今週の「Athlete News」は、ミズノスイムチーム所属、ロンドンオリンピック、リオデジャネイロオリンピック 女子200メートルバタフライ 銅メダリスト 星奈津美さんをゲストにお迎えしました。
星奈津美さんは、1990年 埼玉県越谷市生まれ。2012年のロンドンオリンピック、2016年のリオ・オリンピック 200メートルバタフライで銅メダルを獲得。2012年の日本選手権では、200メートルバタフライで2分4秒69の日本記録を樹立。2015年の世界水泳選手権では日本競泳女子初の金メダルを獲得。2016年10月に引退を表明し、現在はミズノスイムチームのアシスタントコーチを務めています。
──素晴らしい、輝かしい経歴をお持ちですが、栄光の裏には持病であるバセドウ病との戦いがあったんですか?
そうですね。16歳、高校一年生の時に発症したので、10年以上になるんですけど。
──発症したというのが明確にわかるんですか?
最初は病気のことも知らなかったので、体の不調が何日か続いて“おかしいな”と思って。
症状で多いのが、息が上がって動悸が激しくなったり、汗かきやすいというのがあるんですけど、そういうのが続いて。
私の母も甲状腺の病気を持っていたので、家に帰ってそういう話を何気なくしていたのを聞いて、病院に連れて行ってくれてすぐに気付くことができました。
──その後、症状はずっと出なかったんですか?
そうですね、約8年間くらい、24歳の時までは特に出なくて。
定期的に血液検査はしていたんですけど、問題ありませんよということで、思う存分競技に専念してくださいと言われてました。
──それが悪化したということですか?
突然だったんですけど、タイムもなかなか出なくなってしまって。いつも通り検査に行った時に初めて「悪くなってますね」ということを言われました。
──その時はどのように向き合おうと思ったんですか?
初めて病気とわかった時の、16歳の時よりも、絶望感というか“なんでこのタイミングなんだろう?”と思ってしまって、リオオリンピックの2年前とかだったので。
今の状態だと次のオリンピックを目指すのは難しいんじゃないかと考えてしまって、落ち込みました。
──この時は、手術を決断されたんですか?
はい。きっかけは、いつもそばで支えてくれていた母の存在だったんですけど。
先生からは悪化してるので、薬の量も増やして、練習自体は様子を見ながら、無理はしないでやってくださいと言われてしまって。練習というのは、常に全力を出し切って、追い込んで追い込んでやっていくのがオリンピックの舞台に立つためには必要なので。
無理をしないでやるのは難しいなと思ってしまって、病院を出た後に母に連絡したら「もう一回病院に戻って、他に方法がないか聞いてきたら?」って言われたんです。
そのとき私は電話で号泣していて、引退っていう言葉まで言ってて。電話の向こうで、母は冷静で(笑)。
また戻って、同じ先生に話をさせてもらって、そこで初めて手術をするという方法を言われたんですね。
手術になると首のところを切るので、傷が残るというところで、先生は“今じゃなくても”と思ったみたいなんですけど。
私はオリンピックまで時間がないので、1日でも早く思い切り練習ができるっていう方法を選択したいですということで、すぐに手術を決断しました。
──お母さんの「戻ったら」の一言がなければ?
そうですね、存在がなかったら、そこでやめてたかなとか考えますね。
──手術をすると練習ができない期間があったわけですか?
思っていたよりも、手術をして約1ヶ月くらいでプールに入れると聞いたのですぐに決断できました。
──入院中は、また戻れるのかどうか、という葛藤があったんじゃないですか?
不安というよりは、病院にいる時の自分は前向きで、先生から「これで体の中の悪いものはいなくなったから、またリハビリしながらやっていけば、思い切りできますから」と言われた時に、自分でもすっきりした気持ちになれて。
手術した後は、傷口がどうしてもあるので3日間くらいシャワーを浴びれなかったんですね。3日ぶりにシャワーを浴びた瞬間に、水が体にかかる瞬間がすごく気持ちよくて、”私の好きなやつだ!”と思ったくらい、好きなんだなと思いましたし、早く泳ぎたいという気持ちになりました。
──リオオリンピックの決勝レースですか、「もう腕もかけなくなる、足も蹴られなくなるくらい、初めて出し切れたと思うので悔いはないです」とおっしゃっていましたが、出しきれましたか?
はい、出しきれましたね。最後の最後まで2分5秒間というレースの時間を、オリンピックの舞台でそこまで鮮明に覚えてるのはなくて。
緊張とか、いろいろなところで覚えてないのが過去のオリンピックであったんですけど。
リオオリンピックは、“もう最後かも”というところで、覚悟を決めて地に足をつけて戦えてたからこそ、全部出し切ろうと思って、最後の50mはそれだけを思って泳いでました。そこが究極かなと、メダルとかもありますけど、そこができて満足して終えれたというのはあります。
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