今週の「Athlete News」は、元プロテニスプレーヤー 沢松奈生子さんにお話を伺いました。
沢松奈生子さんは1973年3月23日生まれ。兵庫県のご出身。
日本国内のテニスのジュニアタイトルを多数獲得、
夙川学院高等学校では個人・団体ともにインターハイで優勝、
15歳6ヶ月で全日本テニス選手権の女子シングルスに優勝します。
そして、神戸松蔭女子学院大入学と同時にプロに転向し、
1995年の全豪オープンでベスト8に進出。
WTA女子プロテニスツアーでシングルス優勝4回。
シングルス自己世界最高ランキングは14位。
オリンピックには1992年バルセロナ五輪と1996年アトランタ五輪の
2度出場と日本のテニス界を牽引。
現在は、テニス解説者・スポーツコメンテーターなどでご活躍中です。
沢松奈生子さんには、大坂なおみ選手の強さについて徹底解説していただきます!
──元々、伊達公子さん、松岡修三さん、そして沢松奈生子さんが切り開いてきた日本人テニスプレーヤーの道。
錦織圭選手というスタープレイヤーがいて、そして現れた大坂なおみ選手。ついに4大大会を勝って、感慨深いんじゃないですか?
そうですね。4大大会というものは我々の世代の選手からすると出場するものであって。
ベスト8に残るっていうのが一つの夢だったんですよね。でも、優勝っていうのは頭の中で“できたらいいな。”と思いながらも、どこかで“いやいや、それはさすがに遠い世界でしょ。”っていう思いもあったんですよ。
そんな中で、いとも簡単に全米オープンを優勝して、これは夢じゃないかってこっちが思ってる中、夢も覚めない間に今度は全豪オープン優勝して…。
夢なのか現実なのか、ついていけないぐらいの偉業が続いてますよね!
でも、彼女が優勝している大会って、グランドスラムとその一つ下のとてつもなく大きな大会だけなんですよ。
──実はまだ3勝しかしてないという…。沢松さんは4勝優勝されているんですよね。
そうなんですよ。同じ優勝でも、やっぱり私は下の方のレベルの大会で。彼女はそれだけ大きな大会にピークを持ってくることができている。これこそが頂点に立つ選手に必要な条件ですね。
──大坂なおみ選手が昨年の全米オープンに続き、全豪オープンで優勝!
4大大会を二連覇されたわけですけど…。
女子のテニス界って戦国時代と言われているんですけど、彼女が天下統一しちゃいましたね!今年は大坂なおみ時代が始まった年になります。
グランドスラムっていうのは、彼女が今勝ってきてるハードコートだけじゃなくて、芝があったり、クレイがあったり…いろんなサーフェイスがあるので、この中で彼女がどれだけランキング1位をキープし続けるかっていうのが一つのキーワードになると思いますね。
──大坂なおみ選手には、さらに伸びしろというものも感じますか?
