今週の「Athlete News」は、先週に引き続き、バレーボール元日本代表のスーパーエースで、北京オリンピックに出場した山本隆弘さんをお迎えして、お話を伺いました。
──今週は、リオオリンピックへの切符をかけた最後の戦い、バレーボール世界最終予選 男子日本代表について伺っていきたいと思います。
今回の日本代表はどうですか?
NEXT4という若い選手が出てきて、期待はされているんですけども、オリンピック最終予選の舞台は、今までの大会とはまったく違う舞台なので。
そこで、どれだけ自分たちの力を出してくれるのかなっていう部分は、期待もあり、不安もありっていう感じですかね。
──男子の場合、女子と違ってオリンピックに出る、出ないというところだったりするじゃないですか。前回のロンドンでは、出場を逃したわけですよね。
それだけ、男子のバレーボールはレベルが高いんだろうなと思いますね。
日本もレベルは上がってきてはいるんですけど、他の国がさらにレベルがどんどん上がってきてるので、非常に高いですね。
──どういった面のレベルが上がっていくんですか?
戦術面などですか?
戦術はもちろんですけど。個々の技術ですね、特にサーブに関しては唯一の個人で出来るプレーなので、そこはものすごく上がっています。
──ジャンピングサーブを、”スパイクか!”っていう感じで打ち込んできますよね
それもそうですね。ジャンプフローターも、女子だとチャンスと言われているサーブが、男子だとネットの上から落とし込んで打ってくるので。
それでも100キロくらい出てくるんですね、ジャンプサーブだと130キロです。
──日本は、そういう相手にどう対抗していけばいいんですか?
高さとパワーで勝負をしてしまうと勝ち目はないので、サーブもすごく速いのがきますけど、そこで直接的な失点をしないことです。
まず、きっちり上に上げてスパイクを打てる状態まで持っていく。
今は、リバウンドとったりだとか、ブロックを利用しての打ち方って、ものすごく技術が上がってきてますから、必ずサイドアウトとれるチャンスはくるので、
そのチャンスをきっちりと取っていけば、勝機はあるのかなと思いますね。
──今回の世界最終予選、出場国は世界ランク2位のポーランド、去年ワールドリーグで優勝したフランス、アジア最強国のイラン、錚々たるメンバーが並んでいますね
他にも、どこも強いですからね、楽な試合は1つもないです。
ポーランドは世界選手権で優勝してますし、フランスは完成されたチームですから。
今回のヨーロッパ予選で、フランスが抜けてもいいのかなと思ったところ、逆にロシアに負けてしまったんです。
負けた原因も、ほぼ自滅状態で負けているので、実際の力から言えばフランスのほうが上ですからね。日本はやりずらい相手ですね。
──出場権を得るという意味で、キーポイントとなる相手とかはあったりしますか?
イラン、オーストラリアは、もちろんキーになりますけど。第2戦目に、中国と当たるんですよ。
中国とは、あまり対戦してない中で、アジア大会のときに一度負けているんですね。
そこの1、2戦というのも、日本の指定試合なので、あえてそこに中国を持ってきたということは1、2戦をきっちりと勝って、後につなげていきたいという意図がありますから。
そこがきっちり勝てるかどうかが、キーになるのかなと思いますね。
どういうメンバーで来るかもわかりませんから、第1戦目にどれだけデータを集められるかというのもキーになってきます。
──スポーツ番組で見たんですけど、真鍋監督がリアルタイムで試合中に選手たちのプレーの画像を見ていました
女子バレーはiPadというものを使っていて、今までは映像が入ってこなかったんですね。
それが進化をして、映像が取り入れられると、1つ前のプレーがリアルタイムで見える機能があるんです。
──データもすごいですし、今はそれぐらいやらないといけないんですか?
そうでないと、選手が納得しないです。
納得して選手を動かしたいので、「今こうなっているよ」と映像を見せれば、選手も納得するんですよ。
──その時に調子のいい選手を使ったり、戦術も刻々と試合中に変わっていくんですね
試合前に、「こうやっていこう」と大まかにやっておいて、だいたい最初のローテーション一周した時点で、”同じなのか、同じじゃないのか”というのを見極めて、リアルタイムで戦術は変わっていきます。
──作戦パターンがいくつもあるんですか?
10通りくらいありますね、ブロックのサインだけでも12、3個ありますから。
基本的なのは4つくらいしかないけど、ここ一番で使うのは、それ以外に8個くらいあります。
いきなり集まって、「試合しろ」と言われても、本当にいいチームは出来ないのがバレーボールであって、長い時間を共にして戦術を作り上げていかないと完成できないのが、いまの戦術ですね。
──去年のワールドカップでブレイクした、石川祐希選手、柳田将洋選手はどうですか?
彼らにはものすごい期待してるので、特に石川選手は、今までの日本界では一番の逸材と言われている選手です。
──石川選手のすごさはどこですか?
純粋に、どんな状況でもバレーボールを楽しんでいる。どんなに負けてようが、競っていようが、常にニコニコしながらバレーボールが出来るのが彼の強みなので。
それがオリンピック最終予選でもできれば、日本はいいリズムでいくんじゃないかと思います。
──石川選手は、イタリアのセリエAに留学されていましたよね?
そうですね。そこでフランスにいるエースの選手と一緒にやっていますから、いろんなプレーを学んだと彼は言っています。
そういうプレーを日本に帰って実践しながら、自分の幅を広げていますから。
すごく楽しみですね。
──若手らしく、プレッシャーのかかる試合でも伸び伸びとプレーしてほしいですよね
そのためにも、オリンピック経験者が2名いますけど、清水選手、福澤選手が、どれだけ若い選手たちに、いかに伸び伸びさせることができるか、これもキーになってきま。
──清水邦広選手、同じサウスポーということですけど清水選手に期待される部分は?
若い頃から一緒にやってますけど、年々、彼の精神的部分が成長してますし、試合に出てながらも客観的にチームを見る目ができたなと感じます。
今年、キャプテンとしてチームを引っ張る立場ですから、冷静にチームを見ながら、なおかつ自分のプレーもしっかりとやる、そういうプレーを見せてほしいですね。
──やはり、人間性も変わってきたりするんですかね。
今までは、”自分だけ良ければいい”という感覚だったのが、それじゃダメだということで、若い選手にも時には怒鳴って、”こうしろ、ああしろ”と指示を出してるシーンもありますから。
本当に成長したなと思っていますね。
──世界最終予選、厳しい戦いが待っていると思いますけど日本代表に期待することはありますか?
日本がここを勝ち上がるためには、世界一体力が必要になってきますから。体力を落とさないように体重管理をして、粘り強く戦えば必ず勝機はあります。
それを信じて、一戦一戦、戦ってほしいですね。
──毎回、ゲストの方のお気に入りの一曲を伺っています。山本さんが現役時代によく聞いていた曲や支えになっていた曲を教えてください。
いきものがかりの「風が吹いている」ですね。
僕は北京が終わってから代表外れて、”一年一年勝負だ”という気持ちでやっていた中で、2年前に代表に復帰したんですけど、その頃に出た曲で”完全に僕に歌っている曲じゃないかな”と思ってたくらいで(笑)。
僕のシナリオ的には、ロンドンに行って引退しようと決めていたんですけど。そこはダメでした(笑)。
僕に歌ってくれているような曲だなと、感じていましたね。
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