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Athelete News
18.04.21
自分と向き合う時間
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今週の「Athlete News」は、2000年のシドニーオリンピック女子マラソン金メダリスト・高橋尚子さんです。

高橋尚子さんは、中学から本格的に陸上競技を始め、大学卒業後、実業団入り。
2000年のシドニーオリンピック女子マラソンで優勝され、国民栄誉賞を受賞。翌年のベルリンマラソンでは、当時の世界記録となる2時間19分46秒をマークしました。
”Qちゃん”の愛称で親しまれ、2008年に現役を引退、現在はスポーツキャスターとして活動されています。


──シドニーオリンピックで、レース中30キロ付近でサングラスを外してスパートをかけたと報道されてましたが
真相は違うんですか?


そうですね(笑)。解説を見た人は、聞きながらテレビを見ると思うんですけど。
「サングラスをとってスパートの合図か!?」みたいな、かっこいいコメントをしていただいたので、それを機に行くっていう風に思われがちなんですけど全然違いましたね。

サングラスを取りたいと思ってたんです。海外の人を対象に作られたサングラスだったので、こめかみの辺りが締めつけられるので
30キロ以降は瞬時の判断が大事で、クリアにしておきたいという部分がありました。
小出監督は、前日にレース内容に指示がなかったのに、自分は20キロ、30キロにはいるっていう風に、そこだけ約束したんですよね。
20キロにはいたんですけど、30キロにどこまでたってもいなくて(笑)。

──見つけられなかったんじゃなくて、いなかったんですか?

20キロの時の姿を見て、”あ、いけるな”と思って、約束をすっ飛ばしてビールを飲んでゴール地点に行ってしまったらしいんですよ(笑)。
走ってる私は知らないので、サングラスの下で目を動かしながらキョロキョロ監督を探すんですね。あのサングラスが2万円という高価なものだったので、そこには捨てたくなかったんです。
そしたら、道の反対側に父親を見つけて、父親めがけて投げようと思ったんですよ。
ちょっと前に出て投げたんですね、サングラスの行方を見たら、真ん中にいる中継バイクに当たって跳ね返って戻ってきたんですよ(笑)。”ショック!”と思った瞬間に、シモン選手が離れているのが左目のところで確認できて。
”あれ?今がスパートかな?”っていうように、瞬時に判断して後付けスパートでいったんですね。
なので、あの短い瞬間にいろんなことを考えていった瞬間ですね。

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──ドラマが詰まっていたわけですね

その通りです!(笑)
ラストスパートって難しくて、自分が楽で相手も楽だったらスパートしても相手はついてきます。スパートするのってすごく力を使うので、一回で仕留めたいっていう鉄則があるんですね。
そのためには、相手がちょっと沈んでいる時にスパートした方が開きが多いんです。
なので、相手を観察するんですけど相手を見ることができないので。

──ゆっくりは見られないですよね

足音を聞いて、大きくなってきたら前の推進力が下に失われているから疲れている時なんだ、とか。
わかりやすいのは、呼吸が激しくなったらっていうのを判断して相手が沈んでいる時にスパートするんですけど。
いつ確認しても、すごい楽そうなんですよ。
”まだまだこの先かな”って思っていた時に、元気な時って相手の変化に対応できるんですけど、そのサングラスを投げた時に前に出たのに、彼女の反応が遅かったのを察知することができたので、それがいい形で探れたということにつながりました。

──そんなことってあるんですね

今思えば、ビール飲んでおいてくれて良かったなって(笑)。

──ちなみにサングラスは返ってきたんですか?