伸びしろだらけなんですよ。
ちょっとマニアックな話になるんですけども、テニスのショットっていうのはワンバウンドして打つストロークがあれば、ノーバウンドで返すボレー、それからスマッシュ。ネットプレーというのがあるんです。
ネットプレーに関していうと、大坂さんはまだほとんど使っていないんです。
あれだけのパワーとスピードがあるので、これから1回戦、2回戦とか最初の方を短い時間で勝ち抜けるためには、ネットプレーっていうのは必要になってくると思うんです。
──もう少し試合時間を短くして体力温存するために、そういうプレイも必要になってくると。
はい。ですから、グランドスラムを優勝する選手っていうのは最初の一週間、ほとんど体力温存できてるんですね。
2週目に体力を使いたいので、1週目をいかに温存して勝ち上がるかっていうのがチャンピオンに必要な条件なので。
──大坂なおみ選手はかなりフィジカルも強化されて、こんなにフットワークがいい選手なんだって全豪では驚いたんですけど…。
私も驚きました!1年前2年前彼女のプレーを生で見たときは、やはり左右に振られてもちょっと息が上がる。
ましてや前後がそれにくっついてくると、なかなか追いつけない。体のバランスが崩れた状態で無理やり打ってるっていうショットを何回も見かけたんですよ。
それが、昨年の全米オープンあたりから見てますと、長いラリーでも息があまり上がってないんです。それから体幹もブレてない。これはやっぱりトレーニングをしてきた成果っていうのが間違いなく出てますね。
──全豪オープンも逆転勝利が多かったですよね。第1セットを取って、その勢いで勝ちきるっていうイメージが多かったのに、不利な体勢からでも勝てたというのは、また一歩自信と言うか、ステップが上がったのかなという気もしました。
そうですね。決勝戦なんかまさにそうで、セカンドセットのマッチポイントを取りながらも、挽回されて落としてしまった。
あそこで一回トイレットブレイクを取って、気持ちを切り替える努力っていうのはどの選手もやるんですよ。
ただ、本当に切り替えられる選手と、切り替えたいと思っても同じコートに戻ってくるわけですから切り替えたくても切り替えられない選手はいるんです。
そして、切り替えられない選手が99%なんですよ。
──ほぼってことですね!
ほぼ無理です!正直、私ももう無理じゃないかって思いました。なので、よくあそこから…といった感じですね。
彼女があの時、どう考えたのかなと思っていろいろインタビューで聞きましたら、切り替えようと思っていないんですよね。もう発想が全然違うんですよ。
『私は今、小さい頃から憧れているグランドスラムの決勝戦の舞台に立っているんだ。相手はあのクビトバ選手なんだ。だとしたら思う存分、夢の舞台を楽しもう。やるしかないじゃない!』
と思っていたと。そんな気持ちになれる選手はやっぱり強いですよね!
勝とうという欲がある選手は、もろいんですよ。
──やっぱり、ポイントランキングで上位に入って、シードを勝ち取るっていうのはかなり大きなことなんですか?
大きいですね。シードを獲得することで二つ良いことがあるんです。例えば、16番までのシードがつけばベスト16までは自分よりも上の選手には当たらないわけですから。
ちゃんと自分が力を発揮すれば、勝てるところにドロー(抽選で決まった試合の組み合わせ・対戦表)が入るというのが一つ。
もう一つは、扱いが違うんですよ。例えば役者さんとかでも大部屋の方がいれば個室があったりとかありますよね。楽屋に置いてあるお弁当も明らかに違います。
泊まるホテルのランクも分けられますし、更衣室もシード選手は赤じゅうたんですけども、その脇でその他大勢の人はカーペットなしとか。
──例えば、セリーナ・ウィリアムズ選手が産休で休んでいてポイントランキングを落としましたよね。
それでも扱いはやっぱり下位の選手と同じになってしまうということですか?
そこはセリーナ・ウィリアムズの扱いですね。私の勝手な印象ですけども、世界ランキングで分けてるのと同時に、過去の戦績も加味されています。
ですから、年齢関係なく10代の選手でもトップに上り詰めればそういう扱いをされますし、言い換えればそういう扱いを受けていても、ランキングが落ちてしまうとよほどの戦績がない限り、下の扱いになってしまうので、そういった事を一つとっても上に上がりたいっていう気持ちは誰もが持ってますよね。
──そして、大坂なおみ選手はこれから全仏オープンのクレー、全英オープンは芝コートになりますけども、
ハードコートが得意な大坂なおみ選手。クレーコートは滑りながら打ったりと、独特なプレーが必要になってきますよね。
ヨーロッパの選手は赤土で育っている選手が多いんですけども、最後に足を走らせていってザーッとスライドさせながら打つんです。
ですから、わりと遠いボールも届くんですね。ハードコートで育った日本やアメリカの選手っていうのは滑るという、そういったことが身についてないので、スライドする動きを身につけるまでは、やはり数週間かかるんです。
大坂さんは5月末に全仏がありますけど、4月の頭ぐらいからクレーに出るのか。それとも5月に入ってから出るのか。どのくらい彼女がクレーに慣れる期間があるのかっていうのも一つ大きなポイントになると思います。
ただ、クレーが終わればウィンブルドンは芝です。芝は速いサービスを持ってる人が絶対に有利です。
──大坂選手のパワーが発揮されますね!
