今週の「ATHLETE NEWS」は、元ラグビー日本代表でエースとして活躍した、大畑大介さんをゲストにお迎えしました。
先日行われたラグビーワールドカップで、日本代表は歴史的3勝をあげて日本ラグビーの歴史を変えました。
五郎丸選手の帰国後のインタビューを交えながら、大畑さんに大会を振り返っていただきました。
ー日本は今まで1勝しかした事がなかったんですよね。初戦が南アフリカ、大畑さんは現地でご覧になっていたんですか?
現地で、それもトライのシーンのほぼ近くで観ていたので。ボールが流れるところなど、目に焼き付いていますね。自分自身があのシーンを観られたということに対して、ラグビーをやっていて良かったなと思いました。
ー日本が勝った瞬間は、どうだでしたか?
周りの人間が、南アフリカのサポーターだったんですよね。序盤は、”日本頑張ってるね”みたいな感じだったんですよ。途中、南アフリカが点数をあげた瞬間に、ホッとした感じがありました。
終盤、追い詰められてくると、南アフリカのファンの人たちは、自分たちが南アフリカを応援してることを忘れて、その試合のクオリティに対して気持ちが入っていったんでしょうね。日本が逆転した瞬間に、南アフリカが負けたにも関わらず「すごいゲームだったね、面白かったよ。日本代表すごいね!」みたいな、あの試合を一つのものに捉えてくれたんです。
ただ僕が、日本人というだけで、歩いていれば「おめでとう」と言われたし…、日本のラグビーを認めてくれたという瞬間でした。
ー歴史的快挙と称賛される一方で、やはり選手は悔しい思いもあるようです。日本のポイントゲッター、五郎丸選手は、このように語っていました
五郎丸選手:3勝はしましたけど、そこで満足している表情を、画面を通じて子供たちや、次に日本代表選手を目指す選手達が見てしまったら、”そこに行けばいいんだな”という思いになると思うんですよ。
そこで悔しいという表情を、みんながカメラを通じて出してくれたので、次の世代はその上を目指してくれると思います。
ー3勝をあげながらも、悔しいという気持ちがあるんですね
自分たちのやれるべき事を、しっかりやったという中で、次に行けなかったのは悔しかったと思います。
今回の3勝1敗というものを、”残念ながら予選敗退”と、とるのか。”3勝したという事に対する、日本の実力が上がってきた”と、とるのかだと思います。確実に、階段は上がっていると感じました。
ーこの4年間、選手たちがどんな思いでワールドカップまで準備してきたのか?五郎丸選手は、このように語っていました
五郎丸選手:ヘッドコーチに日本の歴史を変えると言われた時は、自分の気持ちが高ぶったし、このメンバー、あのスタッフだったら出来ると感じられたのは、この4年間非常に大きかったですね。
日が昇る前から汗を流して、日が沈んだ後に練習が終わる。ただ、それはきついだけじゃなくて、ヘッドコーチがビジョンを持ったうえで、必要なトレーニングを、必要な時にやっていくという、理にかなったことをやってきた結果だったと思います。
ー今大会で、世界一の練習量と仰っていましたけど、エディー・ジョーンズヘッドコーチはどうでしょうか?
間違いなく、世界一の練習量だと思います。質もそうですしね。
練習して、ご飯を食べて、ちょっと休んで、また練習して…。その繰り返しを1日4回、5回とやっていく。「練習量=根性」それが、イコールじゃないんですよね。
そこはしっかりとした、化学的なことも含めて、今の時期には何が必要なのかを説きながら、しっかりとしたビジョンを持っていたので、選手もやり甲斐があったと思いますし、感触も掴めたんじゃないかと思います。
日本人って、どうしてもフィジカルの部分で弱さがあったので、そのフィジカルな部分の弱さを、他のものでカバーしようとし過ぎて、最終的なところでフィジカルな部分で負けていた。
でも、今のチームは、ベースになるものをしっかり作らなければ、それ以上のものは出せないというところに立ち返り、フィジカルな部分が強くなったことによって、自分たちの普段持っているものが出せるようになったという事ですよね。
だからこそベースが上がって結果を残した、それが僕らの頃との大きな違いですね。
エディー・ジョーンズは世界のトップレベルを肌で知って、そこで指揮をしてきているので説得力が違うんですよね。
そういう意味では、振り返ってみて、3勝1敗という結果は、できるだけの下地はしっかりできあがっていたのかなと感じますよね。
ー毎回、ゲストの方のお気に入りの一曲を伺っています。 大畑さんが現役時代によく聴いていた曲、 心の支えになっていた曲などはありますか?
ET-KINGの「愛しい人へ」です。
ラグビーは、1人じゃできない競技で、周りの人間と手を取り合って力を出し合います。全員が仲間であり、無駄な人間は一人としていない。人と人とのつながりが、この詞には詰まっているという思いで、聴くと熱くなります。
ー今回、ラグビーを観ていて、自己犠牲の精神がすごいなと思いました。
前に進まないといけないのに、ボールを後ろにつなぐという時点で、そういう思いがあると思います。
自分が前に進んだものを、後ろに下げて託すということは、隣の人間に信頼関係がないとボールを渡せないんですよ。その思いを持ってボールを持つということは、その思いを遂げなければ、という思いにつながっていくので。
人間同士の関係が成り立たなければ、尊敬の力がなければ、ボールはつながっていかないんですよね。そういうもののつながりが、ラグビーの良さだと思います。