今週の「Athlete News」は、先週に引き続き、リオ・パラリンピック銅メダリスト、辻 沙絵選手にお話を伺いました。
辻沙絵選手は、1994年、北海道生まれ。
生まれつき右腕の肘から先がありませんでしたが、小学5年でハンドボールを始め、高校では、全国高校総体でベスト8入り。
スポーツ推薦で日本体育大学に進学し、大学2年の夏、陸上競技に転向。瞬く間に記録を伸ばし、2015年の世界選手権では、100メートルで6位入賞。
そして去年のリオ・パラリンピックでは400メートルで銅メダルを獲得。今年7月の「世界パラ陸上競技選手権大会」でも、この種目で銅メダルに輝き、2020年の東京大会でもさらなる活躍が期待されています。
──辻選手は小学5年生の頃から健常者の人と一緒にハンドボールを始めて、高校では全国高校総体でベスト8入り。
スポーツ推薦で日本体育大学に進学し、大学2年生の時にパラ陸上競技に誘いがありました、その誘いがあった時はどんな風だったんですか?
いきなり言われましたね、「違う競技でメダル目指してみないか?」と声をかけてもらって、「パラリンピックですか?」と聞くと「そうだ」と返ってきて、すごくショックでしたね。
今まで健常者と同じように、むしろ、その人たちよりも試合に出てたりしてたのに、”なんで今さら、障害者っていうくくりに入らなきゃいけないんだ”っていう気持ちがあって。
障害者なんですけど、障害者っていう気持ちが全然なくて。”どんなに頑張っても、結局、障害者っていう風に見られちゃうんだ”って、まず思ってしまったんですけど。
卓球の選手で、オリンピックとパラリンピック両方出ている選手がいるんですね。”あ、両方出ていいんだ”って思えて、”それって、自分にしかできないな”とか思ったり。
教員になりたかったので、教員になった時に、日本しか知らない先生、ハンドボールしか知らない先生より、世界を知ってる先生、いろんなことをやってきた先生の方が、自分が生徒だったら興味を持ちますし、いろんな話ができるかなと思って、”やってみようかな”と思いました。
──本格的に転向されるまで間がありますけど、本格的にやってみようと思ったきっかけは何ですか?
2015年の世界選手権で、100メートルで6位だったんですね。
その時に、義足の走り幅跳びの選手で山本篤選手という方がいるんですけど。その方が、目の前で金メダルになる瞬間、メダルセレモニー、国旗が上がって国家が流れる瞬間にいて、”え!すごい!”って、言い表せないくらい涙が出てきて。
こんな風に、感動とか幸せな気持ちをみんなとシェアできる選手ってすごいなって思いましたし、国家を流せるって、1位の特権じゃないですか?
”国家流したいな、かっこいいな〜!”って思って、”いま自分はどうだろう?”と考えた時に、陸上とハンドボールを両方やっている生活をしてて、ちゃんと陸上をやったら結果出るんじゃないかと思って、陸上の監督に「陸上一本でやります」と言いに行きましたね。
──一緒にハンドボールをやってる友達、チームメイトから言われた言葉は?
「沙絵が決めたなら応援するよ。でも、ずっと仲間だからね」と言ってくれましたね。
──”先生になりたい”というきっかけはあったんですか?
中学校の時の先生で、こばやしれい先生という女性の方がいるんですけど。その先生がきっかけですね。
──どんな先生だったんですか?
厳しくもあり愛のある先生で、私が最初ハンドボールをやったのが小学校5年生だったんですけど、中学校に入ってハンドボール部があったので、入部届けを持って行った時に「あなたに合わせて練習できないからね、もう一回考え直してきて」って言われて。
当時、そのチームは全国大会で勝つことが目標だったので、レベルの高いところだったんですね。
私は、逆に自分がそれだけ上手くなれば、メンバーにも入れるし、試合にも出れるし、この人は自分が頑張った分だけ認めてくれる先生だなって受け止めたんですね。
それで、「ハンドボールをやらせてください!」と言ってやったんですけど、最初はキャッチとかできなくて、1人で壁打ちをずっとやってました。
先生は見てないフリをずっとするんですね、でも、絶対に見てるんです。ある程度できるようになってきたら、「沙絵、試合出てみようか」って言って。
──その時は嬉しかったんじゃないですか?
”よっしゃー!”って感じですよ(笑)。試合でシュート決めたときに「沙絵、太陽が見えたよ」と言ってくれて、”よかった、また頑張ろう!”って思えましたね。
──辻 沙絵選手のチアアップソングは、Sonna Releの「Strong」
この曲は、映画「シンデレラ」の曲なんですよ。
映画を観て、”この曲、心にくるな”って思って、歌詞を調べたときに「自分を信じればできる」という曲だったので、好きだなと思って、トレーニングの時とかに聴いてますね。
──最初は戸惑いがあった陸上という世界、いま、ご自身にとってどんな場所ですか?
人生ですかね。22歳の女の子が、遊びたいのに、いろんなところに行きたいのに、行かないで練習してます(笑)。
──やっぱり、いろいろ遊びたいですか(笑)
インスタ女子みたいに、インスタ映えするところに行ったりしたいですけど(笑)。
朝から練習して、ケアに行って、明日の練習に備えて、寝てという感じですね(笑)。
──障害者、健常者を問わずトップの世界を経験した辻選手、ご自身のアスリート人生を通じて伝えたい事を教えてください
何事も挑戦する事です。やらないで後悔するより、やって、そこからダメでも、”次はどうしよう”とか、学びが起きると思うので。
”とりあえずやってみる”という事が大事だと思います。
──2020年の東京パラリンピックまで3年を切りました、ズバリ、目標を教えてください!
選手としては、金メダルをとって国家を流したいなと思っています。
大会自体としては、パラリンピックはまだまだ知られていないスポーツなので、今回ロンドンとかリオへ行って、会場が人で埋まっていて、盛り上がっていて、選手だけじゃなくて、観客もスタッフの皆さんも盛り上がっていたんですね。
そういう大会になればいいなと思いますし、国外からいろんな方が来られるので、日本の良さだったり、終わった時に”日本って良かったね”とか、”日本人を採用してみよう”とか、日本の素晴らしさが伝わる大会になればと思っています。
──最後に、辻選手が思うパラスポーツの魅力は何ですか?
パラスポーツは人間と道具の融合なので、そこって難しいんですね。義足だったり、義手だったりとか、コントロールしようと思ってもできない部分だったりとか、自分の努力次第で物をコントロールして、いい記録を出せたり。
普通のスポーツではなかなか見られないスポーツなので、そこが一番の魅力かなって思います。
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