父親が、”そのサングラスは娘のだから”って、係員の人に声をかけたらしいんですよ。
そしたら、係員の人から「僕のメガネと換えてくれない?」って言われたらしいんですけど(笑)。
どうしても嫌だからということで、父親の元に戻ってきたんですね。
私に「これを思い出としてくれないか?」ということで、お父さんにプレゼントしたんですけど。

──レースの後に「とっても楽しい42.195キロでした」っていう言葉、これもびっくりしましたよね

苦しかったのは最後の200メートルですね。
41キロくらいからちょとずつ苦しくなって、最後は、もう会場に入った時は8万人と言われるような観客の人に応援されて。
”この声援は私のために贈ってくれているんだ”と、嬉しい気持ちで浸っていて、パッと電光掲示板を見たら真後ろに迫っているシモン選手を見つけて、”これは声援じゃなくて悲鳴だ!”と思って、最後の200メートル頑張ろうと思うんですけど、”カックン!カックン!”みたいな走り方になって、最後の200メートルがきつかっただけで、あとは意外と”このままずっと走り続けたい”と思うくらい気持ち良かったです。

──走ることだったり、マラソンの魅力はどういうものですか?

今は、100人いたら100通りの楽しみ方があるのがマラソンだと思うんですね。現役時代は、タイムだったり、順位、大会、充実感、達成感っていうものを目指してやってきました。
ある意味、人間の新たな可能性を開拓してきた感じなのが楽しかったですけど。立場が変わって、今みたいな形になると自分と向き合う時間がとれる。
今は、走ってる時間というのは、悩み事だったり、今日やることのアイデア作りだったり、真摯に向き合う時間になって。ポジティブな気持ちになるので、いいアイデアが浮かんだりっていうように、向き合える時間が楽しいです。

ダイエットを目標にしたり、終わった後のビールを楽しみにしたり、私自身も教えてもらうことがたくさんあって。
一緒に走っていると、写真を撮りながら「アルバムにするんですよー」っていう風に教えてもらったり。その町の観光をするように、いろんな県の大会を渡り歩いてる人もいて。”こういうのもあるんだ〜”と、勉強させてもらってますね。

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──長距離に対する、日本人の気質とのマッチングというか、みんな好きですよね

普通のスポーツだと勝った負けたっていうのがありますよね。
マラソンの場合は、もちろんトップ争いの方で勝った、負けたはありますけど。走った人全員が勝者、ヒーローになれるわけです。
ゴールにたどり着いたってだけで、みんなから讃えてもらえる。それで、”やって良かったな”とか、嬉しい気持ちになれるのがこのスポーツの特徴なのかなと思います。

──ついつい、市民ランナーもタイムを追うようになってしまって
自己記録を短縮したい、そうなってくると辛くなってくる部分もありそうだなって


まさにその通りなんですよ。
ブームがあって、走り始めて、完走したことに喜んだ人が、新たな目標で上を向いていった時に必ずどこか壁に当たってやめてしまったり、怪我をしてやめてしまう方も多いは多いんですよね。
そのためにも、知らなきゃいけないことがたくさんあって、走ることだけではなくて、ケアの仕方、体操の仕方、走り方っていうのをしっかりと伝えられる人がいて、そこの知識を持ってやっていくと、もっと長く自分の思いにそった走りができると思います。
そのあたりが、まだ足りてない気はしますね。

──高橋尚子さんのお気に入りの一曲を伺います。高橋さんがよく聞いている曲、心の支えになっている曲はありますか?

Qちゃんというと、みんながこの曲を思い描いてくれる方も多いと思います。
hitomiさんの「LOVE2000」です。

──ものすごく有名になりましたもんね

そうですね、私は大会ごとにテーマ曲を決めているんですね。
今回は何にしようかなと探っていたんです、その時に決めたのがこの曲で。
一回これと決めると、繰り返して聞くんですね。テンションとリズムが、このような感じで頭の中に回って、気持ちをハイテンションにしてスタートラインに立ちました。

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そして、高橋尚子さんからプレゼントをいただきました!
高橋尚子さんが大事にしている言葉とサインが入った色紙をプレゼントします!
プレゼントをご希望の方は、番組WEBサイトのメッセージフォームからお送りいただくか、Facebookのアカウントをフォローしてコメントをしてください。
当選者には番組スタッフからダイレクトメッセージを差し上げます。

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