今週の「Athlete News」は、今までとはちょっと違った目線でプロ野球を楽しむ方法をご紹介します。
お話を伺ったのは國學院大學の准教授でプロ野球チームにデータ解析システムを提供する株式会社ネクストベースの神事努さんです!
神事努准教授は、1979年生まれ。バイオメカニクスを専攻し、
中京大学大学院で博士号を取得。2007年からは、国立スポーツ科学センターで
スポーツ科学研究部研究員を務められました。
投手の動作、解析を中心とした研究を行い、北京オリンピックでは、
女子ソフトボール日本代表をサポートし、金メダル獲得に大きく貢献されました。
プロ野球では、2016 年まで東北楽天ゴールデンイーグルスで、
データ分析を指導し、チームの強化を推進。昨年からは読売ジャイアンツに
データ解析システムを提供されています。
──今日は今までとはちょっと違った目線でプロ野球を楽しむ方法をご紹介していただきます。
数値といえば、メジャーリーグで話題にもなっているセイバーメトリクスですね。ブラッドピットが主演した映画「マネーボール」もありましたけど…
安い資金でどうやって強くするのか、というところで今まで選手に対してフォーカスを当てていたのが、一勝あたりいくらなのか、っていうところから逆算してチームを編成したっていうところに特徴がありますね。
得点が高い方が勝つっていう野球の構造をちゃんと分析していくと、相手よりも得点が高いということになると、少ない失点を抑えられるピッチャーと、高い得点を生み出すバッター。というところで役割をちゃんと分けて、それぞれを分析していたっていうのが特徴になります。
ーーこの中でも具体的に注目すべきデータがあるんですよね?
例えば、イチローさんとかですと打率が4割いくんじゃないか、っていうところですごくフォーカス浴びていましたが、今では打率だけだと得点につながらないと。
セイバーメトリクスの中で一つの主要としてはOPSっていう指標ができているんです。
それは、出塁率と長打率を足し合わせたもの、これが得点の貢献が高いということがわかっています。
──去年、メジャーリーグはいわゆるフライボール革命というのが吹き荒れていましたよね!
まさにその通りで、フライボールを打つと得点が高くなる。フライボールが高いと長打率が高くなって、OPSが高い選手が増えるので、得点に貢献するっていうロジックになっています。
ーーこれによってホームランもたくさん生まれているんですよね?フライボールにする秘訣とかもあるんですか
ボールが20°から35°ぐらいの間が最も長打になるということがわかってます。
ですので、バッターはそこに行くような練習をする。具体的にはバットを下から上に上げるような、今までの常識とは違うようなスイングのメカニズムが今、研究されてるというところです。
ーーいわゆるアッパースイングになるということですね。
そうですね。今そういう流れは日本でも起こってきていて、練習でも楽天イーグルスがフライを打ち出したり、ジャイアンツなんかもそういうことが始まってるというところです。
ーーOPSがどうなれば良いことになるんでしょう?
チームとしてのOPSなのか、それとも打順的にOPSを持っていけばいいんでしょうか?
良い視点ですね。これは、できるだけOPSが高い選手をたくさん揃えた方が勝てます。打順ていうものの考え方はその後の考え方です。
OPSが低い人も含まれちゃった場合、どうやって打順を組み立てるのかっていう時にOPSの高い順から置いていくっていうのが今の流行りですね。
ーー高い順に並べるという事は、一番に4番バッターを並べると考えると、今までの野球とは全く違う考え方ですね。
そうですね。1番バッターがどれだけ塁に出るのか。
OPSは足し算なので、そういう意味では出塁率も高い、OPSも高い選手っていう感じで、中身がちょっとずつ変わってくることはありますね。
とは言え、今年ヤンキースでは、アーロン・ジャッジというホームランバッターがいるんですが、その人が2番バッター打つんじゃないかっていうこともあったりとか、ホームランを打つ人でも2番に置くっていうのが今考えられてる効率のいい得点の取り方ですね。
ーー日本球界でも、2番打者に強打者を置く戦法が去年話題になりました。
どうしてここにペゲーロ選手を置いているんだ、と、楽天の梨田監督が話題になりましたけれども、実は理にかなっていたんですね。
楽天野球団は情報分析室、戦略室っていうものがありまして、そこで分析してみると、2番バッターにペゲーロを置いたことが一番得点効率が高くなるということで分析した結果、梨田監督に伝えたと。そこで、梨田さんはじゃあやってみよう、となったんですね。
ーーOPSから見た、今年のペナントレースの行方はどうでしょうか?
ボールを遠くに飛ばすっていうことにおいては、体が大きい選手の方がその確率は高くなります。
そういう見方をしていくと、広島なんかはやっぱり体が大きい選手すごく多いですし、読売ジャイアンツに関してもそういう選手も増えてきている状態です。
そういうような視点やデータであったり、体つきを見て、”この人は体が大きいな。だからOPSが高いんじゃないか?”というような楽しみ方もしてほしいですね。
ーー打者としては打撃三部門、ホームラン・打点、そして打率じゃないですか。今後、OPSも表彰するようになったりすると、より注目される数字に変わりますよね。
今、メディアの方の中でもそういう話は進んでいて、野球中継でOPSくらいは載せようっていうような状況で進んでいるところもありますので、もしかしたら目にすることも増えるかな、と思います。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
過去1週間分の番組が無料でお楽しみいただけるradikoタイムフリー
番組を聴いて気に入ったら、SNSで友達にシェアしよう!
「
3月24日(土)OA分の放送はこちら」