私、ウィンブルドンは今年優勝するんじゃないかと思っているんですよね。
──クレーコートで優勝できた時には、いきなり年間グランドスラムもありうると!
いきなり現実味を帯びてきますね。ヨーロッパ系のコーチというか、クレーの専門家の意見っていうのもどこかで取り入れるんじゃないかと思います。
クレーというのは自然が織りなす特別なコートで、前の日に雨が降るとボールが水分を吸ってかなり打ちづらくなりますし、
自然との戦いっていうのに大坂さんがどう挑むのかっていうのは私も注目しています。
──大坂選手は世界ランク1位になりましたけど、先ほどおっしゃってたように、ポイントを守る難しさが2週目で出てくるわけですよね。
そうですね。世界ランキングナンバー1になったということは、どの大会に出ても第1シードがつくのは間違いないわけで。そうすると、1週目はかなり楽に勝ちあがれるようなドローが組まれると思うんですよ。
例えば、ナンバー1シードの選手が体調が優れない時に、私ちょっと明日試合やりたくないわって言うと、試合の日を1日ずらしてもらえたり…ということもあるんですよ。
──そんな優遇されるんですか!
かなり優遇されますね。トップシードの選手には大会側がすごく気を使ってくれるので、良い状況でグランドスラムを迎えられるとは思います。
──大坂選手の活躍、目が離せないですね!
楽しみでもあり、だんだん怖くなってきました。どこまで伸びるんだろうと…。
もう想定しきれないぐらいの活躍なので、まだまだ歴史に名前を残すような選手になると思うんですけども、私たちが心の準備をちゃんとしておかなきゃダメだなっていう、今そんな状況ですよね。
──ただ単に優勝するだけじゃなくて、素晴らしい名プレイヤーの中に入る選手ですもんね。
間違いなく歴史に名前が残る選手になると思います!
──そして、番組ではゲストの方にCheer Up Songを伺っているのですが、
沢松奈生子さんの心の支えになっている曲を教えて下さい。
現役時代、練習が辛い。試合も負ける。そんな中でよく涙を流していましたけれど、辛い時に聴いて自分の気持ちを奮い立たせていました。岡本真夜さんの「TOMORROW」です。
あまり泣かないでしょって言われるんですけども、ドラマ観ても映画観ても試合に負けても…相当涙腺はゆるいですね。
結構、喜怒哀楽が激しいんです。でも、テニスコート上では一切感情を出さなかったんですよ。そのしわ寄せがすべての私生活に…(笑)。
なので、テニスコートから離れると本当によく泣いていたので、この曲にどれだけ励まされたかわかりませんね!
──最後に、テニスを愛するリスナーにテニスが上手くなる、強くなる為の必要条件を教えてください。
テニスでも何でもそうだと思うんですけども、試合に負けたり、うまくいかない時ってのはいっぱいあると思うんです。
負けた時になぜ負けたのか、っていうのをその場で考えること。ミスをした時に、何でミスをしたのかと考えること。
それが同じミスをしない、同じ人に負けないことに繋がっていくので、地道なコツコツした積み重ねがその人を強くさせると思います!
──その場その場でちゃんとミスを潰していくことが大事だと。
そうですね。試合に負けて、ただ単に悔しい悔しいと泣いてるだけで終わってしまう人と、
なぜ負けたのかっていう分析がちゃんとできる人っていうのは、かなりその後の未来が変わってくると思いますね。
今週のゲスト、沢松奈生子さんの“サイン色紙”をプレゼントします!
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当選者には番組スタッフからダイレクトメッセージを差し上げます。
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