今週の「Athlete News」は、2010年バンクーバーパラリンピックに出場したアルペンスキー大回転座位・横澤高徳さんをゲストにお迎えしました。
横澤高徳さん。1972年3月6日生まれ 岩手県矢巾町出身。 現在46歳。
22歳でモトクロス国際A級ライセンスを取得し、全日本モトクロス選手権に参戦。25歳の時、練習中のジャンプ事故により脊髄を損傷し車イス生活となります。 いわてリハビリテーションセンターに入院中、チェアスキーと出会い、パラリンピック出場を目指し国内外の数々のアルペンスキー大会に出場。
そして、2010年バンクーバーパラリンピックに出場し、21位という結果を納めます。現在は、NPOいわてユニバーサルデザインセンター理事長、そして、講演を通じて、夢を持ち挑戦し続けることの大切さを伝えています。
──世界一早いモトクロノスのライダーを目指していた横澤さん。事故で車椅子生活になり、絶望の日々を送っていたと言います。
絶望の中、希望の光を見出した時の心境を教えていただきました
リハビリ病院に転院したその日が長野パラリンピックの開会式の日だったんですよ。運命的な出会いと言ったらいいんですかね。
テレビでパラアスリートが全身全霊で滑っているのを目の当たりにした時に“すごいな”と、見た印象が強かったですね。
そのとき、両手両足が無い方と一緒に入院してリハビリしていたんですけど。その方はたばこを吸うんですよね、自分の腕だけで上手にたばこを上手にくわえるんですよ。たまたま僕に「火をつけてくれ」と頼んできたので、そして火をつけてあげた瞬間に雷が落ちたような感覚になりまして。
自分は今まで歩けないということばかりに拘っていたんですね、自分には使える手があるし、“出来ることってあるんだよな”って、その瞬間に気付かされたんです。出来ない事を探すのではなくて、出来ることを探すことに挑戦してみようかなと考え方が変わりました。
──横澤さんは2010年バンクーバーパラリンピックに出場することになります。出場して得たもの、感じたものは何だったのでしょうか
チェアスキーを始めた時にパラリンピックで金メダルを獲るという目標設定をして、挑戦していく中でちょっとずつ自分が近づいているなと実感しました。
“出来るんだ”と自分を信じて、とにかく挑戦し続けました。
“出来ない”と思ったら出来ないと思いますし、自分に何度も出来るんだと言い聞かせて、諦めないで挑戦し続けることが大事なんじゃないかなと思います。
オリンピック・パラリンピックってスポーツの祭典と言われますけど、本当にスポーツの祭典だと感じさせられました。4年に1回の大舞台で金メダル獲るすごさを目の当たりにしましたね。特にアルペンスキーの場合はアウトドアスポーツなので、天候や板の調子、スタート順などすべての運がかみ合ってこそ金メダルを獲るっていう世界ですので。
4年間積み上げてきたものがかみ合わせるすごさっていうか…当然、努力して挑んでいると思いますけど、神がかった選手がメダルを獲るのではないかと思いますね。
──横澤さんの心の支えになっているCheer Up Songを伺いました
よく海外遠征に行った時に聴いてた曲なんですけど、Taio Cruzの「World In Our Hands」です。
いつも秋にオーストリアに合宿に行くんですけど、そこで健常者のアルペンスキーのワールドカップの開幕戦が行われるんです。その選手紹介の時にかかっていて、海外の山と景色とノリノリの曲でテンションが上がりました(笑)。
──現在はご自身の経験を通じて講演活動を行っています。伝えたいメッセージとは何なのでしょうか?
自分が人生経験を通して感じた事は、バイクで小さい時から夢に向かって挑戦し続けたときは、いろんな逆境はあるんですけど充実してるし、生きる力があるんですよね。
でも、そんな夢を追いかけている絶頂の中、突然の事故で車椅子生活になって地獄の底に突き落とされた自分は夢も希望も見失って。それこそ絶望のどん底で生きる力が湧いてこなかったんですよ。
よく、人と物との出会いで人生が変わると言われますけど、チェアスキーと出会い、いろんな人と出会ったおかげでパラリンピックという新しい夢が生まれたときから、ちょっとずつですけど生きる力が沸いてきたんですよね。
夢を持ってなくても生きていけると思うんですけど、夢や目標を持って生きることと、持たないで生きることの人としての生きる力の部分で、自分は人生を通して感じさせてもらったので。それをこれからの未来の子供たちに伝え続けていきたいと思います。
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