし……
その通りです。雨が降れば晴れたときとは全く違うコンディションになりますし、走る順番によってもかなりコンディションが変わってきます。
ラリーの場合、1分2分3分おきに一台ずつスタートして、タイムアタック競技になるんですけど、
グラベルと言われる土の上の競技になると、1番目に走ると浮き砂利という細かい砂が浮いていて、結構滑るんですね。
何台か走るとそれがはけて、固い地盤が出てくるんです。そうするとすごくグリップ、食いつきが良くなってかなりタイムが速くなります。
──順番が後の方が有利ってことですか?
グラベルの場合はそうですね。
──スタート順というのはどうやって決めるのでしょう?
WRCのトップカテゴリの場合は、シリーズランキング順ですね。上位からスタートしていきます。
──有利に走りたかったら後からスタートしたいけど、活躍してポイントを稼いだら先に走らないといけないんですね。
その辺もうまくできていて。土曜日からは金曜日の結果で逆から走ります。
もちろん初日にハンディキャップを負うになるので、そこで離されすぎてしまうと…っていうのもあるそうです。僕はまだ出たことがないのでわからないんですけど、そういうコメントよく聞きます。
そういった意味でもいろんな要素が入ってくるカテゴリかなと思います。
──路面はグラベルと、もう一つあるんですよね?
ターマック、スノーなどもありますね。舗装路のことをターマックと言います。
──グラベルとターマックだとセッティングが変わったりすることもあるんですか?
見た目もガラッと変わりますね。タイヤはもちろん舗装用のタイヤ、グラベル用のタイヤとあって、見た目もだいぶ違います。
舗装用のタイヤはどちらかというと皆さんが普段公道で乗られている車と似たような見た目になります。ただグラベルになると見た目も変わってきて。溝がものすごく深くて1.5センチか、それ以上あるブロックが敷き詰められています。それで砂を掻きながら走るっていう感じですね。
他にも、舗装路の場合は車高がかなり低く設定されてるんですけど、グラベルになるとかなり砂利や岩とかも出てくるので車高がかなり高くなります。
──そして、もう一つがスノー。勝田選手はスノーで優勝された経験がありますよね。こちらは得意な路面ということですか?
そうですね。個人的にすごく好きです。四年前にフィンランドでラリー始めたんですけど、フィンランドが雪国なので、雪で練習することが多くて。
そこで自分の中で得意意識というものが生まれてきて、それが昨年のスウェーデン大会の時にうまく機能したんだと思います。
──雪の状態はどういう感じなんですか?
フカフカの雪のステージだったり、完全にアイスだけのステージだったり……色々ありますね。コーナーによって違うものもあります。
例えば、今曲がった右コーナーは雪のコーナーだったけど、次の左コーナーはアイスだったり。
ラリーの場合はタイヤにピンが刺さってるスパイクタイヤというものなんです。
そのピンがアイスを削りながら走るので、ツルツル滑るということはあまりないんです。
──助手席に座るコ・ドライバーとはどんなものなんでしょう?
昔はナビゲーターと言われていて、ドライバーは運転する方、コ・ドライバーは道を案内するという言い方が正しいと思うんですけど、
ヘルメットの中にヘッドホンとマイクが繋がっているので、次のコーナーがどれぐらいの角度のコーナーかとかを教えてもらうんです。
コ・ドライバーが持っているペースノートと言われるものに、ステージの情報が全部記されているんですね。
ドライバーによってスケールが違うんですけど、中にはハンドルの角度でやってる人もいればコーナーの見た目の角度でやってる人もいたりとか。
あらゆる情報を目から耳から、もちろん車からも取り入れて、それを瞬時に判断して最善のドライビングをしています。
──そして、WRC2 今シーズン第8戦を終えた段階で、ランキング4位。第6戦のチリでは見事1位! ここまで振り返ってみてどうですか?
今年一年、正直僕の中ではあまりチャンピオン取りに行くっていう意識がなくて。
経験が大事な競技という意識がすごくあったので、来年に向けてしっかり経験を積むっていう意味で結果よりもそこを重視してやろうと。
僕のプログラムを監修してくださってる方達と、メンタルトレーナーと、コ・ドライバーともすごく充実したミーティングをやりました。
勝ちにこだわる性格なのでラリーによっては気持ち的に「まだまだ行きたいなぁ」って思うこともあったんですけど、ミーティングのおかげでだいぶコントロールできていますね。
──抑えている状態で優勝も果たしたし、ポイントランキング4位だったということは、予想以上の成果ということじゃないですか!
そうですね! 自分の中でもびっくりするぐらい上手くいっています。チリは優勝できたんですけど、その他のラリーでも三つほぼトップを走っていて、やむを得ないトラブルなどで結果が得られなかったラリーが多くあって。
タラレバはあまり言いたくないんですけど、それが無ければ4回優勝できてたと思うので、そういう意味ではちょっともったいないなぁっていう気はするんですけど、今年は経験重視でやろうと思っていたので、ステップバイステップで、良い流れが来ているかな、と思います。
──番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。勝田貴元選手の心の支えになっている曲を教えて下さい
ReNさんの「HURRICANE」という曲です。
──ReNさんは、元々レーシングドライバーなんですよね。
はい。僕とも年が近くて、僕がレーシングカートを始めたときに彼もカートをやっていたんです。
──ReNさんは、怪我でドライバーの道を諦めて音楽の道に進まれましたが、それを聞いたときはどう思われました?
正直、才能がある選手だと思っていたので、ものすごく残念でした。
トヨタの育成のプログラムに向けて歩み始めてたときだったのでショックでしたね。でもその後に音楽の道に行くって決めて、本当にいろんなことがあったと思うんですけど、その中で頑張ってるので僕も彼の曲から勇気とか元気をもらって頑張れています!
──そして、来月8月1日〜4日までWRC第9戦 ラリー・フィンランドが行われます! 意気込みを聞かせて下さい!
フィンランドは僕にとっては第二の母国のような、ものすごく思い出の強い国なので、結果を取りにいきたいと思っています! 是非応援よろしくお願いします!
──最後にモータースポーツファンのリスナーにメッセージをお願いします!
僕自身、今季初ドイツからスポット参戦という形でWRCトップカテゴリの方に参戦させていただくことになったんですけど、まだまだこれからが本当のスタートだと思っているので、今後どこまで行けるか分からないですけど最後までやり切る自信も気合も十分にあります!
最後までしっかり応援していただきたいと思います。よろしくお願いします!
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