今週の「Athlete News」は、アスリートの足を支える伝説のシューズ職人、三村仁司さんをお迎えしました。
三村さんは、有森裕子さん、高橋尚子さん、野口みずきさんらオリンピックメダリストをはじめ、
箱根駅伝3連覇を達成した青山学院大学、さらに、メジャーリーグのイチロー選手、サッカー日本代表の香川選手ら、数々のアスリートの靴を手掛がけられました。
現在は自らが設立したシューズ工房「M.Lab(ミムラボ)」で靴作りをされています。
専修大学陸上競技部のシューズ計測にお邪魔して、三村さんの靴作り、その極意を聞いてきました。
──想像していたシューズ計測とは全然違いました!選手の体全体を触ったり、テーピングまでされるんですね。
選手は走りやすいようにしますからね。その選手によって違いますから、各自によって違った対応になりますね。
やっぱり正常にキックできないといった選手からの話がありますから、
まっすぐキックできた方がスピードも出るし、走りやすい、疲れにくいし、故障しにくい。
それが分からない選手が多いので、選手によってやり方は違うんですけど、選手にあったテーピングをしてあげて、やるかやらないかは本人次第ですね。
──良いシューズを届けるだけではなく、体のつくり方のアドバイスもされるんですね。
そうですね。やっぱり選手には強くなって欲しいですからね。
せっかく「ミムラボ」のシューズを履いてもらっているので、戦闘集団でいてもらわなきゃ。
──アテネ五輪で野口みずき選手に靴を作った際は野口さんから「勝てる靴を作ってください」と言われたとお聞きしたのですが?
そうで言われましたね(笑)。もう、走り方も分かっていましたし、その都度、「こういう風に直してほしい」というような要望がありました。
ただ、精神的な面が心配で、アテネのスタート10分前にあいさつに来たときに、青白い顔をしていたものですから「こんなに緊張して走れるのか!」と怒ったんです。
それで色々と話をしたら「緊張がほぐれた」と言っていたので、「これならいけるな」という確信がありました。
──靴を作るうえで、選手との信頼関係も大きいですね。
それが半分ぐらいを占めていると思いますよ。
──野口さんが走り終わった後、シューズを手にもってキスをされていましたが、それを見てどんな気持ちでしたか?
実は私、そのとき競技場にいたんですが、それを見てないんです(笑)。
ゴール1キロ手前ぐらいから何をしようかと考えていたと、もう確信あったんでしょうね。
──数々の選手と一緒に戦って、夢を叶える瞬間ってどういう気持ちなんですか?
これまで、高橋尚子選手、野口みずき選手が金メダルを獲りましたけども、それはすごく嬉しかったんですけど、
その前に有森裕子選手がバルセロナで銀メダルを獲ったとき、あの時はすごく感動しました。
有森が足が痛くて走れないという状況の中で走らなければならないと、現地でも3時間ぐらいかけて靴を修理しながら、調整しました。
──三村さんにとって強い靴とはどんなシューズですか?
それはやはり選手に合ったシューズですよね。もうひとつは作る人の気持ちがどこまで選手に伝わるかという事ですよね。
それで、一体になって記録に挑戦していく、世界で活躍していくという「ものづくり」が大切だと思いますね。
──毎回、ゲストの方のお気に入りの1曲を伺っています。三村さんの思い出の一曲などありますか?
私が高校一年生の時に、都はるみさんが「アンコ椿は恋の花」を歌を歌っていました。
高校一年生ですから、一番下級生ですし、名門校という事もあって練習がすごくきつかったんです。
あの当時、大学生が合宿にきて一緒に練習したんですが、「こんなキツい練習は大学でもやらん」と大学生が慌てふためいて、帰ったぐらい練習がきつかったんです。
その時に支えられた歌です。今みたいに、ヘッドフォンして走りながら曲を聴ける時代じゃないですから、歌いながら走っていました。
──3年後の東京オリンピック、三村さんはどのように拘わっていきたいですか?
拘わっていきたいというより、それ以前の問題で。世界に通用するような選手を作っていきたいという気持ちが強いです。
選手がそれに応えてくれる練習ができるかどうか。私は、選手に喜んでいただける靴を提供していくという義務も責任もありますから、それはやっていきたいと思っています。
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