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Athelete News
16.04.09
全にして個、個にして全
今週の「ATHLETE NEWS」は、先週に引き続き、レーシングドライバーで、今シーズンから「チームルマン」の監督に就任した脇阪寿一さんに、お話をうかがいました。

脇阪さんは、昨シーズン限りでスーパーGT500クラスを引退されまして、今シーズンからは、チーム・ルマンの監督に就任されました。
今週は、モータースポーツにおける監督という仕事についてお聞きしました。



──脇坂さんにとっても、すごく思い入れのあるチームですよね?

そうですね。TOYOTAの中で、「脇坂、TOYOTAにあり」ということを表現させてもらった、自分の好きなようにレースをさせてもらったチームなので。ここで自信がついて、そこからレース界の中で戦い続けさせてもらえたと言って過言ではないチームですね。

──古巣のチームで、今度は監督として、また世界一を目指すというのは見方は変わってきますか?

僕、一緒なんです。レーシングドライバーのとき、走る以外にやっていたことは、いわゆるチームの監督がするようなことと似通ったことだったんですね。

──例えば、どういったことですか?

一番大切なのは、チームの中の空気を作ることと、チームスタッフの向く方向を同じにすることですね。
全員が、同じ車を頭の中で走らせる、これがものすごく大切なんですよ。
メカニックは車を整えて、ドライバーは走って…さらに上には、みんなで同じ車を頭の中で走らせるんです。

ドライバーがチームに対して「車が曲がらない」とか、いろんなことを訴えたときに。例えば、関係無いマネージャーまでもが、”脇坂さんだったら、どういう風にセッティングするのかな?”とか考えながらも無線を聞いている。そういう風にすることによって、全体の力が変わる。
これはレースだけじゃなくて、会社もそう、野球もサッカーも同じですよね。

そういうことをやってきたつもりでいるので、今回チームに久々に合流したとき、みんな、全然動きがいいんですね。
僕は、「これで、なんで勝てないの?」って、社長に聞いたんですよ。
そしたら、「あんなに動くメカニック、見たことないよ」って言ったんですよ。
それは何かというと、実力があるか分からない脇坂寿一に対して、メカニックとかチーム員が、”これで、我々が変われるかもしれない”と思ってくれているんですね。
これは僕の力でもなくて、たまたまのイメージなんですね。
そう思ってくれてる彼らに対して、どういう風に自分が方向を示し、それに対して時差なく成績を出すか。成績って、我々勝負の世界では万病の薬なんです。

仲の悪い人間同士でも、成績が出れば抱き合う、仲が良くなるんですね。だから、時差なく成績を出してあげることに対して、「チームルマン」はもともと、素晴らしいチームなので、その自信をどう取り戻してあげるかっていうのが僕の仕事なので、得意分野だと思っています。

──レース中、ヘッドセットではどういうことを話しているんですか?

僕が若い時にチームに求めたのは、目の前を走ってる車のラップタイム、後ろで走ってる車のラップタイムです。
自分のラップタイムはモニターに出てきますから、前の車より0.1秒早かった、0.0何秒遅かったというのをやりながら…ラップタイムの変化が運転してるドライバーの精神状態を表しているんですよ。
それをバロメーターとして見るので、ラップタイムを精神的な状態を確かめるものとして見ますし、もっと言えば、見えない敵と戦う時もあるんですね。
僕ら、タイヤ交換に入っていって、また出て行くので一旦は離れるんですよね。
見えない敵が、どういうラップタイムで走っていてとか、作戦がどうかとか、だから詰将棋なんですよ。

──直線のスピードが速い車と、コーナリングの操作性が良い車と、どっちの方がいいんですか?

両方欲しいです(笑)、サーキットによりますね。
車って、よくドライバーの好みに合わせてセッティングする、と言いますけど、今の時代そんなことは終わりまして…。車がどう走りたいか、車が走りたいように、ドライバーがドライビングを合わせ込むんです。

──競馬みたいなところがありますね

僕が悩んで、武豊さんにお話したときに、「馬に対してどうしてますか?」と聞くと、「車をどう走らせたいの?自分でやってるの?」と言われて、「それに対してセッティングして、乗りやすいように考えています」と言ったんですよ。
武豊さんは、「違うよ。僕がやってるのは、馬に問いかけてるんだよ?どう走りたいの?いま、行きたいの?」と、彼の意見に対して、自分のアドバイスを教えてやりながら走らせるといいよ、と言われました。

それもあるんですけど、ドライバーが2人乗るんですね。1人の好みに合わせていたら、もう1人が合わないので。間をとるんじゃなくて、車が走りたい方向にドライバーがいくんですよ。
車って、調整したら、次に調整するまでその箇所は動かないんですよ。

──ドライバーは合わせられますもんね

走り方も、優秀なドライバーは変えられるんですよ

──人間が合わせた方が早いんですね

早いですし、レースは刻々と条件が変わっていくので、それを車で合わせるより、人間が合わせた方が絶対にすべての条件において、高い次元でマッチングが得られると思います。

──毎回、ゲストの方のお気に入りの一曲を伺っています。 脇阪さんがレース前やレース後に聴いている曲、 心の支えになった曲などはありますか?

Aviciiの「Wake Me Up」です。これ、カッコいいんですよね。
実は、長渕さんのご子息がレースをされてまして、僕のずっと後輩なんですけど。
今は引退して、音楽の道を頑張っているんですけど。彼と一緒に飲んでいて、先輩の悪いところですよね(笑)「カラオケで歌を歌え」と、振ったんですよね。

僕的には、お父様の歌を歌ってもらえると思って構えていたんですけど、入った曲がこれだったんですね(笑)。
音楽が鳴り出した時点で、”ちがうやろー!”と思ったんですけど、パーンと歌い出すんですよ。この歌知らないんですけど、”本人!?”って思うぐらいの歌だったんですよ(笑)。

──やっぱり、お上手なんですか?

もう、ヤバイですね!そのあと「ごめん、曲名教えて?」って言ってメモして(笑)。それからはレース前に聴いていたんですね。
英語で、何言ってるかわからないけど、人の気持ちと一緒で、最初静かなところから来て、最後盛り上がって終わる。そういう曲のような気がしてます(笑)。

彼のマインドの中には、モータースポーツのマインドも強く入っていて、本当にモータースポーツを愛してくれながら、我々に敬意を持ってくれている。
それから音楽の道に進んで、モータースポーツ全体として、彼の音楽を応援したいと思います。

Message

Circle of Friendsや藤木直人さん、高見侑里さんへのメッセージはこちらから。あなたのスポーツ体験と気分を盛り上げるためには欠かせないリクエスト曲をお待ちしています。